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作品リフィル 文庫判・スクラム製本(綴じなし)
「秋」 芥川龍之介
1920年、「中央公論」に掲載され、翌21年、新潮社より刊行の『夜来の花』に収録されたものです。初期から続く、歴史や古典に材をとった芸術至上的かつ耽美的な作品から、現実や日常を対象化した作品に移行していくさきがけとなった短篇です。幼なじみの従兄をめぐる姉と妹の三角関係を微妙な心理描写と雅びな文体で描いた本篇は、いかにも大正期らしい均衡がとれた作品で、芥川作品のなかでも人気が高く、広く長く読み継がれています。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020029
「或阿呆の一生」 芥川龍之介
「人生は一行のボオドレエルにも若かない。」という有名な文句を冒頭近くに刻んだ作品。芥川自殺後に見つかった遺作で、発表の可否、方法までも、友人の久米正雄に託した形になっている。五十一の短い断章からなるこの文章は、自伝的な要素と末期の眼で世相をとらえつつ、大正から昭和にかけて暗い時代に突入する社会をも予感させ、まさに芥川龍之介という希有な才能を持った作家の〝スワン・ソング〟となっている(44頁・★5.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020371
「或旧友へ送る手記」 芥川龍之介
「誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。(中略)僕は君に送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている」この書き出しの通り、自死に至る心理を、方法を、場所を冷静な筆致で描出する。その主たる動機として記される「唯ぼんやりとした不安」とは何か? 死後に見つかり、久米正雄に宛てたとされるこの遺書で、自らの文学の総決算として自死を選んだ経緯を詳らかに語る。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020487
「おぎん」 芥川龍之介
元和か寛永か、とにかく遠い昔のこと、長崎は浦上におぎんという童女が住んでいた。大阪から流れてきた仏教徒の両親は亡くなり、孫七とおすみというキリシタン夫婦に信心篤く育てられたおぎんだが、ある年のクリスマスの夜に一家三人が囚われてしまう。あらゆる責苦にも決心が動かなかった三人だが、ただひとり、おぎんのみは土壇場で「おん教を捨てて」しまう。果たしておぎんの内心の真実は? 芥川龍之介「キリシタンもの」の最高峰。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020425
「お富の貞操」 芥川龍之介
明治元年五月十四日の昼過ぎ。翌日には官軍が彰義隊を攻撃すると立ち退きのおふれが出た上野界隈にて、降りしきる雨のもと人影もない街に忘れ物を取りにきたお富。暗い家の台所で出くわしたのは泥棒、よく見れば顔見知りの乞食、新公だった。お富の忘れものはお上さんから言いつかった三毛猫。その三毛猫をかたに取り、お富に体を迫る新公。全てを諦めたように帯を解くお富……意外な展開と結末は見事としか言いようのない逸品。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020326
「疑惑」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020401
明治二十四年、濃尾大地震の惨禍に見舞われた岐阜・大垣でのこと。地元で教師に就いていた男が、梁の下敷きになって身動きがとれなくなった妻を、このままでは苦しんで死ぬと、傍らの瓦で頭を打ち砕き殺してしまう。ところが男は地震からだいぶたってもそのことを口にできないでいる。実は身体的な問題があった妻を不満に思っていた自分には、潜在的な殺意があったのではないかと、男は悩む……人間の心の奥底を鋭く抉る短篇小説。(28頁・★3.5個)
「枯野抄」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020302
芥川が師と仰ぐ夏目漱石の没後二年目に発表された作。大阪は御堂前、花屋仁左衛門の裏座敷で迎えた松尾芭蕉の最期を看取る弟子たちの様子、病床での俳聖の最期の姿、あるいは臨終を告げる医師・木節の内心をリアルに描く。特に芭蕉をめぐる弟子たちの複雑な思い、死に水をとる瞬間の各々の心理を微分し、分析しながら描き分ける、その筆致が見事。同時に生と死の実相を冷徹に観察する作家としての眼に、根源的な不安の相を見もする。(20頁・★2.5個)
