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「秋」 芥川龍之介

1920年、「中央公論」に掲載され、翌21年、新潮社より刊行の『夜来の花』に収録されたものです。初期から続く、歴史や古典に材をとった芸術至上的かつ耽美的な作品から、現実や日常を対象化した作品に移行していくさきがけとなった短篇です。幼なじみの従兄をめぐる姉と妹の三角関係を微妙な心理描写と雅びな文体で描いた本篇は、いかにも大正期らしい均衡がとれた作品で、芥川作品のなかでも人気が高く、広く長く読み継がれています。(28頁・★3.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020029

梅田 蔦屋書 ポケットアンソロジー 「秋」
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「或阿呆の一生」 芥川龍之介

「人生は一行のボオドレエルにも若かない。」という有名な文句を冒頭近くに刻んだ作品。芥川自殺後に見つかった遺作で、発表の可否、方法までも、友人の久米正雄に託した形になっている。五十一の短い断章からなるこの文章は、自伝的な要素と末期の眼で世相をとらえつつ、大正から昭和にかけて暗い時代に突入する社会をも予感させ、まさに芥川龍之介という希有な才能を持った作家の〝スワン・ソング〟となっている(44頁・★5.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020371

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「或旧友へ送る手記」 芥川龍之介

「誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。(中略)僕は君に送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている」この書き出しの通り、自死に至る心理を、方法を、場所を冷静な筆致で描出する。その主たる動機として記される「唯ぼんやりとした不安」とは何か? 死後に見つかり、久米正雄に宛てたとされるこの遺書で、自らの文学の総決算として自死を選んだ経緯を詳らかに語る。(12頁・★1.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020487

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「おぎん」 芥川龍之介

元和か寛永か、とにかく遠い昔のこと、長崎は浦上におぎんという童女が住んでいた。大阪から流れてきた仏教徒の両親は亡くなり、孫七とおすみというキリシタン夫婦に信心篤く育てられたおぎんだが、ある年のクリスマスの夜に一家三人が囚われてしまう。あらゆる責苦にも決心が動かなかった三人だが、ただひとり、おぎんのみは土壇場で「おん教を捨てて」しまう。果たしておぎんの内心の真実は? 芥川龍之介「キリシタンもの」の最高峰。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020425

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「お富の貞操」 芥川龍之介

明治元年五月十四日の昼過ぎ。翌日には官軍が彰義隊を攻撃すると立ち退きのおふれが出た上野界隈にて、降りしきる雨のもと人影もない街に忘れ物を取りにきたお富。暗い家の台所で出くわしたのは泥棒、よく見れば顔見知りの乞食、新公だった。お富の忘れものはお上さんから言いつかった三毛猫。その三毛猫をかたに取り、お富に体を迫る新公。全てを諦めたように帯を解くお富……意外な展開と結末は見事としか言いようのない逸品。(24頁・★3個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020326

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「疑惑」 芥川龍之介

330円 (税込)  [JAN]4582628020401

明治二十四年、濃尾大地震の惨禍に見舞われた岐阜・大垣でのこと。地元で教師に就いていた男が、梁の下敷きになって身動きがとれなくなった妻を、このままでは苦しんで死ぬと、傍らの瓦で頭を打ち砕き殺してしまう。ところが男は地震からだいぶたってもそのことを口にできないでいる。実は身体的な問題があった妻を不満に思っていた自分には、潜在的な殺意があったのではないかと、男は悩む……人間の心の奥底を鋭く抉る短篇小説。(28頁・★3.5個)

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「枯野抄」 芥川龍之介

330円 (税込)  [JAN]4582628020302

芥川が師と仰ぐ夏目漱石の没後二年目に発表された作。大阪は御堂前、花屋仁左衛門の裏座敷で迎えた松尾芭蕉の最期を看取る弟子たちの様子、病床での俳聖の最期の姿、あるいは臨終を告げる医師・木節の内心をリアルに描く。特に芭蕉をめぐる弟子たちの複雑な思い、死に水をとる瞬間の各々の心理を微分し、分析しながら描き分ける、その筆致が見事。同時に生と死の実相を冷徹に観察する作家としての眼に、根源的な不安の相を見もする。(20頁・★2.5個)

