【11月30日更新:新商品追加】
作品リフィルセット
作品リフィル:12作品
季刊 アンソロジスト | ブックジャケット | スターターキット |
作品リフィル あ行 | 作品リフィルセット | 作品リフィル 詩歌 |
作品リフィル か行 | 芥川龍之介 | 太田靖久 |
作品リフィル さ行 | 織田作之助 | |
作品リフィル た行 | 井伏鱒二 | |
作品リフィル な行 | 後藤明生 | |
作品リフィル は行 | 坂口安吾 | |
作品リフィル ま行 | 太宰治 | |
作品リフィル や行 | 宮沢賢治 | |
作品リフィル ら行 | 山本周五郎 | |
作品リフィル わ行 | 吉田篤弘 | |
【新商品】

【徳田秋声 短篇アンソロジー】
大木志門・篇 余震の一夜・和解 他六篇
¥2,200 (税込) ISBN 978-4-8038-0425-6 C0092
□収録作品リフィル
「私」
「痛み」
「感傷的の事」
「余震の一夜」
「風呂桶」
「和解」
「勲章」
「喰われた芸術」
amazon【徳田秋声 短篇アンソロジー】大木志門・篇 余震の一夜・和解 他六篇
田畑書店公式通販サイト【徳田秋声 短篇アンソロジー】大木志門・篇 余震の一夜・和解 他六篇

【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】
梅﨑実奈 選 そのときがきたら
¥1,980 (税込) ISBN 978-4-8038-0426-3 C0092
□収録作品リフィル
芥川龍之介「蜘蛛の糸」
海野十三 「もくねじ」
中島敦 「巡査のいる風景」
尾形亀之助「尾形亀之助詩選」
宮柊二 「山西省 (抄)」
石原吉郎 「沈黙と失語」
平井弘 「森のはなし」
amazon 【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】梅﨑実奈 選 そのときがきたら
田畑書店公式通販サイト 【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】梅﨑実奈 選 そのときがきたら

作品リフィルセット《川柳アンソロジー みずうみ》
¥1,650 (税込) ISBN 978-4-8038-0421-8 C0092
作品リフィルセット《川柳アンソロジー みずうみ》
□収録作品リフィル
なかはられいこ「水の骨組み」
芳賀博子「襖はずして」
八上桐子「ほとり」
北村幸子「雫する楽器」
佐藤みさ子「空うつす」
amazon 作品リフィルセット《川柳アンソロジー みずうみ》
田畑書店公式通販サイト 作品リフィルセット《川柳アンソロジー みずうみ》

作品リフィルセット「短歌アンソロジー あこがれ」
¥1,650 (税込)
作品リフィルセット《短歌アンソロジー あこがれ》
□収録作品リフィル
「卵焼きかわいそう」(小島なお)
「笑えば翼ごと動く」(初谷むい)
「夢と胸筋」(東直子)
「黒百合」(平岡直子)
「宝石」(山崎聡子)
amazon 作品リフィルセット「短歌アンソロジー あこがれ/憧れ」
田畑書店公式通販サイト 作品リフィルセット「短歌アンソロジー あこがれ/憧れ」

「私」徳田秋声
日露戦争下のある晩、日本軍が遼陽を攻め落としたことを告げる号外が街を駆け抜けた。「お国の勝利」の喜びは人々を賑やかに満たしていく。ただ一人、私だけを残し……。戦勝に沸く華やかな国民の姿と、その裏に確かに存在した無数の犠牲者の姿が、名もなき「私」の眼を通して密やかに浮かび上がる。飾らない現実を切り取ることで人生が鮮やかに活写される、秋声文学の魅力を今に伝える掌篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「私」徳田秋声

「痛み」徳田秋声
職業婦人である松枝は、派手好きで情の薄い最初の結婚相手と別れ、二度目の夫と新生活を送っている。しかし再婚した夫は嫉妬深く、執着心が強いうえに精神も非常に不安定で、松枝はたびたび酷い暴力をふるわれていた。理不尽な暴力から逃れるために練った計画により、夫の態度は改善へと向かうが、おとなしくなった夫に松枝は次第に物足りなさを感じはじめる……。倒錯的でいびつな夫婦の関係性を描いた秋声異色の短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「痛み」徳田秋声

「感傷的の事」徳田秋声
家郷から離れて暮らしていた「私」は、十年振りに母の元を訪れる決心をする。それほどまでに時が空いてしまったのに大した理由はなく、ただ母の甘さへの反感が足を遠ざけさせていたのであった。郷里への汽車に乗った「私」は、その道すがら過去を振り返り、いかに自分が母を顧みて来なかったかに気付いてゆき、そして母と再会を果たすが……。感情の疎隔と時の流れの残酷さ、過去への悔恨が痛みのように刻み付けられた自伝的一篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「感傷的の事」徳田秋声

「余震の一夜」徳田秋声
関東を襲った未曾有の地震の際に「私」は家族のそばにいなかったことを妻に恨めしく思われていた。ある夜、強い余震を感じて戸外へ出ると、いまにも倒れそうな不安定なわが家が目に入る。しかし家を離れる決断もできず、安住を得られない一家の頭をよぎるのは、災害を生き延びた老婆たちのたくましい姿であった。作者自身の体験を元にして、過ぎ去ってもなお人心を揺るがし続ける関東大震災直後の一夜を切り取った短篇。00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「余震の一夜」徳田秋声

「風呂桶」徳田秋声
年老いてゆく自身を憂い、四季折々の自然や成長めざましい子どもたちにさえ、自身の残り少ない寿命を連想してしまう津島。古くなった風呂桶を買い換えるに際して、何でもないことから生じた妻との喧嘩の中で、不意に芽生えた暴力性に亡き父親の面影を見る。人生の下り坂にさしかかった一人の男が直面するある日の出来事を通して、いずれ誰にでも訪れる「老い」という問題が恬淡と描かれた秋声「心境小説」の代表的短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「風呂桶」徳田秋声

「和解」徳田秋声
O—先生を崇拝していたK―と、尊敬しながらも対等に接し続けた「私」。先生の死後、二人は価値観の相違から決別してしまう。それから三十年、K―の弟が「私」のアパートを訪れたことから二人の運命は再び交差し始める。最初は顔を合わせることさえ躊躇していた「私」だったが、やがて共に先生の話をするまでにK―との関係が修繕していく。果たして二人は和解することが出来たのか。兄弟子である泉鏡花との確執を経て書かれた秋声の名作短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「和解」徳田秋声

「勲章」徳田秋声
分相応な結婚を望んで惣一に嫁いだかな子だったが、幸福なはずの新生活は想像とは全く違っていた。吝嗇な義父に迫られたことで同居に耐えられなくなった彼女は、独立して夫婦二人で暮らすことを決めるも、博打に明け暮れる夫に毎日の苦労は絶えず、周囲からは離婚をすすめられるが……。戦時下の東京を舞台に庶民の夫婦のなし崩しの生を描いた秋声後期の好短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「勲章」徳田秋声

「喰われた芸術」徳田秋声
「六月の或日、ふと思い立って、彼は久しぶりでK—先生の未亡人を郊外のその家に訪ねて見た。」——尾崎紅葉没後、秋声が困窮する紅葉遺族を見かねて菊池寛と共に中央公論社から『尾崎紅葉全集』を出版した経緯を描いた生涯最後の短篇。同門たちとの別れやその遺族との交流を残された者の視点で描き出し、紅葉門の兄弟子である泉鏡花との「K—先生の芸術」をかけた因縁話とも読める。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「喰われた芸術」徳田秋声

「蜘蛛の糸」芥川龍之介
極楽の蓮池のふちを散歩していた御釈迦様は、水晶のような池の水の底から真下にある地獄の底を垣間見た。そこには犍陀多という男が蠢いていた。この男は悪党だったが、たった一ついいことをしていた。小さな蜘蛛の命を助けたのだ。その報いに地獄から救い出してやろうとしたお釈迦様は、極楽の蜘蛛の糸を手に取り、地獄の底にそっと下ろしたのだが……児童文学の名篇として歴代数多の教科書にも掲載された芥川文学屈指の寓話。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「蜘蛛の糸」芥川龍之介

「もくねじ」海野十三
〈大東亜戦争〉の〈国際放送機〉に使われることを夢見ていた「もくねじ」だったが、検査で欠陥が見つかってしまう。しかし、不良品に分別され嘆き悲しんでいた「もくねじ」にもやがて幸運が訪れる。話に夢中の若い工員によってよく確かめられないまま放送機に装着されてしまったのだ。ところが現場に到着したところで再び不運に見舞われ……戦時下における忠誠心と運命の皮肉に翻弄される様を「もくねじ」に託して描く異色作。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「もくねじ」海野十三

「巡査のいる風景」中島敦
父の転勤により青春期のほとんどを過ごした植民地・朝鮮の町を舞台にした一九二三年、作者二十歳の時の作品。朝鮮人の巡査を語り手として、すさみきった厳冬の街の風景のなかに、日本人と朝鮮人のいびつな関係、自らのアイデンティティに悩む巡査の内面と、署長と口論をしたかどで解雇される非運を描く。とりわけ東京で夫を亡くした街娼が、客から関東大震災の朝鮮人大虐殺の話を聞き、取り乱して逮捕される場面が生々しい。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「巡査のいる風景」中島敦

「尾形亀之助詩選」尾形亀之助
「大きな戦争」が迫るなか、「なにもしない」生活を、華やかな技巧とはほど遠い詩行に写し取った亀之助。「最も小額の費用で生活して、それ以上に労役せぬこと——このことは、正しくないと君の言う現在の社会は、君が余分に費ひやした労力がそのまゝ君達から彼等と呼ばれる者のためになることにもあてはまる筈だ。」……〈彼等=社会の上位で搾取する者たち〉への抵抗を貫き、自ら餓死に近い死を選んだ伝説の詩人のエッセンスがここに!(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「尾形亀之助詩選」尾形亀之助

「山西省 (抄)」宮柊二
戦後を代表する歌人・宮柊二の第二歌集『山西省』は、日中戦争での自身の従軍体験を記録した戦争文学の名作。宮はその後記にこう記す。「本集の作品は、主として中国北部大陸に、それも津波のやうな山脈の重畳にばかり戦つて来た無名の、それは歌人でもなく思想人でも無かつた一人の補充兵が、例へて言へば丁度、魚が水面に噞喁ふやうにして記した感慨の断片の蒐積に過ぎない。」……だからこそ、いま読まれるべき作品集!(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「山西省 (抄)」宮柊二

「沈黙と失語」石原吉郎
シベリアで八年に及ぶ収容所生活を送った詩人が、壮絶な体験から〈沈黙〉と〈失語〉について深い思索を巡らす。静寂が同時に轟音とも感じられるシベリア密林。一日は無限に長く一年は驚くほど短い。異常なものが徐々に日常的なものへ還元されて行くという異常のなか、平均化され無個性化されるほどに〈平和〉は訪れる。「言葉がむなしいのではない。言葉の主体がすでにむなしいのである」詩人の思考はまさに現代日本に生きる我々の胸をえぐる。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「沈黙と失語」石原吉郎

「森のはなし」平井弘
「どこのがれきの隙間にもいへることだが痩せたものならとほれる」「根つからのものとはおもひたくないがまあ振り上げたほうが利き腕」……一九六一年の第一歌集刊行以来、歌集四作と寡作ながら、眼前する世界、我々が生きる社会に実際に起こっている〈何か〉を、〈それ〉とは言わない独特な語り口で描いてきた歌人が、〈そのとき〉の到来を予感させながら、〈いま〉を詠む。平井短歌の特徴である不穏さと批評性の高さを濃密に内包した連作!(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「森のはなし」平井弘

「煙草と悪魔」芥川龍之介
国内に本来なかった煙草という植物は、どういう経緯で日本にもたらされたか? この疑問に答える諸説の中から、天主教のバテレンが連れてきた伊留満(神弟)に化けた悪魔によるものとして描く。信者を悪の道に誘惑するつもりでいたが、信者があまりにも少ないのに肩透かしをくらった悪魔は、無聊を紛らわすため畑に煙草の種を撒いた。そして、すくすくと育った煙草を見た牛商人とある賭けをしたが……寓意とアイロニーに満ちた好篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「煙管」芥川龍之介
加賀百万石の藩主、前田斉広の携える金無垢の煙管の豪奢さは、参勤で登城する江戸城の中でも噂の的だった。斉広にとっては愛玩の対象というより前田家の威厳を示さんがための煙管だったので、御数寄屋坊主、河内山宗俊の大胆な申し出に、気前の良さを示そうとまんまとせしめられてしまう。それを聞いたご用部屋の三人の役人は一計を案じ、斉広に銀の煙管を持たせることにしたが……権威と虚栄、物欲とその空しさを小気味良い筆致で描く好短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「煙管」芥川龍之介

「短いトンネルの先に」太田靖久
大雨が降った翌日、小説家はコーヒーの粉を買いにぶらりと散歩に出た。桜並木の先の古い小学校の佇まいに、ふと郷里で通った小学校を思い出す。短いトンネルの先その小学校はあった。喫茶店の本棚で幸田文の『父・こんなこと』を読んでいるうちに創作の刺激を受けた小説家は、興奮醒めやらぬままでたらめに町を歩く。そこで見つけたトンネルの先には……短い紙幅のなかに、複雑に絡み合う小説家の生活と創作の関係を描いた短篇!(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「短いトンネルの先に」太田靖久