「蜘蛛の糸」芥川龍之介
極楽の蓮池のふちを散歩していた御釈迦様は、水晶のような池の水の底から真下にある地獄の底を垣間見た。そこには犍陀多という男が蠢いていた。この男は悪党だったが、たった一ついいことをしていた。小さな蜘蛛の命を助けたのだ。その報いに地獄から救い出してやろうとしたお釈迦様は、極楽の蜘蛛の糸を手に取り、地獄の底にそっと下ろしたのだが……児童文学の名篇として歴代数多の教科書にも掲載された芥川文学屈指の寓話。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022351
「戯作三昧(上)」 芥川龍之介
『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020449
「戯作三昧(下)」 芥川龍之介
『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628020456
「玄鶴山房」 芥川龍之介
画家堀越玄鶴は、肺結核を患い離れで臥せっている。妻のお鳥も「腰抜け」で寝たきり。ふたりの面倒を見る娘のお鈴と婿の重吉だが、そこに元の妾、お芳が子連れで看病にやってきたことで、この家の空気が変わる。息子同士の諍いに心穏やかならぬお鈴、また看護婦甲野は他人の苦痛を享楽するという病的な性向を持ち、冷ややかな目で一家を見ている。誰もが浅ましく侘びしいという人間の暗澹たる現実を直視した短篇小説。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628020418
田畑書店公式通販サイト 「玄鶴山房」芥川龍之介
「煙草と悪魔」芥川龍之介
国内に本来なかった煙草という植物は、どういう経緯で日本にもたらされたか? この疑問に答える諸説の中から、天主教のバテレンが連れてきた伊留満(神弟)に化けた悪魔によるものとして描く。信者を悪の道に誘惑するつもりでいたが、信者があまりにも少ないのに肩透かしをくらった悪魔は、無聊を紛らわすため畑に煙草の種を撒いた。そして、すくすくと育った煙草を見た牛商人とある賭けをしたが……寓意とアイロニーに満ちた好篇。(20頁・★2.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022269
「煙管」芥川龍之介
加賀百万石の藩主、前田斉広の携える金無垢の煙管の豪奢さは、参勤で登城する江戸城の中でも噂の的だった。斉広にとっては愛玩の対象というより前田家の威厳を示さんがための煙管だったので、御数寄屋坊主、河内山宗俊の大胆な申し出に、気前の良さを示そうとまんまとせしめられてしまう。それを聞いたご用部屋の三人の役人は一計を案じ、斉広に銀の煙管を持たせることにしたが……権威と虚栄、物欲とその空しさを小気味良い筆致で描く好短篇。(20頁・★2.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022252
「子供の病気」 芥川龍之介
大正十二年、芥川三十二歳の時の小品。乳飲み児の次男・多加志が腸炎で入院せざるを得ない状況に狼狽する芥川。そんな状況にもかかわらず突然やってきて借金を申し込む厚顔無恥な青年。不安で何にも手がつかないなか、雑誌に掲載する小説の締切に追われる物書きとしての性。入院当日にあってもひっきりなしに訪れる来客。吹っかけられる文学論を虚に聞き流す芥川……子を思うふつうの父親としての芥川像を垣間見る作品。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020333
「地獄変(上)」 芥川龍之介
吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)
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330円 (税込) [JAN]4582628021323
田畑書店公式通販サイト 「地獄変(上)」芥川龍之介
「地獄変(下)」 芥川龍之介
吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021330
「蜃気楼」 芥川龍之介
芥川龍之介が亡くなる四ヶ月前に発表された作品。当時話題の「蜃気楼」を見に、東京から遊びにきていた大学生のK君と、友人のO君を誘って、鵠沼の海岸に行く。そこで出会った「新時代」を表象するカップル、砂浜で見つけた水葬された死骸についていたと思しき人名が横文字で記された木札……衰弱した心身が潜在意識として死をとらえているのか、妙に澄み切った空間に通底和音のように響くうつろな音階が聞こえる幻想的な短篇。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020364