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「蜘蛛の糸」芥川龍之介

極楽の蓮池のふちを散歩していた御釈迦様は、水晶のような池の水の底から真下にある地獄の底を垣間見た。そこには犍陀多という男が蠢いていた。この男は悪党だったが、たった一ついいことをしていた。小さな蜘蛛の命を助けたのだ。その報いに地獄から救い出してやろうとしたお釈迦様は、極楽の蜘蛛の糸を手に取り、地獄の底にそっと下ろしたのだが……児童文学の名篇として歴代数多の教科書にも掲載された芥川文学屈指の寓話。(12頁・★1.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628022351


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「戯作三昧(上)」 芥川龍之介

『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く。(24頁・★3個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020449

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「戯作三昧(下)」 芥川龍之介

『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く。(32頁・★4個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020456

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「玄鶴山房」 芥川龍之介

画家堀越玄鶴は、肺結核を患い離れで臥せっている。妻のお鳥も「腰抜け」で寝たきり。ふたりの面倒を見る娘のお鈴と婿の重吉だが、そこに元の妾、お芳が子連れで看病にやってきたことで、この家の空気が変わる。息子同士の諍いに心穏やかならぬお鈴、また看護婦甲野は他人の苦痛を享楽するという病的な性向を持ち、冷ややかな目で一家を見ている。誰もが浅ましく侘びしいという人間の暗澹たる現実を直視した短篇小説。(32頁・★4個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020418

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「煙草と悪魔」芥川龍之介

国内に本来なかった煙草という植物は、どういう経緯で日本にもたらされたか? この疑問に答える諸説の中から、天主教のバテレンが連れてきた伊留満(神弟)に化けた悪魔によるものとして描く。信者を悪の道に誘惑するつもりでいたが、信者があまりにも少ないのに肩透かしをくらった悪魔は、無聊を紛らわすため畑に煙草の種を撒いた。そして、すくすくと育った煙草を見た牛商人とある賭けをしたが……寓意とアイロニーに満ちた好篇。(20頁・★2.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628022269


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「煙管」芥川龍之介

加賀百万石の藩主、前田斉広の携える金無垢の煙管の豪奢さは、参勤で登城する江戸城の中でも噂の的だった。斉広にとっては愛玩の対象というより前田家の威厳を示さんがための煙管だったので、御数寄屋坊主、河内山宗俊の大胆な申し出に、気前の良さを示そうとまんまとせしめられてしまう。それを聞いたご用部屋の三人の役人は一計を案じ、斉広に銀の煙管を持たせることにしたが……権威と虚栄、物欲とその空しさを小気味良い筆致で描く好短篇。(20頁・★2.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628022252


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「子供の病気」 芥川龍之介

大正十二年、芥川三十二歳の時の小品。乳飲み児の次男・多加志が腸炎で入院せざるを得ない状況に狼狽する芥川。そんな状況にもかかわらず突然やってきて借金を申し込む厚顔無恥な青年。不安で何にも手がつかないなか、雑誌に掲載する小説の締切に追われる物書きとしての性。入院当日にあってもひっきりなしに訪れる来客。吹っかけられる文学論を虚に聞き流す芥川……子を思うふつうの父親としての芥川像を垣間見る作品。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020333

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「地獄変(上)」 芥川龍之介

吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)

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330円 (税込)  [JAN]4582628021323

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「地獄変(下)」 芥川龍之介

吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)

330円 (税込)   [JAN]4582628021330

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「蜃気楼」 芥川龍之介

芥川龍之介が亡くなる四ヶ月前に発表された作品。当時話題の「蜃気楼」を見に、東京から遊びにきていた大学生のK君と、友人のO君を誘って、鵠沼の海岸に行く。そこで出会った「新時代」を表象するカップル、砂浜で見つけた水葬された死骸についていたと思しき人名が横文字で記された木札……衰弱した心身が潜在意識として死をとらえているのか、妙に澄み切った空間に通底和音のように響くうつろな音階が聞こえる幻想的な短篇。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020364

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「大道寺信輔の半生」 芥川龍之介

江戸伝来の下町よりも寂れてすたれた本所。自らの生地に向ける思い、わずかに残る見すぼらしく限定的な自然に対する愛着をはじめ、母乳で育てられなかったために愛憎こもごもの牛乳について、憎むべき貧困、あるいは学校、本、友だち……自伝的要素をちりばめながら、自らの文学的感性を形作った環境や出来事を語る、芥川文学を知る上で重要な一篇。(32頁・★4個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020340

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「歯車(上)」 芥川龍之介

知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(24頁・★3個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020463

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「歯車(下)」 芥川龍之介

知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(32頁・★4個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020470