「カラスの味」太田靖久
担任の女性教師、大垣先生に「カラス」というあだ名をつけられたおかげで、わたしは暗い中学生活を送った。活動的だががさつな性格の先生がわたしは嫌いだった。地元から離れた高校に進んでようやくしがらみから自由になったわたしは、ある日、恩師のお葬式に出るという父親に付き添って福岡を訪れる。そして父の友人が営むジビエレストランで初めて食べたカラスの肉に、なぜか大垣先生を思った——人生の複雑な味を巧妙に描く短篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「カラスの味」太田靖久

「明日、世界が終わるとしたら」吉田篤弘
上京し、薬剤師をやっているちょっと変わった伯母さんの家に居候をするようになって6年。三十路も半ばで職も失い、いつお嫁にいくつもり? と美々は繰り返し伯母に聞かれるのだった。そんな折、先に東京に来ていた幼なじみの直人から連絡があった。これから新幹線に乗って、故郷の町にずっと昔からあるステーキ・ハウス〈ハシモト〉にビフテキを食べに行こうという。果たしてまだあのお店はあるのか? ハートウォーミングなラブストーリー。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「黒砂糖」吉田篤弘
今は亡き伊吹先生の本職は世界でただ一人のファンファーレ専門の作曲家だったが、晩年に近くなって都会の森が衰えているのを愁い、またこよなく夜を愛することから、夜になると黒い上着を纏い、ポケットに黒砂糖をしのばせて「月夜に種蒔く人」となった。〈黄金アパート〉の中庭で教えを乞うた僕も、師を継承して夜な夜な町に繰り出していたのだが、ある夜、どうやら異性の同士がいることに気がつくのだった……幻想と詩情に溢れる名篇。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「永き水曜日の休息」吉田篤弘
わたしのあだ名は「デコ」。図書館の司書をしている。その広い額に“惚れた”と言ってくれた夫がこの世を去ったのは2年前の水曜日で、図書館の休館日だった。それ以来、水曜日の休日が恐いくらい終わりのないように感じられてしまう。職場でもっとも気の合う〝朝子二号〟にそのことを相談すると、伯母である「心の先生」を紹介される。先生の声はわたしが心のよすがとしている『曇り空』という本から聞えてくる声にとても似ていたのだった。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「海の床屋」吉田篤弘
映画の買付のため三年に一度、海辺の小さな町の映画祭を訪れる「私」。五度目になる今年は不作かと思った矢先に出会った『ある小さな床屋の冒険』という映画が、子どものころ「海の家」で過ごした夏の思い出を引き寄せる。眼鏡を海に落としてしまい、代わりに借りた男ものの眼鏡。「海の床屋」のホクトさん。海辺のホテルのマネージャーの息子、ユウジ君。その眼鏡は実はユウジ君のものなんだ、とホクトさんが語る……霞んだ記憶にふと蘇る物語。00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「水晶萬年筆」吉田篤弘
「夥」という珍しい名をもつオビタダは、光沢のあるつるりとした紙に刷られた雑誌にイラストを描いて生活の糧を得ていたが、本当はざらざらとした濁点のあるものに惹かれていた。そんなオビタダが恋をした。相手は十字路の角にある〈つみれ〉というおでん屋のつみれさん。彼女の父も絵描きで、ある日、一枚だけ残っている父の絵を見に行こうと誘われるが……そこはかとなく漂うペーソス。幻想の町で起こるリアルな物語。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「マリオ・コーヒー年代記」吉田篤弘
初めてマリオの店を訪れたのは「僕」がまだ17歳のとき。「世界の真ん中でコーヒーをつくる男」と勝手に名づけたマリオはほんとうに美味しいミルク・コーヒーを作るのだった。22歳になって図書館につとめ「私」と名のるようになると、今度はT百貨店の地下に出来たマリオの店に通うようになる。三十代の終わりころ後輩ができた「おれ」。50を過ぎ仲間を募って〈小さな楽団〉をつくった「私」。いつもマリオの店は人生の隣にあった。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

「針がとぶ」吉田篤弘
伯母さんの死は「わたし」にとって初めての身近な人の死だった。若いときから詩人・翻訳家として認められていた伯母さん。生涯をひとり身で通した伯母さんは〈北極星のように美しい人〉だった。家族から遺品整理を任されたがなかなか遺品を捨てることができないわたしは、その中にビートルズの「ホワイト・アルバム」を見つける。父の部屋にあった古いレコード・プレーヤーのターンテーブルに載せたB面の最後の曲には……。(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

《川柳アンソロジー みずうみ》
「水の骨組み」なかはられいこ
「みずうみ」というテーマを前にして、その大きさ静けさ美しさに身動きできない私でした。天災は為すすべなく、人災は止むことのないこの世。川柳は何を書けばいいのか、川柳とは何なのかと、迷い続けています。それでも川柳があったから私は生きてこられたのであり、川柳のおかげですばらしい人と作品に出会えたのです。(著者より)(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

《川柳アンソロジー みずうみ》
「襖はずして」芳賀博子
少しまとまった休みが取れたら行こう行きたいと思いながらずっと先送りしてきたみずうみの畔へ、ようやく訪れることがかなった。宿へ着くなり遅いじゃないかと誰かが笑う。界隈を歩けば樹も花も鳥も虫も新鮮な驚きをもって懐かしく慕わしい。テーマ「みずうみ」が連れて来てくれたこの地は、私がもう忘れかけていた記憶をフラッシュバックさせながら、今へ息を吹き込んでゆく。そういえばあなたともご一緒したことがあったでしょうか。(著者より)(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「襖はずして」芳賀博子

《川柳アンソロジー みずうみ》
「ほとり」八上桐子
幼いころ、高知城の堀に落ちて溺れた。からだが橋から飛び出したとき、あっ、と思ったこと、無数の泡に包まれたことだけ覚えている。苦しかった記憶はない。以来、水がこわくて好きだ。わたしを絶対に拒まず、息もできないほど包みこんでくれる水が。みずうみを書きに、みずうみへ出かけた。水を眺めていると、あらゆる感情が小さくうすっぺらな石のようになる。投げたら水面を切って遠くまで跳ねそうなそれを、手放せずに持ちかえった。(著者より)(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
田畑書店公式通販サイト 「ほとり」八上桐子

《川柳アンソロジー みずうみ》
「雫する楽器」北村幸子
滋賀に移り住み三十五年。家から琵琶湖は見えない。遥かな山並みが実は対岸なのだと意識すると、今だに不思議な気持ちになる。さらに山奥には母の故郷が、今はダム湖の底に眠っている。以前日照りで干上がった湖底から校舎や石橋が現れた事があった。遺跡のように時が止まった村のニュース映像を、母は食い入るように見ていた。あの時どんな会話をしたのか、もう忘れてしまった。近くて遠いみずうみ。(著者より)(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]

《川柳アンソロジー みずうみ》
「空うつす」佐藤みさ子
「みずうみ」というテーマを前にして、その大きさ静けさ美しさに身動きできない私でした。天災は為すすべなく、人災は止むことのないこの世。川柳は何を書けばいいのか、川柳とは何なのかと、迷い続けています。それでも川柳があったから私は生きてこられたのであり、川柳のおかげですばらしい人と作品に出会えたのです。(著者より)(00頁・★0.0個)
330円 (税込) [JAN]
ブックジャケット

ブックジャケット ( 名久井直子 デザイン )
1,980円 (税込) [JAN]4582628020012
まったく新しい読書体験のはじまり……好きな作家の好きな作品を集めて、あなただけの短篇集をつくってみましょう。別売の「作品リフィル」を、付属の軸棒を使ってこのブックジャケットに綴じます。最大およそ200ページ。作品リフィルには8ページにひとつの★印がついています。合わせて25個までが目安です。さあ、あなたの掌に、豊かに広がる短篇小説の世界を!
(付属品:ステンレス軸棒15本、貼ってはがせるコンテンツシール3枚、使い方マニュアル)
梅田 蔦屋書 ポケットアンソロジーブックジャケット(名久井直子デザイン)
田畑書店公式通販サイト ポケットアンソロジー ブックジャケット(名久井直子デザイン)
amazon ポケットアンソロジー ブックジャケット(名久井直子デザイン)

ブックジャケット ( クラフト・エヴィング商會 デザイン )
1,980円 (税込) [JAN]4582628022061
まったく新しい読書体験のはじまり……好きな作家の好きな作品を集めて、あなただけの短篇集をつくってみましょう。別売の「作品リフィル」を、付属の軸棒を使ってこのブックジャケットに綴じます。最大およそ200ページ。作品リフィルには8ページにひとつの★印がついています。合わせて25個までが目安です。さあ、あなたの掌に、豊かに広がる短篇小説の世界を!
(付属品:ステンレス軸棒15本、貼ってはがせるコンテンツシール3枚、使い方マニュアル)
ポケットアンソロジー スターターキット

荒川洋治・選『初めての世界』
¥3,850 (税込) [JAN]4582628021262
アンソロジスト荒川洋治が選ぶ最良の短編小説入門をポケットアンソロジーで味わう。
ブックジャケットと作品リフィル8篇にその紹介を加えセットにしたポケットアンソロジーのスターターキットです。
□収録作品リフィル
国木田独歩 画の悲み
菅忠雄 銅鑼
葉山嘉樹 淫売婦
横光利一 春は馬車に乗って
松永延造 ラ氏の笛
金史良 コブタンネ
小山清 落穂拾い
高見順 不正確な生
amazon ポケットアンソロジー スターターキット 荒川洋治・選『初めての世界』
田畑書店公式通販サイト ポケットアンソロジー スターターキット 荒川洋治・選『初めての世界』
梅田 蔦屋書 ポケットアンソロジー スターターキット 荒川洋治・選『初めての世界』

梅﨑実奈・選『詩のようなもの』
¥3,850 (税込) [JAN]4582628021262
紀伊國屋書店新宿本店特製、文芸所担当梅﨑実奈さん選のスターターキット『詩のようなもの』。
ブックジャケットと作品リフィル9篇、選者梅﨑実奈さんの解説入り。
□収録作品リフィル
宮沢賢治 やまなし
太宰治 駆込み訴え
太宰治 HUMAN LOST
梶井基次郎 桜の樹の下で
林芙美子 美しい犬
江戸川乱歩 木馬は踊る
萩原朔太郎 猫町
泉鏡花 外科医
小山清 老人と鳩

永山裕美・選『美しいもの』
¥3,850 (税込) [JAN]4582628021262
梅田 蔦屋書店特製、文芸コンシェルジュの永山裕美さん選のスターターキット『美しいもの』。
ブックジャケットと作品リフィル8篇、選者永山裕美さんの解説入り。
□収録作品リフィル
太宰治「葉桜と魔笛」
林芙美子「晩菊」
坂口安吾「桜の森の満開の下」
室生犀星「生涯の垣根」
梅崎春生「赤帯の話」
片上廣子「ばらの花五つ」
岡本かの子「みちのく」
夢野久作「瓶詰地獄」
田畑書店公式通販サイト ポケットアンソロジー スターターキット 永山裕美・選『美しいもの』
梅田 蔦屋書 ポケットアンソロジー スターターキット 永山裕美・選『美しいもの』

吉田篤弘キット『十字路のあるところ』
¥3,850 (税込) [JAN]4582628022184
自選短編アンソロジー「十字路のあるところ」とクラフト・エヴィング商會デザインブックジャケットのセット。短編小説作品リフィル7編+ライナーノーツ1編を収録。
□収録作品リフィル
「ライナーノーツ 十字路のあるところ」
「針がとぶ」
「マリオ・コーヒー年代記」
「水晶萬年筆」
「海の床屋」
「永き水曜日の休息」
「黒砂糖」
「明日、世界が終わるとしたら」
amazon ポケットアンソロジー 吉田篤弘キット『十字路のあるところ』
田畑書店公式通販サイト ポケットアンソロジー 吉田篤弘キット『十字路のあるところ』
ポケットアンソロジー 作品リフィルセット

太宰治の女たち 木村綾子 撰 【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】
¥3,300 (税込) [JAN]4582628021897
作品リフィル12篇と選者木村綾子さんの解説を収録
□収録作品リフィル
女生徒(上・下)
燈籠
皮膚と心
きりぎりす
千代女
恥
十二月八日
待つ
ヴィヨンの妻(上・下)
おさん
amazon 太宰治の女たち 木村綾子 撰 【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】
田畑書店公式通販サイト 太宰治の女たち 木村綾子 撰 【ポケットアンソロジー 作品リフィルセット】
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後藤明生 松崎元子 選【娘が選ぶ父の短編ベスト5】
¥1,650 (税込) [JAN]4582628021583
作品リフィル6篇と選者松崎元子さんの解説を収録
□収録作品リフィル
疑問符で終る話
道
夢かたり
宝船
しんとく問答(上)
しんとく問答(下)
季刊 アンソロジスト 2022 春 創刊号《娘が選ぶ父の短編ベスト5》より
amazon 後藤明生 松崎元子 選【娘が選ぶ父の短編ベスト5】
田畑書店公式通販サイト 後藤明生 松崎元子 選【娘が選ぶ父の短編ベスト5】

永山裕美 選『灯の物語』
¥1,375 (税込) [JAN]4582628021972
作品リフィル5篇と季刊 アンソロジストに掲載された永山裕美さんの解説を収録
□収録作品リフィル
新見南吉「おじいさんのランプ」
太宰治「雪の夜の話」
有島武郎「小さき者へ」
室生犀星「洋灯はくらいか明るいか」
森鴎外「杯」