「大道寺信輔の半生」 芥川龍之介
江戸伝来の下町よりも寂れてすたれた本所。自らの生地に向ける思い、わずかに残る見すぼらしく限定的な自然に対する愛着をはじめ、母乳で育てられなかったために愛憎こもごもの牛乳について、憎むべき貧困、あるいは学校、本、友だち……自伝的要素をちりばめながら、自らの文学的感性を形作った環境や出来事を語る、芥川文学を知る上で重要な一篇。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628020340
「歯車(上)」 芥川龍之介
知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020463
「歯車(下)」 芥川龍之介
知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628020470
「点鬼簿」 芥川龍之介
「僕の母は狂人だった。」悲痛な一文で始まる自伝。「点鬼簿」とは死者の姓名を記した帳面のこと。生後すぐに養家に出された芥川が、その母親への冷めた思い、死に臨んだ折の複雑な心境を綴る。次にそこに加えるのは芥川が生まれる前に夭逝した姉の初子。「初ちゃん」と呼ばれ姉弟の中で最も賢かったらしいこの姉に、芥川は「或る親しみ」を感じる。そして二十八の時にインフルエンザで亡くなった父……物故した三人の肉親を描く。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020357
「ひょっとこ」 芥川龍之介
東京帝大在学中の作。隅田川に浮かぶ花見船の上で衆目が集まるなか、ひょっとこの面をつけ馬鹿踊を踊っている最中に脳溢血で死んだ男の話。男は親父の代からの日本橋の絵具屋主人。酔うと気が大きくなり馬鹿踊をする癖がある。男の癖はそれだけでなく、悪気がないにもかかわらず、ふと嘘をついてしまう。嘘が嘘に重なり、どれが本当の自分かわからなくなってしまう始末。そんな男の最期を描き、人間の虚実皮膜の喜悲劇を喝破した快作。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020296
「舞踏会」 芥川龍之介
歴代、数々の教科書にも採択され、芥川の短篇の中でも最もポピュラーなもののうちのひとつ。文明開化の響きが残る明治十九年、鹿鳴館で催された舞踏会の情景を描く。父に連れられて初めての舞踏会に臨む明子。本人の不安をよそに、日本の少女の美を遺憾なく具えた彼女の姿は衆目を集めた。その明子に踊りの相手を名乗り出た仏蘭西の海軍将校。華やかな情景の中にあって文明の刹那的な繁栄とその後ろにある翳りをも描き出した名篇。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020319
「藪の中」 芥川龍之介
時は平安。山科の藪の中で男の死骸が見つかった。妻を連れ都から若狭に戻る途中だった。盗人に妻を手ごめにされ殺害されたと思しいが、その妻は消えていた――この惨事を、取り調べを受けた死骸の発見者、事件直前に夫婦を見かけた旅法師、妻の母、盗人の自白、清水寺での妻の懺悔、そして死霊となった男自身の言葉によって多面的に描く。見る角度によって異なる複数の真実、絡まり合う複雑怪奇な人間の性が見事に浮き彫りにされる。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020388
「竜」 芥川龍之介
恵印という異形の鼻を持つ法師の話。ふだんより鼻のことで自分を笑う人々を笑い返そうと、猿沢池のほとりに「三月三日この池より竜昇らんずるあり」と嘘の立札を建てた恵印。流言飛語、噂は噂を呼び、都のみならず周辺の国まで巻き込むさまを見て、最初は痛快に思っていた恵印もだんだん恐ろしくなり。さて当日、人の波に溢れる池の周り、皆ことの成り行きを固唾を飲んで見ていたが……現代のフェイクニュースにも通ずる作品。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020395
「老年」 芥川龍之介
「羅生門」の半年前に書かれた実質の処女作。二十二歳とは思えない老成した筆致に注目。場所は隅田川沿いの料理屋。雪のなか一中節(浄瑠璃の一種)の例会に集まる老人たち。料理屋の隠居、房さんは十五の歳から茶屋酒の味をおぼえ、二十五で若大夫と心中沙汰を起こした名うての遊び人だが、今はそんな過去を見る影もない。ところが……新時代の到来に逆行する江戸趣味溢れる空間に、年老いてゆく人間の悲しみを描く芥川らしい一篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020289