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「点鬼簿」 芥川龍之介

「僕の母は狂人だった。」悲痛な一文で始まる自伝。「点鬼簿」とは死者の姓名を記した帳面のこと。生後すぐに養家に出された芥川が、その母親への冷めた思い、死に臨んだ折の複雑な心境を綴る。次にそこに加えるのは芥川が生まれる前に夭逝した姉の初子。「初ちゃん」と呼ばれ姉弟の中で最も賢かったらしいこの姉に、芥川は「或る親しみ」を感じる。そして二十八の時にインフルエンザで亡くなった父……物故した三人の肉親を描く。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020357

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「ひょっとこ」 芥川龍之介

東京帝大在学中の作。隅田川に浮かぶ花見船の上で衆目が集まるなか、ひょっとこの面をつけ馬鹿踊を踊っている最中に脳溢血で死んだ男の話。男は親父の代からの日本橋の絵具屋主人。酔うと気が大きくなり馬鹿踊をする癖がある。男の癖はそれだけでなく、悪気がないにもかかわらず、ふと嘘をついてしまう。嘘が嘘に重なり、どれが本当の自分かわからなくなってしまう始末。そんな男の最期を描き、人間の虚実皮膜の喜悲劇を喝破した快作。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020296

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「舞踏会」 芥川龍之介

歴代、数々の教科書にも採択され、芥川の短篇の中でも最もポピュラーなもののうちのひとつ。文明開化の響きが残る明治十九年、鹿鳴館で催された舞踏会の情景を描く。父に連れられて初めての舞踏会に臨む明子。本人の不安をよそに、日本の少女の美を遺憾なく具えた彼女の姿は衆目を集めた。その明子に踊りの相手を名乗り出た仏蘭西の海軍将校。華やかな情景の中にあって文明の刹那的な繁栄とその後ろにある翳りをも描き出した名篇。(16頁・★2個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020319

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「藪の中」 芥川龍之介

時は平安。山科の藪の中で男の死骸が見つかった。妻を連れ都から若狭に戻る途中だった。盗人に妻を手ごめにされ殺害されたと思しいが、その妻は消えていた――この惨事を、取り調べを受けた死骸の発見者、事件直前に夫婦を見かけた旅法師、妻の母、盗人の自白、清水寺での妻の懺悔、そして死霊となった男自身の言葉によって多面的に描く。見る角度によって異なる複数の真実、絡まり合う複雑怪奇な人間の性が見事に浮き彫りにされる。(24頁・★3個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020388

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「竜」 芥川龍之介

恵印という異形の鼻を持つ法師の話。ふだんより鼻のことで自分を笑う人々を笑い返そうと、猿沢池のほとりに「三月三日この池より竜昇らんずるあり」と嘘の立札を建てた恵印。流言飛語、噂は噂を呼び、都のみならず周辺の国まで巻き込むさまを見て、最初は痛快に思っていた恵印もだんだん恐ろしくなり。さて当日、人の波に溢れる池の周り、皆ことの成り行きを固唾を飲んで見ていたが……現代のフェイクニュースにも通ずる作品。(24頁・★3個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020395

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「老年」 芥川龍之介

「羅生門」の半年前に書かれた実質の処女作。二十二歳とは思えない老成した筆致に注目。場所は隅田川沿いの料理屋。雪のなか一中節(浄瑠璃の一種)の例会に集まる老人たち。料理屋の隠居、房さんは十五の歳から茶屋酒の味をおぼえ、二十五で若大夫と心中沙汰を起こした名うての遊び人だが、今はそんな過去を見る影もない。ところが……新時代の到来に逆行する江戸趣味溢れる空間に、年老いてゆく人間の悲しみを描く芥川らしい一篇。(12頁・★1.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020289

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「蜜柑」 芥川龍之介

ある曇った冬の日暮れ、横須賀発上り二等客車に乗った「私」の前の席に、いかにも田舎者らしい不潔な服装の十三、四の小娘が座った。霜焼けの手には三等車の切符が。しかも小娘は、ただでさえ不快な私の気持ちを逆撫でするように、隧道に入ろうとする汽車の窓を開けようとしているのだ。怒りさえ込み上げてきた私だったが、隧道から出た汽車の窓の下の光景に、思わず息を呑んだ……倦怠から一転、新鮮な温かみに満たされる逸品。(12頁・★1.5個)

330円 (税込)  [JAN]4582628020432

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