作品リフィルセット 吉田篤弘自選短篇アンソロジー「十字路のあるところ」
¥1,980(税込) [ISBN]978-4-8038-0417-1
自選短編小説作品リフィル7編+ライナーノーツ1編を収録。
【収録作品】
「ライナーノーツ 十字路のあるところ」
「針がとぶ」
「マリオ・コーヒー年代記」
「水晶萬年筆」
「海の床屋」
「永き水曜日の休息」
「黒砂糖」
「明日、世界が終わるとしたら」
amazon 作品リフィルセット 吉田篤弘自選短篇アンソロジー「十字路のあるところ」
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ポケットアンソロジー作品リフィル 3冊セット「恋」
¥990 (税込) [JAN]4582628021903
東北の有名人「四郎馬鹿」と呉服屋の娘との温かい交情。外科室で麻酔を頑なに拒む夫人の秘められた愛。 若い娘に魅せられた妻子持ちのラッパ吹き……めくるめく〈恋〉の七変化。
□収録作品リフィル
江戸川乱歩「木馬は廻る」
泉鏡花「外科室」
岡本かの子「みちのく」
田畑書店公式通販サイト ポケットアンソロジー作品リフィル 3冊セット「恋」
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ポケットアンソロジー作品リフィル 3冊セット「夜」
¥990 (税込) [JAN]4582628021910
肺尖カタルの熱にうかされて歩いた寺町通りの夜も、いきなり血だらけの男に声をかけられた弁天町の夜も、三人の姉妹が天から見下ろす下界の美しい夜も……物語の数だけ、夜がある。
□収録作品リフィル
鈴木三重吉「星の女」
井伏鱒二「夜ふけと梅の花」
梶井基次郎「檸檬」
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ポケットアンソロジー作品リフィル 3冊セット「祈」
¥990 (税込) [JAN]4582628021927
責め苦の土壇場で「いんへるの」へ行こうと決意したおぎん。省線の小さな駅に誰を待つでもなく毎日座っている娘。印度人ラオチャンドの吹く不思議な笛の音……切実な祈りの声が聞える。
□収録作品リフィル
松永延造「ラ氏の笛」
太宰治「待つ」
芥川龍之介「おぎん」
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季刊 アンソロジスト

季刊 アンソロジスト 2022年 春 創刊号
定価 880円(税込) [ISBN]9784803803983
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田畑書店公式通販サイト 季刊 アンソロジスト 2022年 春 創刊号

季刊 アンソロジスト 2022年 夏季号
定価 1,100円(税込) [ISBN]9784803803983
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アンソロジスト vol.3
定価 800円(税込) [ISBN]9784803804058

アンソロジスト vol.4
定価 880円(税込)[ISBN]9784803804058

アンソロジスト vol.5
定価 880円(税込)[ISBN]9784803804164
作品リフィル 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし)
あ行

「秋」 芥川龍之介
1920年、「中央公論」に掲載され、翌21年、新潮社より刊行の『夜来の花』に収録されたものです。初期から続く、歴史や古典に材をとった芸術至上的かつ耽美的な作品から、現実や日常を対象化した作品に移行していくさきがけとなった短篇です。幼なじみの従兄をめぐる姉と妹の三角関係を微妙な心理描写と雅びな文体で描いた本篇は、いかにも大正期らしい均衡がとれた作品で、芥川作品のなかでも人気が高く、広く長く読み継がれています。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628020029
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「或阿呆の一生」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020371
「人生は一行のボオドレエルにも若かない。」という有名な文句を冒頭近くに刻んだ作品。芥川自殺後に見つかった遺作で、発表の可否、方法までも、友人の久米正雄に託した形になっている。五十一の短い断章からなるこの文章は、自伝的な要素と末期の眼で世相をとらえつつ、大正から昭和にかけて暗い時代に突入する社会をも予感させ、まさに芥川龍之介という希有な才能を持った作家の〝スワン・ソング〟となっている。(44頁・★5.5個)
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「或旧友へ送る手記」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020487
「誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。(中略)僕は君に送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている」この書き出しの通り、自死に至る心理を、方法を、場所を冷静な筆致で描出する。その主たる動機として記される「唯ぼんやりとした不安」とは何か? 死後に見つかり、久米正雄に宛てたとされるこの遺書で、自らの文学の総決算として自死を選んだ経緯を詳らかに語る。(12頁・★1.5個)
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「おぎん」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020425
元和か寛永か、とにかく遠い昔のこと、長崎は浦上におぎんという童女が住んでいた。大阪から流れてきた仏教徒の両親は亡くなり、孫七とおすみというキリシタン夫婦に信心篤く育てられたおぎんだが、ある年のクリスマスの夜に一家三人が囚われてしまう。あらゆる責苦にも決心が動かなかった三人だが、ただひとり、おぎんのみは土壇場で「おん教を捨てて」しまう。果たしておぎんの内心の真実は? 芥川龍之介「キリシタンもの」の最高峰。(16頁・★2個)

「お富の貞操」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020326
明治元年五月十四日の昼過ぎ。翌日には官軍が彰義隊を攻撃すると立ち退きのおふれが出た上野界隈にて、降りしきる雨のもと人影もない街に忘れ物を取りにきたお富。暗い家の台所で出くわしたのは泥棒、よく見れば顔見知りの乞食、新公だった。お富の忘れものはお上さんから言いつかった三毛猫。その三毛猫をかたに取り、お富に体を迫る新公。全てを諦めたように帯を解くお富……意外な展開と結末は見事としか言いようのない逸品。(24頁・★3個)

「疑惑」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020401
明治二十四年、濃尾大地震の惨禍に見舞われた岐阜・大垣でのこと。地元で教師に就いていた男が、梁の下敷きになって身動きがとれなくなった妻を、このままでは苦しんで死ぬと、傍らの瓦で頭を打ち砕き殺してしまう。ところが男は地震からだいぶたってもそのことを口にできないでいる。実は身体的な問題があった妻を不満に思っていた自分には、潜在的な殺意があったのではないかと、男は悩む……人間の心の奥底を鋭く抉る短篇小説。(28頁・★3.5個)
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「枯野抄」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020302
芥川が師と仰ぐ夏目漱石の没後二年目に発表された作。大阪は御堂前、花屋仁左衛門の裏座敷で迎えた松尾芭蕉の最期を看取る弟子たちの様子、病床での俳聖の最期の姿、あるいは臨終を告げる医師・木節の内心をリアルに描く。特に芭蕉をめぐる弟子たちの複雑な思い、死に水をとる瞬間の各々の心理を微分し、分析しながら描き分ける、その筆致が見事。同時に生と死の実相を冷徹に観察する作家としての眼に、根源的な不安の相を見もする。(20頁・★2.5個)
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「戯作三昧(上)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020449
『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く(24頁・★3個)
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「戯作三昧(下)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020456
『南総里見八犬伝』執筆中の馬琴は、創作につかれをおぼえると、世評にいらだったり、芸術と道徳の矛盾を感じたり、自己の能力にも不安を感じることしばしあった。が、いったん戯作三昧の境地に入ると、もろもろの疑惑を一掃して「新しい鉱石のように、美しく作者の前に、輝いている」人生と直面し得た。その馬琴のある日の生活を借りて、芥川自身の芸術観、すなわち道徳観をも止揚する芸術至上主義の境地を説く(32頁・★4個)

「玄鶴山房」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020418
画家堀越玄鶴は、肺結核を患い離れで臥せっている。妻のお鳥も「腰抜け」で寝たきり。ふたりの面倒を見る娘のお鈴と婿の重吉だが、そこに元の妾、お芳が子連れで看病にやってきたことで、この家の空気が変わる。息子同士の諍いに心穏やかならぬお鈴、また看護婦甲野は他人の苦痛を享楽するという病的な性向を持ち、冷ややかな目で一家を見ている。誰もが浅ましく侘びしいという人間の暗澹たる現実を直視した短篇小説。(32頁・★4個)
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「子供の病気」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020333
大正十二年、芥川三十二歳の時の小品。乳飲み児の次男・多加志が腸炎で入院せざるを得ない状況に狼狽する芥川。そんな状況にもかかわらず突然やってきて借金を申し込む厚顔無恥な青年。不安で何にも手がつかないなか、雑誌に掲載する小説の締切に追われる物書きとしての性。入院当日にあってもひっきりなしに訪れる来客。吹っかけられる文学論を虚に聞き流す芥川……子を思うふつうの父親としての芥川像を垣間見る作品。(16頁・★2個)
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「地獄変(上)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628021323
吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)
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「地獄変(下)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628021330
吝嗇で慳貪だが絵筆をとったら右に出る者はないと言われた画師・良秀は、絵のためならばどんな非道なことも厭わぬ男だった。がまた同時に、愛娘を溺愛する子煩悩な父親でもあった。その娘が仕える堀川の大殿様から地獄変の屏風絵を描けと申しつかった良秀は、常軌を逸した集中度で絵に向かったが、どうしても見なければ描けないものがある、と大殿にあることを申し出た……芸術至上主義を極限まで推し進めた不朽の名篇。(40頁・★5個)

「蜃気楼」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020364
芥川龍之介が亡くなる四ヶ月前に発表された作品。当時話題の「蜃気楼」を見に、東京から遊びにきていた大学生のK君と、友人のO君を誘って、鵠沼の海岸に行く。そこで出会った「新時代」を表象するカップル、砂浜で見つけた水葬された死骸についていたと思しき人名が横文字で記された木札……衰弱した心身が潜在意識として死をとらえているのか、妙に澄み切った空間に通底和音のように響くうつろな音階が聞こえる幻想的な短篇。(16頁・★2個)
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「大道寺信輔の半生」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020340
江戸伝来の下町よりも寂れてすたれた本所。自らの生地に向ける思い、わずかに残る見すぼらしく限定的な自然に対する愛着をはじめ、母乳で育てられなかったために愛憎こもごもの牛乳について、憎むべき貧困、あるいは学校、本、友だち……自伝的要素をちりばめながら、自らの文学的感性を形作った環境や出来事を語る、芥川文学を知る上で重要な一篇。(32頁・★4個)
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「歯車(上)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020463
知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(24頁・★3個)
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「歯車(下)」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020470
知人の結婚披露宴に列席するため、滞在中の避暑地から上京する「僕」。東海道の停車場で見かけたレエン・コオトの男が不穏な影を落とす。そして視界の隅に現れる半透明な歯車。結婚式のあとホテルに宿泊し小説を仕上げる予定だったが、姉からもたらされた義兄の轢死の報に接し、激しく動揺する。ドッペルゲンガーの怪、自らの罪深さに慄く「僕」に訪れる死の予感、視界の隅に廻る歯車……最晩年の錯乱した神経が産んだ自死をも予言した驚愕の短篇。(32頁・★4個)
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「点鬼簿」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020357
「僕の母は狂人だった。」悲痛な一文で始まる自伝。「点鬼簿」とは死者の姓名を記した帳面のこと。生後すぐに養家に出された芥川が、その母親への冷めた思い、死に臨んだ折の複雑な心境を綴る。次にそこに加えるのは芥川が生まれる前に夭逝した姉の初子。「初ちゃん」と呼ばれ姉弟の中で最も賢かったらしいこの姉に、芥川は「或る親しみ」を感じる。そして二十八の時にインフルエンザで亡くなった父……物故した三人の肉親を描く。(16頁・★2個)
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「ひょっとこ」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020296
東京帝大在学中の作。隅田川に浮かぶ花見船の上で衆目が集まるなか、ひょっとこの面をつけ馬鹿踊を踊っている最中に脳溢血で死んだ男の話。男は親父の代からの日本橋の絵具屋主人。酔うと気が大きくなり馬鹿踊をする癖がある。男の癖はそれだけでなく、悪気がないにもかかわらず、ふと嘘をついてしまう。嘘が嘘に重なり、どれが本当の自分かわからなくなってしまう始末。そんな男の最期を描き、人間の虚実皮膜の喜悲劇を喝破した快作。(16頁・★2個)
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「舞踏会」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020319
歴代、数々の教科書にも採択され、芥川の短篇の中でも最もポピュラーなもののうちのひとつ。文明開化の響きが残る明治十九年、鹿鳴館で催された舞踏会の情景を描く。父に連れられて初めての舞踏会に臨む明子。本人の不安をよそに、日本の少女の美を遺憾なく具えた彼女の姿は衆目を集めた。その明子に踊りの相手を名乗り出た仏蘭西の海軍将校。華やかな情景の中にあって文明の刹那的な繁栄とその後ろにある翳りをも描き出した名篇。(16頁・★2個)
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「藪の中」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020388
時は平安。山科の藪の中で男の死骸が見つかった。妻を連れ都から若狭に戻る途中だった。盗人に妻を手ごめにされ殺害されたと思しいが、その妻は消えていた――この惨事を、取り調べを受けた死骸の発見者、事件直前に夫婦を見かけた旅法師、妻の母、盗人の自白、清水寺での妻の懺悔、そして死霊となった男自身の言葉によって多面的に描く。見る角度によって異なる複数の真実、絡まり合う複雑怪奇な人間の性が見事に浮き彫りにされる。(24頁・★3個)
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「竜」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020395
恵印という異形の鼻を持つ法師の話。ふだんより鼻のことで自分を笑う人々を笑い返そうと、猿沢池のほとりに「三月三日この池より竜昇らんずるあり」と嘘の立札を建てた恵印。流言飛語、噂は噂を呼び、都のみならず周辺の国まで巻き込むさまを見て、最初は痛快に思っていた恵印もだんだん恐ろしくなり。さて当日、人の波に溢れる池の周り、皆ことの成り行きを固唾を飲んで見ていたが……現代のフェイクニュースにも通ずる作品。(24頁・★3個)
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「老年」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020289
「羅生門」の半年前に書かれた実質の処女作。二十二歳とは思えない老成した筆致に注目。場所は隅田川沿いの料理屋。雪のなか一中節(浄瑠璃の一種)の例会に集まる老人たち。料理屋の隠居、房さんは十五の歳から茶屋酒の味をおぼえ、二十五で若大夫と心中沙汰を起こした名うての遊び人だが、今はそんな過去を見る影もない。ところが……新時代の到来に逆行する江戸趣味溢れる空間に、年老いてゆく人間の悲しみを描く芥川らしい一篇。(12頁・★1.5個)
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「蜜柑」 芥川龍之介
330円 (税込) [JAN]4582628020432
ある曇った冬の日暮れ、横須賀発上り二等客車に乗った「私」の前の席に、いかにも田舎者らしい不潔な服装の十三、四の小娘が座った。霜焼けの手には三等車の切符が。しかも小娘は、ただでさえ不快な私の気持ちを逆撫でするように、隧道に入ろうとする汽車の窓を開けようとしているのだ。怒りさえ込み上げてきた私だったが、隧道から出た汽車の窓の下の光景に、思わず息を呑んだ……倦怠から一転、新鮮な温かみに満たされる逸品。(12頁・★1.5個)