「蜜柑」 芥川龍之介
ある曇った冬の日暮れ、横須賀発上り二等客車に乗った「私」の前の席に、いかにも田舎者らしい不潔な服装の十三、四の小娘が座った。霜焼けの手には三等車の切符が。しかも小娘は、ただでさえ不快な私の気持ちを逆撫でするように、隧道に入ろうとする汽車の窓を開けようとしているのだ。怒りさえ込み上げてきた私だったが、隧道から出た汽車の窓の下の光景に、思わず息を呑んだ……倦怠から一転、新鮮な温かみに満たされる逸品。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020432
「小さき者へ」有島武郎
母校、札幌農学校の英語教師として赴任した先で妻を結核で失った作家が、悲しみのなか残された三人の幼児たちに綴った励ましの言葉。自らの病を知って決して身近に子どもたちを寄せなかった母の強い意志と彼らへの愛。「私は自分の弱さに力を感じ始めた。私は仕事のできない所に仕事を見出した。……決して順風満帆とはいえない作家に大きな勇気と方向を示してくれた妻の死を語り、万人に贈る普遍的メッセージとなりえた名作。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628021941
「沈黙と失語」石原吉郎
シベリアで八年に及ぶ収容所生活を送った詩人が、壮絶な体験から〈沈黙〉と〈失語〉について深い思索を巡らす。静寂が同時に轟音とも感じられるシベリア密林。一日は無限に長く一年は驚くほど短い。異常なものが徐々に日常的なものへ還元されて行くという異常のなか、平均化され無個性化されるほどに〈平和〉は訪れる。「言葉がむなしいのではない。言葉の主体がすでにむなしいのである」詩人の思考はまさに現代日本に生きる我々の胸をえぐる。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022412
「山椒魚」 井伏鱒二
「山椒魚は悲しんだ。」で始まる、言わずと知れた井伏鱒二の代表作。自分の棲み家である岩屋から、二年出ぬうちに体が大きくなり、入口の穴から出られなくなった山椒魚。「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」……この絶対絶命の喜悲劇的状況のなかでの、擬人化された山椒魚の内心の声、周囲の生き物たちとの関係を絶妙に描き、短い紙幅にもかかわらず深い読後感を残す、井伏文学の最高峰。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020494
「鯉」 井伏鱒二
早大学予科で同級となり、物を書く上での大きな支えともなった親友・青木南八からもらった大きな真っ白い鯉の話。下宿の瓢箪池に放ったのだが、転居に際して行き先に困り……大きな展開もなく、淡々とした筆致ながら、そこはかとないユーモアと親友を失った悲しみ、拠り所のない自身の身上など、複雑な味と豊かな読後感を残す。「山椒魚」「屋根の上のサワン」とともに著者が文壇に認められるきっかけともなった井伏文学上、重要な短篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020500
「屋根の上のサワン」 井伏鱒二
沼池の岸で鉄砲玉に傷ついた雁を見つけた「私」は家に連れ帰り治療を施した。すっかり快復した雁に私は「サワン」と名付け、風切羽根だけ短く切って庭で放し飼いをすることにした。サワンはとても人なつこく、私はそんなサワンを可愛がった。ある月の夜、サワンは屋根に上り叫ぶような鳴き声をたてた。伸ばした首の先には雁の群れが。そしてある日、サワンはいなくなった……渡り鳥との交歓を新鮮な文体で叙情豊かに描いた井伏文学の代表作のひとつ。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020517
「夜ふけと梅の花」 井伏鱒二
ある夜ふけのこと、空腹とくったくした気持を抱えた「私」はおでん屋でも探そうと牛込弁天町あたりを歩いていた。邸宅の高い塀の内側からは白く咲いた梅の花が覗いている。すると電柱の陰からいきなり男が現れた。男は顔にひどい傷を作っていた。何でも消防士にやられたという。だいぶ酩酊した男は事情も覚えておらず、ただ訴えてやると憤っている。最初はたまげたが、男を宥め、帰って店の主人に申し開きをするすべを授けた「私」に男は感謝して五円札を握らせるが……人間への深い洞察とユーモアに溢れた名作。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020524
「丹下氏邸」 井伏鱒二
田舎で収入役を勤める丹下氏は、使用人の男衆エイを折檻した。性根をいれかえてやろうというのだ。サボっていた時と同じ格好を強要するという奇妙な折檻を傍から見ていた「私」は東京から陶器の窯跡を発掘しにきた好事家。問わず語りに始めた丹下氏の話から、エイの不憫な来歴を知る。夫婦だが同じ住いを持たないエイの妻、オタツは夫の折檻を知り方向先からやってくる……備後弁のユーモラスな語り口と見事な描写が冴える不朽の名作。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020531
「外科室」 泉鏡花
語り手は画師。親友の医学士高峰に頼んで彼の執刀する手術を見学することに。外科室中央の手術台に横たわるのは貴船伯爵夫人。伯爵や親族らが見守るなか、いざ手術を始めようという段になって、夫人は麻酔剤を頑なに拒む。周囲の説得をも全く聞き入れぬその理由とは、意識を無くしてあらぬことを口走る自分がこわいから、とのことだった。心穏やかならぬ伯爵をよそに、高峰はメスを執った……生死の狭間で愛と恐怖が交錯する耽美の極北!(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020548
「露月二百句(片上長閑 撰)」 石井露月
正岡子規門下に、石井露月という俳人がいた。彼は実力に於いて碧梧桐、虛子、鳴雪らに肩を並べると言われながら、俳壇の中央に身を置くことなく、開業医として郷里秋田に留まり続けた。その句は余戯の域を超えているにもかかわらずあまりに顧みられていない。所謂俳壇史の陰に埋もれた存在として黙殺されがちな、俳人露月。本書では、彼の遺した句から注目すべき作を撰し、季別に配した。(48頁・★6個)
330円 (税込) [JAN]4582628021729
「黄色い日日(上)」 梅崎春生
「彼」が身体に変調を来したのは、酒を飲んで深い水溜まりに落ちてからだった。強盗で捕まった友達の三元の身上を相談するために中山と飲んだ酒だった。また彼は隣人の発田とともに家主の白木から立ち退きを迫られていた。闘鶏を趣味とする白木。玩具屋で店番をする発田は狂ったようにシロフォンで草津節を叩き出す。そしてラジオから東京裁判の実況が……戦後間もない日常に潜む狂気を乾いた笑いとともに描く。(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020562
「黄色い日日(下)」 梅崎春生
「彼」が身体に変調を来したのは、酒を飲んで深い水溜まりに落ちてからだった。強盗で捕まった友達の三元の身上を相談するために中山と飲んだ酒だった。また彼は隣人の発田とともに家主の白木から立ち退きを迫られていた。闘鶏を趣味とする白木。玩具屋で店番をする発田は狂ったようにシロフォンで草津節を叩き出す。そしてラジオから東京裁判の実況が……戦後間もない日常に潜む狂気を乾いた笑いとともに描く。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020579
「赤帯の話」 梅崎春生
「とにかく私たちは皆、一日中腹を減らしてばかりいた」。アムール河の支流のまた支流の、そのまた支流にある収容所に抑留されている「私」は虚弱者として氷上清掃班に廻された。それは冬の間凍結した河面から材木を掘り出して除去する仕事だった。私たち五人のグループを率いるイワノフというカンジマール(親方)は、服の上にいつも赤い帯を巻いていた。その「赤帯」は寡黙だがなぜか親しみが持てた……シベリア抑留兵とソ連兵の間の淡い友情を描く名篇。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021545
「歌集 無害老人計画」 上坂あゆ美
認知症を患い、周囲に対して攻撃的になる祖父を目の当たりにし将来を案ずる〈わたし〉。「祖父のあの電話以来、自分が認知症になったら、わたしはいつの時代の自分を輝かしいものとして拠り所にするのだろうか、ということをよく考える。」こうして齢三十歳にしてわたしの「無害老人計画」はスタートした──第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』で大きな注目を集めた著者によるエッセイと、第一歌集発表後初の連作短歌!(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020555
「もくねじ」海野十三