「小さき者へ」有島武郎
330円 (税込) [JAN]4582628021941
母校、札幌農学校の英語教師として赴任した先で妻を結核で失った作家が、悲しみのなか残された三人の幼児たちに綴った励ましの言葉。自らの病を知って決して身近に子どもたちを寄せなかった母の強い意志と彼らへの愛。「私は自分の弱さに力を感じ始めた。私は仕事のできない所に仕事を見出した。……決して順風満帆とはいえない作家に大きな勇気と方向を示してくれた妻の死を語り、万人に贈る普遍的メッセージとなりえた名作。(24頁・★3個)
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「山椒魚」 井伏鱒二
330円 (税込) [JAN]4582628020494
「山椒魚は悲しんだ。」で始まる、言わずと知れた井伏鱒二の代表作。自分の棲み家である岩屋から、二年出ぬうちに体が大きくなり、入口の穴から出られなくなった山椒魚。「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」……この絶対絶命の喜悲劇的状況のなかでの、擬人化された山椒魚の内心の声、周囲の生き物たちとの関係を絶妙に描き、短い紙幅にもかかわらず深い読後感を残す、井伏文学の最高峰。(16頁・★2個)
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「鯉」 井伏鱒二
330円 (税込) [JAN]4582628020500
早大学予科で同級となり、物を書く上での大きな支えともなった親友・青木南八からもらった大きな真っ白い鯉の話。下宿の瓢箪池に放ったのだが、転居に際して行き先に困り……大きな展開もなく、淡々とした筆致ながら、そこはかとないユーモアと親友を失った悲しみ、拠り所のない自身の身上など、複雑な味と豊かな読後感を残す。「山椒魚」「屋根の上のサワン」とともに著者が文壇に認められるきっかけともなった井伏文学上、重要な短篇。(12頁・★1.5個)
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「屋根の上のサワン」 井伏鱒二
330円 (税込) [JAN]4582628020517
沼池の岸で鉄砲玉に傷ついた雁を見つけた「私」は家に連れ帰り治療を施した。すっかり快復した雁に私は「サワン」と名付け、風切羽根だけ短く切って庭で放し飼いをすることにした。サワンはとても人なつこく、私はそんなサワンを可愛がった。ある月の夜、サワンは屋根に上り叫ぶような鳴き声をたてた。伸ばした首の先には雁の群れが。そしてある日、サワンはいなくなった……渡り鳥との交歓を新鮮な文体で叙情豊かに描いた井伏文学の代表作のひとつ。(16頁・★2個)
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「夜ふけと梅の花」 井伏鱒二
330円 (税込) [JAN]4582628020524
ある夜ふけのこと、空腹とくったくした気持を抱えた「私」はおでん屋でも探そうと牛込弁天町あたりを歩いていた。邸宅の高い塀の内側からは白く咲いた梅の花が覗いている。すると電柱の陰からいきなり男が現れた。男は顔にひどい傷を作っていた。何でも消防士にやられたという。だいぶ酩酊した男は事情も覚えておらず、ただ訴えてやると憤っている。最初はたまげたが、男を宥め、帰って店の主人に申し開きをするすべを授けた「私」に男は感謝して五円札を握らせるが……人間への深い洞察とユーモアに溢れた名作。(24頁・★3個)
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「丹下氏邸」 井伏鱒二
330円 (税込) [JAN]4582628020531
田舎で収入役を勤める丹下氏は、使用人の男衆エイを折檻した。性根をいれかえてやろうというのだ。サボっていた時と同じ格好を強要するという奇妙な折檻を傍から見ていた「私」は東京から陶器の窯跡を発掘しにきた好事家。問わず語りに始めた丹下氏の話から、エイの不憫な来歴を知る。夫婦だが同じ住いを持たないエイの妻、オタツは夫の折檻を知り方向先からやってくる……備後弁のユーモラスな語り口と見事な描写が冴える不朽の名作。(28頁・★3.5個)
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「外科室」 泉鏡花
330円 (税込) [JAN]4582628020548
語り手は画師。親友の医学士高峰に頼んで彼の執刀する手術を見学することに。外科室中央の手術台に横たわるのは貴船伯爵夫人。伯爵や親族らが見守るなか、いざ手術を始めようという段になって、夫人は麻酔剤を頑なに拒む。周囲の説得をも全く聞き入れぬその理由とは、意識を無くしてあらぬことを口走る自分がこわいから、とのことだった。心穏やかならぬ伯爵をよそに、高峰はメスを執った……生死の狭間で愛と恐怖が交錯する耽美の極北!(36頁・★4.5個)

「露月二百句(片上長閑 撰)」 石井露月
330円 (税込) [JAN]4582628021729
正岡子規門下に、石井露月という俳人がいた。彼は実力に於いて碧梧桐、虛子、鳴雪らに肩を並べると言われながら、俳壇の中央に身を置くことなく、開業医として郷里秋田に留まり続けた。その句は余戯の域を超えているにもかかわらずあまりに顧みられていない。所謂俳壇史の陰に埋もれた存在として黙殺されがちな、俳人露月。本書では、彼の遺した句から注目すべき作を撰し、季別に配した。(48頁・★6個)
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「黄色い日日(上)」 梅崎春生
330円 (税込) [JAN]4582628020562
「彼」が身体に変調を来したのは、酒を飲んで深い水溜まりに落ちてからだった。強盗で捕まった友達の三元の身上を相談するために中山と飲んだ酒だった。また彼は隣人の発田とともに家主の白木から立ち退きを迫られていた。闘鶏を趣味とする白木。玩具屋で店番をする発田は狂ったようにシロフォンで草津節を叩き出す。そしてラジオから東京裁判の実況が……戦後間もない日常に潜む狂気を乾いた笑いとともに描く。(36頁・★4.5個)
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「黄色い日日(下)」 梅崎春生
330円 (税込) [JAN]4582628020562
「彼」が身体に変調を来したのは、酒を飲んで深い水溜まりに落ちてからだった。強盗で捕まった友達の三元の身上を相談するために中山と飲んだ酒だった。また彼は隣人の発田とともに家主の白木から立ち退きを迫られていた。闘鶏を趣味とする白木。玩具屋で店番をする発田は狂ったようにシロフォンで草津節を叩き出す。そしてラジオから東京裁判の実況が……戦後間もない日常に潜む狂気を乾いた笑いとともに描く。(28頁・★3.5個)

「赤帯の話」 梅崎春生
本体価格:300円 [JANコード]4582628021545
「とにかく私たちは皆、一日中腹を減らしてばかりいた」。アムール河の支流のまた支流の、そのまた支流にある収容所に抑留されている「私」は虚弱者として氷上清掃班に廻された。それは冬の間凍結した河面から材木を掘り出して除去する仕事だった。私たち五人のグループを率いるイワノフというカンジマール(親方)は、服の上にいつも赤い帯を巻いていた。その「赤帯」は寡黙だがなぜか親しみが持てた……シベリア抑留兵とソ連兵の間の淡い友情を描く名篇。(28頁・★3.5個)

「歌集 無害老人計画」 上坂あゆ美
330円 (税込) [JAN]4582628020555
認知症を患い、周囲に対して攻撃的になる祖父を目の当たりにし将来を案ずる〈わたし〉。「祖父のあの電話以来、自分が認知症になったら、わたしはいつの時代の自分を輝かしいものとして拠り所にするのだろうか、ということをよく考える。」こうして齢三十歳にしてわたしの「無害老人計画」はスタートした──第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』で大きな注目を集めた著者によるエッセイと、第一歌集発表後初の連作短歌!(28頁・★3.5個)
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「木馬は廻る」 江戸川乱歩
330円 (税込) [JAN]4582628020586
「ガラガラ、ゴットン、ガラガラ、ゴットン、廻転木馬は廻るのだ。」昔は花形音楽師、やがて徒歩楽隊に落ちぶれたラッパ吹きが、木馬館に常雇いとなった。家に帰れば古女房と三人の子供たちとの生活に追われるラッパ吹きだったが、職場に通うのは心が弾んだ。なぜならば、そこにはお冬という十八歳の女車掌がいたから。決して器量よしとはいえないが、妙に気持ちをそそる彼女に気もそぞろ……乱歩にとっては異色だがなぜか心に残る小品。(24頁・★3個)
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「人間椅子」 江戸川乱歩
330円 (税込) [JAN]4582628020593
外務書記官の妻にして美しい閨秀作家として名を馳せる佳子は、ファンレターに混じった原稿用紙の束に思わず読み耽ってしまう「奥様、」で始まるその文章はある椅子職人の手になるもので、前代未聞、驚愕の告白がなされていた。自分の作った椅子に人一人分が入る空洞を発見した男は、異常な行動と知りつつ、椅子に潜んで顧客のもとへ運ばれていく。そして読み進めるうちに、佳子は思わず座っている椅子を……乱歩初期のスリラー小説の傑作。(36頁・★4.5個)

「父の自転車と母の赤い車」 太田靖久
330円 (税込) [JAN]4582628020661
〈私〉の父は運転免許がない。かわりにどこに行くにも自転車。その父の愛車に乗せてもらって出かけるのが、私は大好きだった。一方、母は真っ赤な自動車を乗り回して生命保険の営業に……「ポケットアンソロジー」のスタートにあたっての編集部の依頼に応え、「〈乗り物〉をテーマに編んだアンソロジーに、もし自分の短篇を加えるとすれば……」という想定のもと、「季刊 アンソロジスト」創刊号に書き下ろした、味のある短篇小説。(12頁・★1.5個)

「息子の長靴」 太田靖久
330円 (税込) [JAN]4582628021705
息子が生まれた日にアメリカに単身赴任した「私」は、世界中に蔓延した未知なる感染症も影響し、なかなか後任が決まらずに二年後にようやく帰国することができた。赴任地で学習した子育てのハウツウも無為のまま更新され、初めて対面するナマの息子。妻の助言を受けつつ、父親は初めて長靴を履いた息子と二人きりで近くの神社まで散歩に行くことに。読後、玄関に置かれた小さな長靴の緑色が鮮やかにまぶたに残る好短篇。(12頁・★1.5個)

「流れるプール」 太田靖久
夏休みの最後に「僕」の家族は母の故郷の新潟に引越すことになっているが、夏休みに入ってから母は時折帰ってこなくなったし、家では昼間でも寝ていることが多かった。そんなある日、父と妹と父の友人とで車に乗って動物園とプールに行った。なぜその人が一緒か分からなかったが、彼はとても親切だった。そして引越しの日、後からくるという父に見送られて、僕と妹と母は新幹線に乗った……僕は知っていた。父がもう来ないことを。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022160

「嘘の顛末」 太田靖久
友達同士で入ったコンビニで空のポケットをまさぐり、お年玉を落としたと嘘をついたのは小学校五年の時。その嘘に付き合ってお金を探してくれた弓香は、なんと自動販売機の下から五百円玉を見つけたのだ。中学に進み髪を染めパーマをかけるようになった弓香とは疎遠になってしまったが、本当にあの五百円玉は落ちていたのだろうかという疑問は拭えなかった……時の流れの容赦なさに、イノセンスの苦味と尊さを感じさせる名短篇。(12頁・★1.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022177

「赤い蝋燭と人魚」 小川未明
330円 (税込) [JAN]4582628020227
北方の冷たく暗い海に棲む人魚の妊婦は、人間の世界に憧憬を抱き、海岸の小さな町の老夫婦ふたりで蝋燭を商っている店の前に女児を産み落とした。老夫婦は、神様から授かった子どもと心得、人魚の娘と知りつつその子を育てることにした。長じた人魚は、せめてもの恩返しと蝋燭に絵を描くと、その蝋燭は海難から船人を守ってくれると、飛ぶように売れたが……人間の欲望とエゴが生む悲しい運命を幻影の世界に描く傑作童話。
(20頁・★2.5個)

「黒い人と赤いそり」 小川未明
330円 (税込) [JAN]4582628020654
冬になると海の上までが一面に氷で張りつめられてしまうような、はるか北の方の国。人々は黒い獣の毛皮を着て働いていた。すると足元の厚い氷が突然二つに割れ、三人だけを乗せた氷片はたちまちのうちに沖に流されてしまった。みんなが手をこまねいている中、五人の有志が五つの赤いそりに乗って探索に。けれどもその五人もいつまで経っても戻らない。無作為のまま彼らを見捨てたこの国には、やがて不思議な現象が……寓意に満ちたブラックなお話。
(16頁・★2個)
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「鮨」 岡本かの子
330円 (税込) [JAN]4582628020678
東京の下町と山の手の境目にある「福ずし」の娘、ともよは常連の人気者。その中の一人、皆からは先生と呼ばれる五十がらみの紳士、湊とふと外で会ったともよは、鮨を食べることが「慰みになる」というそのわけを聞く。幼時、拒食気味だった湊を見るに見かねた母親が、ある日、酢飯を握った上に玉子焼や烏賊の切身をのせて並べた。すると不思議にそれらは湊の喉をするりと通って……読後、無性に鮨が食べたくなる不朽の名篇。
(36頁・★4.5個)
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「老妓抄」 岡本かの子
330円 (税込) [JAN]4582628020685
憂鬱な顔をしながらも、いったん経験談を語り出したら聴く者を飽きさせない老妓は、財もでき遠縁の娘みち子を養女にして素朴な素人の生活に近づきたいと思い始めていた。ふと出入りの電気屋の青年柚木に目をかけ、生活の保証をして、好きな発明の研究に没頭させようとする。最初は有頂天だった柚木も、やがて老妓の衰えを知らぬ華麗な生命力に圧倒され、次第に飼い馴らされていく自分の生活に倦怠をおぼえていく。発表当時から世評高かった名作。(40頁・★5個)

「みちのく」 岡本かの子
本体価格:300円 [JANコード]4582628021569
東北の城下町Sに講演に訪れた作家は、町の写真館に飾られた、大ようで豊かで何か異様な面立ちをした少年の写真に惹きつけられる。それは〈四郎馬鹿〉と呼ばれた、東北地方では有名な知恵遅れの少年の肖像だった。土地の人たちにその少年の生い立ち、殊に北国寄りのF町の呉服屋の娘、お蘭と四郎馬鹿との温かい交情と数奇な運命の話を聞いた作家は、まだ存命と思しいお蘭を探そうとする……みちのくの人情が身に染みる短篇。(20頁・★2.5個)

「空っぽの花器」岡本真帆
330円 (税込) [JAN]4582628022047
繋いでいた手を放して、私は一人になった。町のラーメン屋。もらった小説。一緒に観に行った映画。傘がなくて笑いながら走った土砂降りの道。思い出は日常の至るところに潜んでいて、その欠片に触れるたび、本当にこれでよかったんだろうかと不安が押し寄せる。だけど選んだことを間違いじゃなかったと思いたい。思えるように生きていきたい。この30首連作は、私のこれまでとこれからを見つめて編んだものです。(24頁・★3個)

「雪の夜」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020036
大晦日の夜、別府。番傘を立てて通りの客を待つ易者が、料亭から女たちを侍らせて出てきた、羽振りのよさそうな男とばったり出くわします。それは因縁の男。易者は大阪で印刷業を営む堅実な男でしたが、カフェで会った女に溺れて身を持ち崩してしまいます。熱海から東京、東京から別府へ。病を患った女とともに落ちぶれて流れてきた男の運命は? はかない者たちの愚かな、しかし切実な人生を鮮やかに切り取る名篇です。初出は「文藝」(改造社、一九四一年)。(28頁・★3.5個)
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「競馬」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020036
京都帝大出の中学の歴史教師、寺田は小心で律儀者。酒場遊びなど縁がなかったが、同僚に誘われて入ったカフェの一代という女給に入れ込み、ついに所帯を持つ。ところが一代に乳癌が見つかったことから一転。痛みにのたうち回りながら死んでいった一代の面影、とりわけ彼女が纏った男の影に嫉妬の情を抱きながら、ひょんなことから競馬にのめり込んでいく。迫真のレースに比肩する語り口で結末まで一気に読ませる織田作文学の白眉。(28頁・★3.5個)
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「夫婦善哉(上)」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020616
難波の一銭天麩羅屋の娘、蝶子は十七の歳に自ら望んで芸者になった。お転婆で声自慢、陽気な座敷には欠かせぬ蝶子だったが、やがて惟康柳吉という妻子持ちと良い仲になり、とうとう駆落ちをした。遊び人で甲斐性なし、苦労ばかりかける柳吉だったが、美味いものには目がなく、難波の町の本当に美味い店に蝶子を連れ回した。どんな酷いことをされても、無邪気に舌鼓を打つ柳吉が捨てられないのだった……著者の出世作にして代表作。(36頁・★4.5個)
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「夫婦善哉(下)」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020623
難波の一銭天麩羅屋の娘、蝶子は十七の歳に自ら望んで芸者になった。お転婆で声自慢、陽気な座敷には欠かせぬ蝶子だったが、やがて惟康柳吉という妻子持ちと良い仲になり、とうとう駆落ちをした。遊び人で甲斐性なし、苦労ばかりかける柳吉だったが、美味いものには目がなく、難波の町の本当に美味い店に蝶子を連れ回した。どんな酷いことをされても、無邪気に舌鼓を打つ柳吉が捨てられないのだった……著者の出世作にして代表作。(32頁・★4個)
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「雨(上)」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020630
珠の肌と色香を持ったお君は、また働き者でもあったが、「私(あて)か、私はどうでもよろしおま」との口癖通りに流されるまま、不運な人生を歩み続けた。最初の夫である教師の軽部は一人息子の豹一を遺してぽくりと亡くなり、次に嫁いだ安二郎は高利貸で、夫婦間でも金を貸すほどの吝嗇家だった。境遇に向けた敵愾心と過剰な自意識を持つ豹一もまた儘ならぬ人生を歩むことに……著者自らが処女作と認め、のち『青春の逆説』へと発展する短篇。(24頁・★3個)
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「雨(下)」 織田作之助
330円 (税込) [JAN]4582628020630
珠の肌と色香を持ったお君は、また働き者でもあったが、「私(あて)か、私はどうでもよろしおま」との口癖通りに流されるまま、不運な人生を歩み続けた。最初の夫である教師の軽部は一人息子の豹一を遺してぽくりと亡くなり、次に嫁いだ安二郎は高利貸で、夫婦間でも金を貸すほどの吝嗇家だった。境遇に向けた敵愾心と過剰な自意識を持つ豹一もまた儘ならぬ人生を歩むことに……著者自らが処女作と認め、のち『青春の逆説』へと発展する短篇。(36頁・★4.5個)
か行

「雪後」 梶井基次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020043
大学に残るべきか、それとも就職するべきか。迷っている行一に自らの研究所に席を設け、迎え入れてくれたのは恩師でした。同時に親や親族の反対を押し切って始まった東京郊外での新婚生活。妻の信子の天性の明るさは、つましく単調な生活を飾ります。やがて身籠った信子のために、東京の中心に家を探し始める行一。時代と世相に横たわる漠とした不安と、薄氷を踏むようなささやかな幸せ。梶井文学に珍しい、希望を感じさせる客観小説。(20頁・★2.5個)
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「桜の樹の下には」 梶井基次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020692
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!/これは信じていいことなんだよ。」肺結核の湯治に訪れた湯河原で満開の桜を見た梶井。迫り来る〝死〟に直面しながら、生と死の対置を最高の〝美〟に止揚するレトリックの妙は、自死の予感を秘めてあやしく輝く。短い紙幅に梶井基次郎の文学のすべてが! 桜を見るたびにきっと思い出さざるを得ないほどの名篇。(8頁・★1個)
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「檸檬」 梶井基次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020739
「えたいの知れない不吉な塊」を抱えて京都の町を徘徊し、「みすぼらしくて美しいもの」に強くひきつけられる。あるいは花火。あるいはびいどろのおはじきを口に入れたときの幽かな涼しい味。肺尖カタルに冒された熱っぽい身体を持て余しながら、寺町の果物店で見つけた檸檬。その檸檬を〝爆弾〟として丸善に置いて出てくる結末まで、鋭敏な神経と美意識がもたらす不安と昂揚を見事に作品に昇華させた永遠の名篇。(16頁・★2個)

「愛撫」 梶井基次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020739
猫の耳を「切符切り」でパチンとやってみたら、という空想から始まり、「猫の爪をみんな切ってしまったらいったい猫はどうなるだろう?」と問いかけるかと思えば、一転、夢に出てきた女性が猫の手を切り離して化粧道具に作り替え、その肉球で頬を撫でているというやや残酷でブラックな話に……ユーモラスな語り口で、愛猫家なら一度は抱いたことがあるだろう感覚を時代を超えて伝える散文の妙味。不思議に心に残る一篇。(12頁・★1.5個)

「ある心の風景」 梶井基次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020739
深夜の静けさのなか、眠れずに窓から夜の町をじっと見ている喬は、暗い考えに苦しめられていた。女から病を得ており、そのことが彼を悪い想念へと導いた。あの不幸な夜、博多から来たという女。屈託した気持を抱えたまま上った火の見。そして夜更けまで深夜の町を歩き回った。新京極のあたり、腰に下げた朝鮮の小さな鈴の音にわずかに希望を見出すが……複雑な心象風景を描いて創作の転機となった重要な作品。(20頁・★2.5個)
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サンブックス浜田山・選「浜田山の話 他」 片山廣子
330円 (税込) [JAN]4582628021316
歌人、翻訳家として名高い片山廣子が晩年を過ごした地、浜田山。終戦間際から十三年という短い歳月であったが、この地において歌人として活動(第二歌集『野に住みて』発刊)するとともに、エッセイストとして(『燈火節』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、また翻訳家として多くの作品を残した。そこには貧苦に苦しめられながらも気高く充実した日々があった。この選集には多くの文業の中から特に浜田山について記したものを選び収録した。(44頁・★5.5個)

「ばらの花五つ」 片山廣子
本体価格:300円 [JANコード]4582628021552
馬込の丘の散歩道で見つけた新ばら園。疑獄事件で退官した地方の役人が、世間から隠れて始めたらしかった。それから戦争を経て、みんながどん底に堕ち、大ていの人は生活のために何かしら仕事をしなければ生きてゆかれなくなった。そんなとき思い出されるのはあのばら園のご主人。「ばらの花をきり、つぼみを一つきり二つきり、小さい利益と小さい損失を積みかさね、積みかさね、自分の新しい仕事を育ててゆかねばと、この頃しみじみ思うようになった」……疲れた心に沁みるエッセイ。(8頁・★1個)

「枇杷の少女」 加能作次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020050
私と同年で幼なじみの絹子の家には大きな枇杷の木があり、幼い二人はよく遊んでいました。美しく成長する絹子に恋心を抱く私。絹子が私にそっとくれた黄色に熟したたくさんの枇杷の実に、私は絹子の思いを知るでした。しかし、私は故郷を離れなくてはいけなかった。各所を放浪する私は枇杷の実を見る度に絹子を思い出すのでした。その後、絹子は結婚して出産し、夫と死別したことを知ります。三十年前のこと、今も絹子の家には枇杷の木があるのでしょうか。(24頁・★3個)

「碧梧桐百句(片上長閑・撰)」 河東碧梧桐
河東碧梧桐とは誰か。百年の間、この問に充分な答えが出たとは言い難い。俳人碧梧桐、「俳句」の破壊者碧梧桐、 敗北者碧梧桐、革新者碧梧桐。どれも碧梧桐である。彼の人生と俳句は、捉えどころのないものとして、半ば腫れ物に触るかのような扱いを受けてきた。そこに一貫したものは何であったか。遺された句から、我々の目の前に、 動き続ける影のように生き生きとした碧梧桐の姿が蘇る。(40頁・★5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022156
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「海の中にて」 菊池寛
330円 (税込) [JAN]4582628020739
北越のある町で小学校の教師をしていた敬吉はその町の芸者おくみと恋に落ちたが、ある晩おくみを宿直室に入れたかどで職を解かれてしまう。田舎の狭い世間では許すべからざる罪である。逃げるように上京する敬吉を見送りに来たおくみは、衝動的に電車に乗り込み、敬吉もそんなおくみを帰すわけにはいかなかった。東京での生活苦は予想をはるかに上回り、金銭的にも精神的にも追い詰められた二人は……心中のリアルな描写と極限状況での愛とエゴの葛藤を残酷なまでに読むものに突きつける驚愕の短篇。(24頁・★3個)
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「身投げ救助業」 菊池寛
330円 (税込) [JAN]4582628020746
「清水の舞台から飛び降りる」しかないほど自殺スポットが少ない京都でも、人は何らかの手立てで自殺をした。さらに琵琶湖からの疏水を整えてからは、そこが格好の場所となり、京都の自殺者はさらに増えた。中でも最もよき死に場所となっている木造の橋のわずか下流に一軒の小屋を構えた老婆がいた。自殺者にの悲鳴が聞こえるとすわと物干し竿をかついで飛び出し、水面にそれを差し出す、いわば身投げ救助業を営んでいた老婆だったが、皮肉にも自らが身を投げざるを得ない運命に……。(16頁・★2個)
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「入れ札」 菊池寛
330円 (税込) [JAN]4582628020753
上州岩鼻の代官を斬り殺し、関所を破って信州に逃げた国定忠治は、彼に付き従って生きのびた十一人の乾児(こぶん)を前に逡巡していた。果たしてこの先も彼ら全員を引き回していいものか。心のうちお目当ての三人はあったが、等しく忠誠を誓った他の者をうち捨てるわけにもいかない。そんな折、乾児のなかから「入れ札」という妙案が。皆が忠治の気持を忖度して投票する中、たった一人、最古参の九郎助の内心によこしまな考えが芽生え……集団と個人の間に働く人情の機微を巧みに描いた名篇。(24頁・★3個)