〈大東亜戦争〉の〈国際放送機〉に使われることを夢見ていた「もくねじ」だったが、検査で欠陥が見つかってしまう。しかし、不良品に分別され嘆き悲しんでいた「もくねじ」にもやがて幸運が訪れる。話に夢中の若い工員によってよく確かめられないまま放送機に装着されてしまったのだ。ところが現場に到着したところで再び不運に見舞われ……戦時下における忠誠心と運命の皮肉に翻弄される様を「もくねじ」に託して描く異色作。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628022368
「木馬は廻る」 江戸川乱歩
「ガラガラ、ゴットン、ガラガラ、ゴットン、廻転木馬は廻るのだ。」昔は花形音楽師、やがて徒歩楽隊に落ちぶれたラッパ吹きが、木馬館に常雇いとなった。家に帰れば古女房と三人の子供たちとの生活に追われるラッパ吹きだったが、職場に通うのは心が弾んだ。なぜならば、そこにはお冬という十八歳の女車掌がいたから。決して器量よしとはいえないが、妙に気持ちをそそる彼女に気もそぞろ……乱歩にとっては異色だがなぜか心に残る小品。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020586
「人間椅子」 江戸川乱歩
外務書記官の妻にして美しい閨秀作家として名を馳せる佳子は、ファンレターに混じった原稿用紙の束に思わず読み耽ってしまう「奥様、」で始まるその文章はある椅子職人の手になるもので、前代未聞、驚愕の告白がなされていた。自分の作った椅子に人一人分が入る空洞を発見した男は、異常な行動と知りつつ、椅子に潜んで顧客のもとへ運ばれていく。そして読み進めるうちに、佳子は思わず座っている椅子を……乱歩初期のスリラー小説の傑作。(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020593
「父の自転車と母の赤い車」 太田靖久
〈私〉の父は運転免許がない。かわりにどこに行くにも自転車。その父の愛車に乗せてもらって出かけるのが、私は大好きだった。一方、母は真っ赤な自動車を乗り回して生命保険の営業に……「ポケットアンソロジー」のスタートにあたっての編集部の依頼に応え、「〈乗り物〉をテーマに編んだアンソロジーに、もし自分の短篇を加えるとすれば……」という想定のもと、「季刊 アンソロジスト」創刊号に書き下ろした、味のある短篇小説。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020661
「息子の長靴」 太田靖久
息子が生まれた日にアメリカに単身赴任した「私」は、世界中に蔓延した未知なる感染症も影響し、なかなか後任が決まらずに二年後にようやく帰国することができた。赴任地で学習した子育てのハウツウも無為のまま更新され、初めて対面するナマの息子。妻の助言を受けつつ、父親は初めて長靴を履いた息子と二人きりで近くの神社まで散歩に行くことに。読後、玄関に置かれた小さな長靴の緑色が鮮やかにまぶたに残る好短篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021705
「流れるプール」 太田靖久
夏休みの最後に「僕」の家族は母の故郷の新潟に引越すことになっているが、夏休みに入ってから母は時折帰ってこなくなったし、家では昼間でも寝ていることが多かった。そんなある日、父と妹と父の友人とで車に乗って動物園とプールに行った。なぜその人が一緒か分からなかったが、彼はとても親切だった。そして引越しの日、後からくるという父に見送られて、僕と妹と母は新幹線に乗った……僕は知っていた。父がもう来ないことを。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022160
「嘘の顛末」 太田靖久
友達同士で入ったコンビニで空のポケットをまさぐり、お年玉を落としたと嘘をついたのは小学校五年の時。その嘘に付き合ってお金を探してくれた弓香は、なんと自動販売機の下から五百円玉を見つけたのだ。中学に進み髪を染めパーマをかけるようになった弓香とは疎遠になってしまったが、本当にあの五百円玉は落ちていたのだろうかという疑問は拭えなかった……時の流れの容赦なさに、イノセンスの苦味と尊さを感じさせる名短篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022177
「短いトンネルの先に」太田靖久