「コブタンネ」 金史良
330円 (税込) [JAN]4582628020760
北朝鮮生まれで東京帝国大学卒、日本語ですぐれた小説を書き芥川賞候補にももなった著者が、自らの子ども時代を題材に描いた一景。「私」の家の貸し部屋に住み、小さい時に遊んだ少し年上の女の子、コブタンネに抱いた甘酸っぱい思いと思春期にまで至らぬ少年のこそばゆいような気持ち。突然、引越して行ったコブタンネと、十四、五年経って思わぬ再会を果たす。時の経過と人懐かしさを一筆描きのような見事な筆致で描く佳品。(12頁・★1.5個)

「入梅」 久坂葉子
330円 (税込) [JAN]4582628020067
島尾敏雄の紹介で同人誌「VIKING」に参加し、久坂葉子のペンネームを用いて初めて発表した短篇。一児を抱えた戦争未亡人が若いころ習いおぼえた「絵ざらさ」で生計を立てていこうとしますが、目下の心配事はその家に下男として仕えてきた老人と、親子ほど年の離れた使用人の若い娘との情事でした……夫を早くに亡くした女の寂しさ、若い女の奔放さと移り気に振り回される年老いた男の愚かさなど、十八歳とは思えぬ人生への洞察を秘めた一篇。(24頁・★3個)
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「画の悲み」 国木田独歩
330円 (税込) [JAN]4582628020777
「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 荒川洋治・選《初めての世界》紹介作品
ポケットアンソロジースターターキット 荒川洋治・選『初めての世界』収録作品
全校一腕白で勉強もできる自分が、大好きな画を描くことに関しては、しのぎを削る競争者がいた。それが志村という少年だった。彼は温厚で人気もあり、一方、傲慢で教師からも生徒からも疎まれている自分にとってはまさに「目の上のたんこぶ」だった。その志村と、ふとしたことから大の仲良しになる。お互いを強く結びつけたのは、「画」だった。そして幾年かが経ち……大人の胸まで熱くさせる子どもの世界を巧みに描く独歩の真骨頂!(16頁・★2個)

「初恋」 国木田独歩
330円 (税込) [JAN]4582628020074
「僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。」という口上から始まる掌篇。餓鬼大将だった「僕」が村で評判の頑固な漢学者をへこませてやろうと歯向かい、逆に気に入られて下男と十二歳になる孫娘と三人で暮らす家に入り浸るようになる、というシンプルな物語ながら、最後まで一気に読ませる語り口のみごとさ、また読後にそこはかとない人恋しさを残す点において、無上の一篇です。(8頁・★1個)

「父の死」 久米正雄
330円 (税込) [JAN]4582628020234
長野県は上田。とある女学校が火事で燃えた。六角塔の階上に掲げてあった御真影もすっかり焼けてしまった。その責任を深く感じた同校の校長を務める父親は、書斎に籠ったまま思い詰め、とうとう腹に刃を立て、頚動脈を切って自ら果てた。その武士の志を継いだ潔さを褒め称える町中の人々、違和を憶えながら不思議な幸福にひたる私。そして……少年の頃の著者の切実な体験に根ざした名篇。(32頁・★4個)

「卵焼きかわいそう」 小島なお
330円 (税込) [JAN]4582628021996
《短歌アンソロジーあこがれ》
私にとってあこがれの対象は案外みじかなところにある。年末の電車内で聞こえた会話の「明太子、送っておいたから」という台詞や、壊れた掃除機を解体して部品ひとつから組み立てた義弟や、風呂場の電球カバーが突然勢よく外れたことを心霊現象として語る友人。遠いところにあるものは、遠すぎて感想が浮かばない。それよりも何でもない感じでそのへんに転がっているものの方が、じつは何でもなくて、かなわないな、と思う。(著者より)(20頁・★2.5個)

「疑問符で終る話」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020784
「とにかく被害者にだけはならないことだ。(中略)そのためにはあのテレビ屋を、絶対に玄関で食い止めるべきだ」。時代は高度成長期。各家庭が白黒テレビからカラーテレビへと切り替えつつある頃。鉄筋コンクリート五階建ての団地の二階に住む男が、テレビの修理屋を相手に演ずるひとり相撲の様子を独特のユーモアを交えた語り口で伝える。特にテンポのいい夫婦のやりとりが、上質な漫才を聴いているようで楽しい。(48頁・★6個)
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「道」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020791
著者がこよなく愛した軽井沢町追分の別荘で過ごす夏。仕事に集中するため、作家は家族に先がけてひとり別荘にやってきた。するとなぜか、家にいたる道には切り倒された大きな欅の木が横たわっている。ほとんど毎日訪ねてくる近所に住む花豆老人に、欅の木が切り倒されたわけを聞こうとするが……「歯茎を食べるような口の動かし方」をする地元の老人とのちぐはぐなやりとりを、軽井沢の風景のなかに軽妙な筆致で描く。(32頁・★4個)
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「夢かたり」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020807
夏目漱石の「夢十夜」について語るエッセイ風の叙述から、「漱石は『夢十夜』を四十一歳で書いた。わたしはいま四十二歳である。それがまことに残念でならない」という記述を経て、気がつくと読者は著者が少年時代を過ごした北朝鮮の永興という町の情景へと誘われる。遊び友だち、学校の様子、駄菓子屋のおばあさん、朝鮮そば屋のつゆが煮える匂い……後藤明生独特の「思考テレポーテーション」が存分に味わえる名篇。(28頁・★3.5個)
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「宝船」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020814
枕の下に敷いて寝ると良い初夢が見られるという〝宝船〟の話から、五年前に移り住んだマンションのゴミの分別について、貰ってきた飼い猫は執筆の合間合間に作家の関心を引きつける。そうして迎えた大晦日。宝船の封筒を開けた作家はワインを飲みながらテレビで映画を見続ける。そして明け方の五時近く、ふとんに入ってみたが……脱線に次ぐ脱線、どこに連れていかれるのやら、語りの快楽に酔いながら、読者は思わぬ着地点へ!(36頁・★4.5個)
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「しんとく問答(上)」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020821
近畿大学文学部に教授として招聘され大阪に移住した著者が、地図を片手に大阪の街を探索する。目的地は八尾市高安の山畑(やまたけ)村。そこには謡曲の『弱法師』や説教節『しんとく丸』に描かれた伝承上の人物、俊徳丸が没したとされる鏡塚がある。地図とガイドブックを頼りに迷いながら鏡塚に向かう様や、そこでの出来事が、あみだくじのごとく語られる。大阪という未知の土地への尽きせぬ興味、探索する楽しみに満ちた一篇。(40頁・★5個)
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「しんとく問答(下)」 後藤明生
330円 (税込) [JAN]4582628020838
近畿大学文学部に教授として招聘され大阪に移住した著者が、地図を片手に大阪の街を探索する。目的地は八尾市高安の山畑(やまたけ)村。そこには謡曲の『弱法師』や説教節『しんとく丸』に描かれた伝承上の人物、俊徳丸が没したとされる鏡塚がある。地図とガイドブックを頼りに迷いながら鏡塚に向かう様や、そこでの出来事が、あみだくじのごとく語られる。大阪という未知の土地への尽きせぬ興味、探索する楽しみに満ちた一篇。(20頁・★2.5個)
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「落穂拾い」 小山清
330円 (税込) [JAN]4582628020845
自らを作家と認ずるがいまだ単行本一冊も出すに至らぬ、どこか寂しげな中年作家が、自炊しながらひとり住んでいる街、武蔵野市の片隅で出会う人びと。終戦後出稼ぎに行った夕張炭鉱でともに働いたF君の思い出。特に駅の近くで健気にひとりで古本屋を営む娘との淡くも温かな交流が心に残る。戦後七年が経ち、自らを励ましながら自分の道を歩み始める作家の、願望をも含めたさりげない筆致がえも言われぬ味わいを醸す短篇小説。(24頁・★3個)
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「老人と鳩」 小山清
330円 (税込) [JAN]4582628020852
ある日突然倒れ、失語症に陥った老人は、野原のはずれにある部屋に引っ越した。ひとりだった。誰も音沙汰がなかった。近所の子供が飼っている鳩を見て可愛いと思った老人は、小刀で木彫の鳩を作った。部屋には黒猫がやってきて住みついた。やがて徒歩十分ほどのところに「ハト」という名のコーヒー屋ができた。そこの十七、八くらいの娘と老人の淡いまじわり……訥々と繰り出すことばが不思議に澄明な世界を生み出す私小説の佳品。(16頁・★2個)
さ行

「風博士」 坂口安吾
330円 (税込) [JAN]4582628020258
〈諸君は偉大なる風博士を御存知だろうか? ない。嗚呼〉——自殺を偽装した風博士殺人の容疑をかけられた主人公が、警察の取り調べに答える形を借り、風博士の遺書を引用しながら、蛸博士との確執を、大上段に構えたユーモラスな語り口で綴るナンセンス・コント。アテネ・フランセの仲間たちと出した同人誌「青い馬」に掲載。牧野信一から絶賛され、ファルス(笑劇)の精神を唱えて文壇へ登場するきっかけとなった作品。(16頁・★2個)
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「私は海を抱きしめていたい」 坂口安吾
330円 (税込) [JAN]4582628020869
“神様の国へ行こうとしながら、いつも地獄の門を潜ってしまう”ような「私」だが、ある女と出会い、はじめて安心を得た。その女は貞操の観念をまったく持たず、しかも不感症だった。また女に劣らず貞操の観念に乏しい私は、もはや恋も出来ず、ただ淫蕩がゆえに透明で清潔な女の肉体をのみ愛した。あるとき女と温泉に行った私は、荒れ模様の海岸を散歩していて一瞬の幻覚にとらわれた。「女の無感動な、ただ柔軟な肉体よりも、もっと無慈悲な、もっと無感動なもっと柔軟な肉体」……それが海だった。(20頁・★2.5個)
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「いずこへ」 坂口安吾
330円 (税込) [JAN]4582628020876
工場街にひとり住む「私」のアパートに、女が通ってくるようになった。生活にかかわるものを置かない主義だった私の部屋に、女は鍋釜をはじめいろんな物を持ち込んだ。何も持たないことで、すべてを所有したかった私が一人の女を所有したの間違いだった。私の魂は廃頽し荒廃した。良人と別れて出てきた女は、私とどこか遠くの町で暮らしたがり、実際そうした。新居に押しかけて居座ってしまった女アキ、二人の女の間で自らの生き方に倦む私。デカダンスそのものを描き、堕ちきった先の世界を希求した作品。(44頁・★5.5個)

「桜の森の満開の下」 坂口安吾
本体価格:300円 [JANコード]4582628021521
大昔、桜の森の下は、そこに行けば気が変になるくらい怖しいところだった。鈴鹿峠に住む残酷きわまりない山賊でさえ、桜の森の下の道を通るときは肝が冷えた。ある日、道ゆく夫婦を襲った山賊は、夫を殺して妻を奪った。八人目になるその女房は、怖いほど美しく、そして信じられぬほど残虐だった。山賊をたぶらかして都に出た女房は、山賊に頼んで狩ってきた首で遊ぶ。そんな都の暮らしが堪えられない山賊は、女房を引き連れて桜の森の下へと……幻想と美と残酷が同居する異世界。(44頁・★5.5個)

「幸福への道」 素木しづ
330円 (税込) [JAN]4582628020081
まばゆい光に溢れた秋の一日。足が不自由で松葉杖をついた「彼女」は、恋人とともに電車に乗って「静かな、空の広い野」をめざします。しかし野の幸福を求める心はまた、夜のかなしみを抱いてもいました。彼女の弱い肉体に征服された心は、すべてが寂寥に、すべてが悲哀に終りはしないか、という不安に慄きがちでした。果たして「無上の光に輝いてる花の広い野」はあるか? 恋がはらむ喜びと不安を象徴性に満ちた文章で鮮やかに描いた名篇。(20頁・★2.5個)

「西班牙犬の家」 佐藤春夫
330円 (税込) [JAN]4582628020241
愛犬フラテと散歩に出た〈私〉は、ずんずんと進むフラテの後に従って、未知なる雑木林の奥深くに足を踏み入れる。「この地方にこんな広い雑木林があろうとは」次第に好奇心に駆られた〈私〉は、やがて林の奥にぽつんと建った一軒の西洋風の家の前に出た。その家には主人はおらず、ただ一匹の真っ黒な西班牙犬がのっそりと横たわっていた……見慣れた田園の風景の中に、日常からふと遊離した幻想的な世界を描き出す傑作短篇小説。(20頁・★2.5個)
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「若芽」 島田清次郎
330円 (税込) [JAN]4582628020883
ある文士が逝った。彼の第一作は、文学雑誌に掲載されるや称賛を浴び、文壇の話題となった。しかし、東京へ住まう文士の音沙汰が絶えると、父親は彼の元を尋ねる。華々しい称賛の影で彼は蹉跌をきたし、病に臥すほどとなってしまっていた。病臥しながらも彼は原稿を書き続け、自らの死を迎えることが先か、原稿の完成が先かの瀬戸際を彷徨う。彷徨の末に完成した原稿を父親に託すも、老いは確実に父親にも刻まれていた——。(20頁・★2.5個)
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「銅鑼」 菅忠雄
330円 (税込) [JAN]4582628020890
大正期、東京の上流家庭。二十歳の長男を頭に八人の子供たちを抱えるこの家の生活は、銅鑼に始まり銅鑼に終わっていた。そこに訪れたのは主人が父親がわりに育てた甥、演劇にかぶれ家を出て俳優となった謙吉だった。今度の舞台のために銅鑼を借りたい、との謙吉の申し出を首肯した主人。一家で観劇して我が家の銅鑼の出世を喜んだが、果たして生活のリズムを失った家庭の行く末はいかに……物と心の豊かなつながりを描いた佳品。(12頁・★1.5個)