大雨が降った翌日、小説家はコーヒーの粉を買いにぶらりと散歩に出た。桜並木の先の古い小学校の佇まいに、ふと郷里で通った小学校を思い出す。短いトンネルの先その小学校はあった。喫茶店の本棚で幸田文の『父・こんなこと』を読んでいるうちに創作の刺激を受けた小説家は、興奮醒めやらぬままでたらめに町を歩く。そこで見つけたトンネルの先には……短い紙幅のなかに、複雑に絡み合う小説家の生活と創作の関係を描いた短篇!(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021835
「カラスの味」太田靖久
担任の女性教師、大垣先生に「カラス」というあだ名をつけられたおかげで、わたしは暗い中学生活を送った。活動的だががさつな性格の先生がわたしは嫌いだった。地元から離れた高校に進んでようやくしがらみから自由になったわたしは、ある日、恩師のお葬式に出るという父親に付き添って福岡を訪れる。そして父の友人が営むジビエレストランで初めて食べたカラスの肉に、なぜか大垣先生を思った——人生の複雑な味を巧妙に描く短篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021842
「尾形亀之助詩選」尾形亀之助
「大きな戦争」が迫るなか、「なにもしない」生活を、華やかな技巧とはほど遠い詩行に写し取った亀之助。「最も小額の費用で生活して、それ以上に労役せぬこと——このことは、正しくないと君の言う現在の社会は、君が余分に費ひやした労力がそのまゝ君達から彼等と呼ばれる者のためになることにもあてはまる筈だ。」……〈彼等=社会の上位で搾取する者たち〉への抵抗を貫き、自ら餓死に近い死を選んだ伝説の詩人のエッセンスがここに!(40頁・★5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022382
「赤い蝋燭と人魚」 小川未明
北方の冷たく暗い海に棲む人魚の妊婦は、人間の世界に憧憬を抱き、海岸の小さな町の老夫婦ふたりで蝋燭を商っている店の前に女児を産み落とした。老夫婦は、神様から授かった子どもと心得、人魚の娘と知りつつその子を育てることにした。長じた人魚は、せめてもの恩返しと蝋燭に絵を描くと、その蝋燭は海難から船人を守ってくれると、飛ぶように売れたが……人間の欲望とエゴが生む悲しい運命を幻影の世界に描く傑作童話。
(20頁・★2.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020227
「黒い人と赤いそり」 小川未明
冬になると海の上までが一面に氷で張りつめられてしまうような、はるか北の方の国。人々は黒い獣の毛皮を着て働いていた。すると足元の厚い氷が突然二つに割れ、三人だけを乗せた氷片はたちまちのうちに沖に流されてしまった。みんなが手をこまねいている中、五人の有志が五つの赤いそりに乗って探索に。けれどもその五人もいつまで経っても戻らない。無作為のまま彼らを見捨てたこの国には、やがて不思議な現象が……寓意に満ちたブラックなお話。
(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628020654
「鮨」 岡本かの子
東京の下町と山の手の境目にある「福ずし」の娘、ともよは常連の人気者。その中の一人、皆からは先生と呼ばれる五十がらみの紳士、湊とふと外で会ったともよは、鮨を食べることが「慰みになる」というそのわけを聞く。幼時、拒食気味だった湊を見るに見かねた母親が、ある日、酢飯を握った上に玉子焼や烏賊の切身をのせて並べた。すると不思議にそれらは湊の喉をするりと通って……読後、無性に鮨が食べたくなる不朽の名篇。
(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020678
「老妓抄」 岡本かの子
憂鬱な顔をしながらも、いったん経験談を語り出したら聴く者を飽きさせない老妓は、財もでき遠縁の娘みち子を養女にして素朴な素人の生活に近づきたいと思い始めていた。ふと出入りの電気屋の青年柚木に目をかけ、生活の保証をして、好きな発明の研究に没頭させようとする。最初は有頂天だった柚木も、やがて老妓の衰えを知らぬ華麗な生命力に圧倒され、次第に飼い馴らされていく自分の生活に倦怠をおぼえていく。発表当時から世評高かった名作。(40頁・★5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020685
「みちのく」 岡本かの子
東北の城下町Sに講演に訪れた作家は、町の写真館に飾られた、大ようで豊かで何か異様な面立ちをした少年の写真に惹きつけられる。それは〈四郎馬鹿〉と呼ばれた、東北地方では有名な知恵遅れの少年の肖像だった。土地の人たちにその少年の生い立ち、殊に北国寄りのF町の呉服屋の娘、お蘭と四郎馬鹿との温かい交情と数奇な運命の話を聞いた作家は、まだ存命と思しいお蘭を探そうとする……みちのくの人情が身に染みる短篇。(20頁・★2.5個)
本体価格:300円 [JANコード]4582628021569
「空っぽの花器」岡本真帆
繋いでいた手を放して、私は一人になった。町のラーメン屋。もらった小説。一緒に観に行った映画。傘がなくて笑いながら走った土砂降りの道。思い出は日常の至るところに潜んでいて、その欠片に触れるたび、本当にこれでよかったんだろうかと不安が押し寄せる。だけど選んだことを間違いじゃなかったと思いたい。思えるように生きていきたい。この30首連作は、私のこれまでとこれからを見つめて編んだものです。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628022047
「雪の夜」 織田作之助
大晦日の夜、別府。番傘を立てて通りの客を待つ易者が、料亭から女たちを侍らせて出てきた、羽振りのよさそうな男とばったり出くわします。それは因縁の男。易者は大阪で印刷業を営む堅実な男でしたが、カフェで会った女に溺れて身を持ち崩してしまいます。熱海から東京、東京から別府へ。病を患った女とともに落ちぶれて流れてきた男の運命は? はかない者たちの愚かな、しかし切実な人生を鮮やかに切り取る名篇です。初出は「文藝」(改造社、一九四一年)。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020036
「競馬」 織田作之助
京都帝大出の中学の歴史教師、寺田は小心で律儀者。酒場遊びなど縁がなかったが、同僚に誘われて入ったカフェの一代という女給に入れ込み、ついに所帯を持つ。ところが一代に乳癌が見つかったことから一転。痛みにのたうち回りながら死んでいった一代の面影、とりわけ彼女が纏った男の影に嫉妬の情を抱きながら、ひょんなことから競馬にのめり込んでいく。迫真のレースに比肩する語り口で結末まで一気に読ませる織田作文学の白眉。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020036
「夫婦善哉(上)」 織田作之助
難波の一銭天麩羅屋の娘、蝶子は十七の歳に自ら望んで芸者になった。お転婆で声自慢、陽気な座敷には欠かせぬ蝶子だったが、やがて惟康柳吉という妻子持ちと良い仲になり、とうとう駆落ちをした。遊び人で甲斐性なし、苦労ばかりかける柳吉だったが、美味いものには目がなく、難波の町の本当に美味い店に蝶子を連れ回した。どんな酷いことをされても、無邪気に舌鼓を打つ柳吉が捨てられないのだった……著者の出世作にして代表作。(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020616
「夫婦善哉(下)」 織田作之助
難波の一銭天麩羅屋の娘、蝶子は十七の歳に自ら望んで芸者になった。お転婆で声自慢、陽気な座敷には欠かせぬ蝶子だったが、やがて惟康柳吉という妻子持ちと良い仲になり、とうとう駆落ちをした。遊び人で甲斐性なし、苦労ばかりかける柳吉だったが、美味いものには目がなく、難波の町の本当に美味い店に蝶子を連れ回した。どんな酷いことをされても、無邪気に舌鼓を打つ柳吉が捨てられないのだった……著者の出世作にして代表作。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628020623
「雨(上)」 織田作之助
珠の肌と色香を持ったお君は、また働き者でもあったが、「私(あて)か、私はどうでもよろしおま」との口癖通りに流されるまま、不運な人生を歩み続けた。最初の夫である教師の軽部は一人息子の豹一を遺してぽくりと亡くなり、次に嫁いだ安二郎は高利貸で、夫婦間でも金を貸すほどの吝嗇家だった。境遇に向けた敵愾心と過剰な自意識を持つ豹一もまた儘ならぬ人生を歩むことに……著者自らが処女作と認め、のち『青春の逆説』へと発展する短篇。(24頁・★3個)
330円 (税込) [JAN]4582628020630
「雨(下)」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020630
珠の肌と色香を持ったお君は、また働き者でもあったが、「私(あて)か、私はどうでもよろしおま」との口癖通りに流されるまま、不運な人生を歩み続けた。最初の夫である教師の軽部は一人息子の豹一を遺してぽくりと亡くなり、次に嫁いだ安二郎は高利貸で、夫婦間でも金を貸すほどの吝嗇家だった。境遇に向けた敵愾心と過剰な自意識を持つ豹一もまた儘ならぬ人生を歩むことに……著者自らが処女作と認め、のち『青春の逆説』へと発展する短篇。(36頁・★4.5個)