「星の女」 鈴木三重吉
330円 (税込) [JAN]4582628020098
天上から美しい下界を眺めつつ、いつかあそこへ下りてみたいと憧れていた〈星の女〉の三姉妹は、蜘蛛の王様に頼み込み、ある日、蜘蛛の糸をつたって地上へと下り立ちました。ところがいちばん下の美しい妹は、着物をなくしたことから天上に帰れなくなってしまいました。その着物をとってしまった若い猟人と〈星の女〉は結婚したのですが……英語圏で紹介されたインドの説話に材をとりながら、詩的できらびやかなj独自の幻想の中に運命の悲哀を描いた童話の名作。(32頁・★4個)
た行

「ノーカナのこと」高見順
330円 (税込) [JAN]4582628020104
「裏切られても、私はノーカナを信じ、愛していた。私は印度人に絶望したくないのであった。私は人間を信じたいのであった」。従軍作家として日本軍占領後のラングーンで文化工作に従事する「私」は、日本人宿舎の使用人世話係として現地人と折衝にあたります。ごまかしや不正、同僚日本人への不信の中で傷つく私は、忠実に働くボーイ、ノーカナに信頼を寄せるようになります。しかしノーカナは私に隠れて物資の横流しをしていた……。(28頁・★3.5個)
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「不正確な生」 高見順
330円 (税込) [JAN]4582628020906
普通ならばゆうに定年を迎えている歳の作家の「わたし」が「若く見える」のは自他ともに認めるところ。外見だけでなく気も若く、屋台のおでん屋で出会った若い男女の真似をしてツイストを踊り、不覚にも脳貧血で意識を失ってしまう。一方、妻が看ている母は脳溢血で二度倒れるもいたって元気。その母から「実は」と生年が違っていることを告げられた「わたし」。自らの人生の曖昧さ、あやふやさを描いた文豪没前二年前の作品。(28頁・★3.5個)

「東京八景」 太宰治
東京で暮らしはじめて十年。自殺未遂、ヒロポン中毒、それから妻の不貞……激動の歳月を経ていま、作家にはようやくその年月を振り返る余裕が生まれた。ペンとインク、原稿用紙を抱えて訪れた伊豆の南の温泉宿で、作家は東京市の大地図を広げる。それはいつか書いてみたいと思っていた小説にとりかかるためだった。その小説とは、「東京八景」。戸塚、本郷、神田、八丁堀、芝、荻窪、武蔵野……地誌に生活史をからめて描いた名篇。(44頁・★5.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021767

「美男子と煙草」 太宰治
〝古いもの〟とたたかってきたつもりの文士だが、その〝古いもの〟たちからのいわれなき誹謗に口惜しさのあまり嗚咽する日々だった。そんな折、ある雑誌社から取材の依頼が。上野の地下道に浮浪者を見に行こうというのだ。捨て鉢の気分で向かった現地で出会った四人の少年はみな煙草を吸っていた。文士は彼らに焼鳥をおごるのだが……自己憐憫と道化の入り交じった自意識を、最下層の存在に重ね合わせてシニカルに描く。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628021798

「フォスフォレッスセンス」 太宰治
この世の現実は夢の連続であり、眠りの中の夢はそのまま現実でもあると考えている「私」は、夢の中にだけ存在する妻をもっている。ある日、締切りに間に合わない原稿を口述でとろうという編集者と、一升瓶を抱えて愛人宅を訪れるが、留守中に上った愛人の部屋で見た写真と花に、夢の中の妻のことばの意味を知るのだった。その花の名は、フォスフォレッセンス……これ自体が口述筆記で書かれたという虚実皮膜に満ちた一篇。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628021781

「貨幣」 太宰治
「私は、七七八五一号の百円紙幣です。あなたの財布の中の百円紙幣をちょっと調べてみて下さいまし。あるいは私はその中に、はいっているかも知れません」
大工さんの手から質屋へ、そして顕微鏡を質草に入れた医学生に連れられて旅に出た百円紙幣は、六年ぶりに東京に戻った……貨幣が女性名詞であることから、百円紙幣の女がたりをもちいて、敗戦色濃くなった日本の庶民の実態、軍人のえげつなさなどを活写した異色短篇。(16頁・★2個)
330円 (税込) [JAN]4582628021774

「葉」 太宰治
「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。(b中略)これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った」有名な書き出しで短編集『晩年』の冒頭に置かれた初期の作品。祖母への愛着と隠された性の蠢きを描いた「哀蚊」という十九歳で書いた短篇の話、非合法運動に身を投じた経験の一端を垣間見せるフィクションなど、短篇小説の断片、エッセイ、創作メモ、アフォリズムなどを繋ぎ合わせた太宰文学のエッセンス!(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021736

「逆行」 太宰治
「老人ではなかった。二十五歳を越しただけであった。けれどもやはり老人であった」自殺と心中の未遂を重ね、思想犯として投獄もされた激動の青春を経た自画像を描いた「蝶蝶」。落第が決まっているのに試験を受けに行く「甲斐ない行為」を描きつつ、母校・東京大学の校内を活写した「盗賊」。高等学校時代の放蕩を描いた「決闘」。田舎町を訪れたサーカス団のなか、檻に入れられたエトランゼに性の目覚めを覚えた少年を描く「くろんぼ」の四つの掌編を収める。(28頁・★3.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021743

「ダス・ゲマイネ(上)」 太宰治
大学で仏文を学ぶ「私」は授業を抜け出して通う小さな甘酒屋で馬場という奇妙奇天烈な風体の男と知り合う。音楽大学に八年もいるという馬場は三鷹の地主の倅で、会うたびに異なった装いで現れ、その潤沢な財布で私を随所の遊びに連れ回した。至る所で虚実皮膜の大風呂敷を広げる馬場は、私を誘って「盗賊」という雑誌をつくろうと企てるが……登場人物に作者の「自己」をさまざま投影させ、終いには作中に「太宰治」まで登場させる遊び心あふれる異色作。(20頁・★2.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628021750

「ダス・ゲマイネ(下)」太宰治
大学で仏文を学ぶ「私」は授業を抜け出して通う小さな甘酒屋で馬場という奇妙奇天烈な風体の男と知り合う。音楽大学に八年もいるという馬場は三鷹の地主の倅で、会うたびに異なった装いで現れ、その潤沢な財布で私を随所の遊びに連れ回した。至る所で虚実皮膜の大風呂敷を広げる馬場は、私を誘って「盗賊」という雑誌をつくろうと企てるが……登場人物に作者の「自己」をさまざま投影させ、終いには作中に「太宰治」まで登場させる遊び心あふれる異色作。(32頁・★4個)
330円 (税込) [JAN]4582628022054
田畑書店公式通販サイト 「ダス・ゲマイネ(下)」太宰治

「雪の夜の話」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020111
「少しお変人の小説家」を兄にもつ女学生・しゅん子は、身籠った嫂と三人暮らし。東京に雪がたくさん降ったある日、学校帰りに寄った中野の叔母さんからスルメを二枚もらったものの、雪の中に落としてしまいます。そのスルメは二人分お腹が減るようになった嫂に持って帰ろうと思ったもの。その時しゅん子は、いつか兄に聞いた「人間の眼玉は、風景をたくわえる事が出来る」という話を思い出します……イノセンスと諧謔が交錯する太宰文学の真骨頂。(12頁・★1.5個)
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「駈込み訴え」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020913
裏切り者の代名詞ともなっている「イスカリオテのユダ」のひとり語りで、全編を一気に読ませる。「あの人」イエス・キリストに向ける愛憎、付き従う弟子たちに対する軽蔑……聖と俗、清と濁、無私とエゴなどアンビバレンツな感情と価値観を痒いところに手が届くようなレトリックで現わし、最後の着地に至るまで見事な「太宰節」が横溢する。妻・美知子に口述筆記で書き取らせたといわれる、太宰の才能が遺憾なく発揮された名作。(28頁・★3.5個)
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「女生徒(上)」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021378
「あさ、眼をさますときの気持は、面白い。」から「眠りに落ちるときの気持って、へんなものだ」まで。少女のさりげない一日をモノローグの文体で描く。父を病いで失い、姉は嫁いでいまは母親とふたり暮らし。学校のこと、友だちのこと社会のこと……大人になる一歩手前の女の子の無垢な内面を独特な語り口でなぞり、自意識とナルシシズム、理想と現実の間に揺れ動く心を絶妙に描いた太宰のフェミニンな資質が全篇にみなぎる傑作。(36頁・★4.5個)
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「女生徒(下)」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021385
「あさ、眼をさますときの気持は、面白い。」から「眠りに落ちるときの気持って、へんなものだ」まで。少女のさりげない一日をモノローグの文体で描く。父を病いで失い、姉は嫁いでいまは母親とふたり暮らし。学校のこと、友だちのこと社会のこと……大人になる一歩手前の女の子の無垢な内面を独特な語り口でなぞり、自意識とナルシシズム、理想と現実の間に揺れ動く心を絶妙に描いた太宰のフェミニンな資質が全篇にみなぎる傑作。(36頁・★4.5個)
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「葉桜と魔笛」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020937
三十五年前、父と私と妹は三人で生きていた。妹は腎臓結核に罹り百日ももたないと言われていたにもかかわらず、健気に生きる姿を見て、私は気も狂いそうであった。妹の箪笥を整理していたある日、私はM・Tという男性からの手紙を見つけた。ふたりの恋愛は醜くすすんでいて、私は手紙を焼き捨てた。M・Tとして紡いだ手紙を読んだ妹は、自らの過去に初めて後悔する……。病気と恋愛に翻弄される姉妹が信じられるものとは。(16頁・★2個)

「HUMAN LOST」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020920
太宰二十五、六歳のころ、大学卒業危うく、都新聞の入社試験にも落ちて精神的に不安定な時期、盲腸の手術後の腹膜炎の痛みを抑えるため用いたパルビナールが癖になって、中毒に陥る。その治療のために様々な病院に入退院を繰り返した経験を反映して、板橋区の脳病院に入院した体験記を日記形式で綴った小説。精神が混乱を来し、支離滅裂になる直前の微妙なバランスを、一見書きなぐったように思わせながら、周到な構成も見られる。(44頁・★5.5個)
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「メリイクリスマス」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020951
一年三ヶ月のあいだ津軽で暮らしたのち東京に戻ってきた「私」が、十二月はじめ、東京郊外の街である少女に遭遇する。「シズエ子ちゃん。」彼女は私にとって「唯一のひと」の一人娘だった。記憶の中の幼い娘は二十歳になっており、その好意を恋心と受け取る私は十分に自惚ていた。娘を促して親子の住む家に向かう私だったが、娘は次第に元気を失い……戦後間もない東京でのある邂逅を哀切とユーモアを交えて描いた好短篇。(20頁・★2.5個)
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「姥捨」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020975
あやまった人を愛撫した妻と、妻をそこまで追いやった夫。二人は死ぬことでその結末をつけようと新宿の町をさまよう。睡眠薬を買い、映画を観て鮨を食べ、漫才を見ながら「この女を死なせてはならない」と思う夫だったが、もう勢いは止まらない。翌朝、かつて二人でひと夏を過ごした水上に向けて上野から旅立った。やさしい宿の老夫婦に別れを告げた二人は心中をはかるが……罪と無垢、コキュの苦しみと諧謔が渾然とした一篇。(36頁・★4.5個)
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「猿面冠者」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628020968
「彼には、いけない癖があって、筆をとるまえに、もうその小説に謂わばおしまいの磨きまでかけてしまうのである。」……小説家たらんとする作中の作者が、小説を書こうとするときに陥ってしまいがちな落とし穴を惜しげもなく開示し、自伝的要素と道化と諧謔という太宰文学の主要なテーマをも偏在させつつ、小説家・太宰治の創作の秘密をうかがわせる、貴重なメタフィクション・ノベル。(32頁・★4個)

「おさん」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021699
戦争が激しくなり、神田の雑誌社に勤めていた夫と離れ、「私」は子ども二人を連れて青森の里に疎開した。やがて無条件降伏となり、夫恋しさに東京に舞い戻った私は、やつれて卑屈でおどおどした夫を見いだした。それは失業や借金の疲れだけが原因ではなく、まるでたましいの抜けた人のように外泊を繰り返すのだった。そして真夏のある朝、だしぬけに温泉に行きたいと言い出した夫は……ニヒリズムの欺瞞を女性の視点から描く傑作。(28頁・★3.5個)

「燈籠」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021613
貧しい下駄屋の一人娘は、齢二十四になるも未だ縁遠かった。それは貧しさゆえもあるが、地主の妾を娶った「日陰者」の家に生まれたからでもあった。その娘が、商業学校に通う五つ年下の学生に一目惚れしてしまう。みなし児で養家でも肩身が狭いという境遇に同情した娘は、友達と海水浴に行くといいながら沈んだ様子の水野のために海水着を盗んで村八分の目にあってしまう。ところが当の水野は……。(16頁・★2個)

「皮膚と心」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021620
自らの容姿を卑下しがちな「私」だったが、肌のきれいさには自信があった。ところが糠で擦りすぎたせいか、左の乳房の下から始まって瞬く間に吹出物が全身を覆ってしまう。心配する夫は心優しいが、劣等感が強く歯がゆいほど気が弱い。一見しがない図案化だが、実は有名な化粧品の図案を手がけていたりもする。日に日に醜くなっていく肌におののき、ついに夫の勧めで皮膚科の病院に行くが……肌と連動する女性の心理の綾を見事に描いた名篇。(36頁・★4.5個)

「きりぎりす」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021637
十九の春に周囲の反対を押し切って一緒になった夫は、傲岸で世間の評判も悪く、売れない絵ばかりを描いている画家だが、その絵に身体が震えるほど感動した「私」は、貧乏になればなるほど張り合いのある生活を送っていた。ところがある時から絵が評価されるようになり、日に日に偉くなっていくと、夫は身なりから言動まで変わってしまう。結婚五年で別れを決意するまでの妻の心境を、芸術と俗世間の関係に呼応させて描く。(28頁・★3.5個)

「千代女」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021644
十二歳のとき叔父さんのすすめで綴り方を「青い鳥」に投稿した「私」は、思いがけず一等に当選。続いてまた投稿したら、それは誌面を大きく飾り、高名な選者から長い感想文まで貰うまでに至った。ところがその時から私の人生は変わってしまった。教室で異常に誉めたたえる先生。急によそよそしくなった友達。小学校を卒業して楽になったが、それから……文章を書いて評価されることの脆さと危うさを少女の身に託して描く。(28頁・★3.5個)

「恥」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021651
「ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。草原をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない」……小説に描かれた人物と作者本人を完全に同一視して、手紙を送っただけでなく、家にまで訪ねていった二十三歳の女性。その経緯を友だちに告白する語り口を借りて、作家と読者の関係、また登場人物とモデルの関係をあぶり出して、その裏に作家としての自らを韜晦する、たくらみに満ちた短篇。(20頁・★2.5個)

「十二月八日」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021668
太平洋戦争が始まった日——この日のことを百年後の紀元二千七百年後にまで正確に残そうと決意して作家の妻が一人称で語る。ラジオから開戦のニュースを耳にして「人間が変わってしまった」私。米国人に向けられた異常な敵愾心と昂揚感に包まれた妻をよそに、作家である夫はへんにトンチンカンな愛国心を披瀝する。そのズレをユーモラスに描き、言論統制下にあって開戦の日の庶民の日常の活写に作家の最大限の企みを込めた戦争文学。(20頁・★2.5個)

「待つ」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021675
「雀線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。誰とも、わからぬ人を迎えに」……本来は人がきらいで誰にも会わずに家で母親と二人きりで黙って縫物をしていたい質だった「私」だが、大戦争(太平洋戦争)が始まってから、何だか不安になり、今までの生活にすっかり自信を失ってしまった。かといってどこに行くあてもなく、毎日駅に座っている私は、誰を、何を待っているのか? 短い紙幅に戦時下の日本人の実相を込め、掲載拒否にあった掌編。(8頁・★1個)
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「ヴィヨンの妻(上)」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021682
四国の華族の勘当息子でもある詩人の大谷は、小金井のボロ家に妻と四つになる息子と住んでいるが、妻子を顧みず放蕩を繰り返している。年の瀬も迫ったある深夜、泥酔して戻った大谷を追いかけ中野の飲み屋の夫婦が店の金を盗まれたと乗り込んできた。刃物を持ち出して巧みに逃げる夫をよそに、何とかすると場をとりもった妻は、翌日、策もなく中野の飲み屋に行き働くようになるが……デカダンスの極みを描いた傑作。(28頁・★3.5個)
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「ヴィヨンの妻(下)」 太宰治
330円 (税込) [JAN]4582628021880
四国の華族の勘当息子でもある詩人の大谷は、小金井のボロ家に妻と四つになる息子と住んでいるが、妻子を顧みず放蕩を繰り返している。年の瀬も迫ったある深夜、泥酔して戻った大谷を追いかけ中野の飲み屋の夫婦が店の金を盗まれたと乗り込んできた。刃物を持ち出して巧みに逃げる夫をよそに、何とかすると場をとりもった妻は、翌日、策もなく中野の飲み屋に行き働くようになるが……デカダンスの極みを描いた傑作。(28頁・★3.5個)

「刺青」 谷崎潤一郎
330円 (税込) [JAN]4582628020265
それはまだ人々が「愚か」という貴い徳を持っていた時代……光輝ある美女の肌に己れの魂を掘り込むことを宿願とした彫師・清吉は、深川の料亭前で駕籠の簾からこぼれる白い足を見て激しい憧れを抱く。一年と経たないうちに偶々その足の持ち主である娘に出会った清吉は、彼女を麻酔で眠らせて、その清浄な肌を自分の恋で彩るべく、巨大な女郎蜘蛛の絵を掘っていった──後年の谷崎作品に共通するモチーフが見事にあらわれた処女作。(16頁・★2個)
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「少女病」 田山花袋
330円 (税込) [JAN]4582628020982
杉田古城、三十七歳。かつては少女小説を書きその名を揚げたが、今はしがない編集者である。彼の趣味は少女観察。通勤電車で出会う少女たちの肉体を観察し、髪の匂いを感じ、家庭での姿さえ妄想することが彼の愉楽である。彼女らを抱けば、自らの濁った血が新しくなるとも思う。ある帰りの電車で、杉田はもう一度逢いたいと思っていた令嬢に邂逅する。彼女の美しい姿に見とれる刹那、彼は摑まっていた真鍮の棒を離してしまう——。(32頁・★4個)

「団栗」 寺田寅彦
330円 (税込) [JAN]4582628020128
年若くして結婚した妻、夏子が肺結核で喀血し、亡くなって三年後に「ホトトギス」に初めて「寅彦」の署名で発表された文章。「私はこれは随筆というより小説だと思っている」と安岡章太郎氏は記していますが(岩波書店『寺田寅彦全集』第一巻解説)、「もう何年前になるか思い出せぬが日は覚えている」という書き出しで始まるこの文章は、自らの痛切な体験を語って詩情と運命への深い思いが同居する、無類に美しいものとなっています。(12頁・★1.5個)

「比較言語学における統計的研究法の可能性について」 寺田寅彦
本体価格:300円 [JANコード]4582628021606
子供時代の言語に対する関心から書き起こし、言語間の音韻の類似例をあげながら、その伝播の現象を統計学的に考察する。言語間の距離を語彙対応の確率で計算する方法を、科学者としての寺田の本領である分子の拡散現象の数式にまで落とし込んで提示。二十世紀半ばまでは揶揄の対象となっていた「寺田物理学」が、今日のごときAI時代にあっては最も先端的な発想をもっていたことを証明するエッセイ。(40頁・★5個)
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「名作文学焼芋登場大全」 おいもとほん talkingbook・選
330円 (税込) [JAN]4582628021309
日本が近代化することで新たに生まれたテーマを、名作文学の多くは重層的に内包しています。「都市」「恋愛」「階層」「貧困」……、特に「幸福」はどのテーマとも通底するものです。「幸福」を希求する多くの庶民の傍らに、名作文学はあるものを置きました。それが焼芋です。温かさと味と、向けられた面差しと、名作文学に登場する焼芋からはどれも、ささやかながらかけがえのない「幸福」を感じることができます。(44頁・★5.5個)

「町の踊り場」 徳田秋声
330円 (税込) [JAN]4582628020135
1933年3月「経済往来」掲載。前年8月に金沢にいる姉が死去し、その葬儀のために帰省した体験を描いたものです。本作が川端康成や室生犀星に高く評価されたことで、秋聲晩年の復活へと繋がりました。姉の家を抜けだして鮎の魚田を求めたり、裏町のダンスホールに立ち寄ったりする奔放な語り手の行動から、満洲事変後の戦争に向かってゆく時代の世相や、古い文化と新しい文化が交錯する金沢の街が鮮やかに浮かび上がる秋聲珠玉の短篇。(24頁・★3個)
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「蝦蟇」 豊島与志雄
330円 (税込) [JAN]4582628020999
五月頃から家の縁先に一匹の蝦蟇が出た。悠然と佇む大きな力に満ちている蝦蟇を、私と妻は時間を忘れて見つめていた。ある晩、蝦蟇を盥の中に入れて上から石を乗せて置いたが、翌朝蝦蟇は盥の中にいなかった。それきり蝦蟇は私の家の縁先に姿を見せなくなった——。それでも私はそれで良いと思う。ふと、死というものを考えるが、すべてがよく調和していると思う。生きた痕跡がなくなることが死と言えるのか。生死の観念を問い続ける掌編。(8頁・★1個)
な行

「狐」 永井荷風
330円 (税込) [JAN]4582628021026
冬の書斎の午過ぎ、ツルゲーネフを読みながら、筆者は幼い頃の出来事に思いを馳せた。生家は父が小石川の古い空き屋敷を三軒買い占めて建てた家で、鬱蒼とした広い庭には不気味な一画があった。ある朝、父がそこで狐を見た。使用人や出入りの者総出で狐狩り。一方、女たちは狐の祟りに脅えた。その折には見つからなかった狐が、翌年二月に現れた。しかも筆者が可愛がっていた鶏が犠牲に……米仏留学から帰朝した筆者が初めて書いた短篇。(24頁・★3個)

「鶏」 中島敦
330円 (税込) [JAN]4582628020142
パラオ南島庁の官吏として滞在したコロール島での体験から生まれた「南島譚」のなかの一作。濃い親交を結んだ土方久功(南洋の文化に造詣の深い彫刻家・民俗学者)の日記からモチーフを得ていますが、そこに描かれた原住民の人物造形はかなりデフォルメされており、当の土方には「読まれると恥ずかしいから」との理由で献本しなかったといわれています。それだけに、中島敦が異民族、ひいては人間というものの不可解さをどうフィクションに仕上げているかが伺えて興味が尽きません。(24頁・★3個)
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「名人伝」 中島敦
330円 (税込) [JAN]4582628021408
趙の邯鄲に住む紀昌という男の話。弓の名人を志した紀昌は名手・飛衛に弟子入りした。飛衛はまず瞬きをせざることを学べといい、二年かけてそれを会得した
紀昌が報告に行くと、次は視ることを学べと命ずる。やがて一匹の虱が馬のように見えるようになった紀昌に、飛衛は射術の奥義秘伝をあますところなく伝えた。もはや師から学ぶべき何ものもなくなった紀昌は、果たして名人になれたか? 思わぬ結末、見事なプロットに唸る名篇。(20頁・★2.5個)

「山月記」 中島敦
330円 (税込) [JAN]4582628021408
博学才穎、若くして世間に名を轟かせた李徴だが、官吏として仕えるを潔しとせず、ひたすら詩作に耽って世を厭うあまり、その肥大した自尊心ゆえ虎に身を変じてしまう。ある日、勅命を奉じて未明の山道をたどった官吏・ 袁修は、山中で人喰い虎に遭遇するが、その虎が隠れた叢のなかから、ふと聞き覚えのある声が。その声の持ち主こそ、わが友、李徴のものだった……時代を超えて読 みつがれる、中島敦の代表作。(16頁・★2個)

「宮崎智之セレクト 中原中也名詩選」 中原中也
330円 (税込) [JAN]4582628021019
中原中也が生前唯一、刊行した自身の詩集『山羊の歌』と没後刊行した『在りし日の歌』、さらに未刊詩篇を含めた詩の中から八篇を選んで収録した。極度に均衡のとれた詩句、節と節との間に生じている緊張感を堪能してほしい。中原中也は、深い悲しみ、葛藤、混沌、優しさの中で詩作した。自己統一を失った詩人が、ふたたび世界をあるがままに取り戻そうとして歌った詩がここにある。(48頁・★6個)

「自転車日記」 夏目漱石
330円 (税込) [JAN]4582628020159
ロンドンに留学中だった漱石が、下宿のお婆さんに勧められ、三十五歳にして初めて自転車に挑戦。指南役に従い自転車屋で中古の自転車を入手、さっそく特訓が始まります。……異国にあって神経衰弱を患い、人嫌いになっていくという暗いイメージが先行する漱石の留学体験ですが、その先入観を払拭するような自虐とユーモアに溢れた文章です。多彩な比喩に富み、講談の名手をも思わせる語り口は、後年の「吾輩は猫である」の誕生を予見させます。(20頁・★2.5個)

「おじいさんのランプ」新美南吉
330円 (税込) [JAN]4582628021934
かくれんぼをしていた東一君が倉の隅から持ってきたランプは、おじいさんの思い出の品だった。そのランプを見ておじいさんが話し出したのは、ちょうど日露戦争のじぶん、十三歳の巳之助(それがおじいさんの名前だった)という少年のことだった。みなしごだった巳之助は、隣村で見たランプに憧れて商いを始め、徐々に成功していくが、成人して一家を構えた巳之助は、ランプにとって替わる電灯に出会って……言わずと知れた児童文学の名作。(32頁・★4個)
は行
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「猫町」 萩原朔太郎
330円 (税込) [JAN]4582628021064
北越地方のKという温泉に滞留していた「私」。避暑客も離れすっかり寂しくなった秋のある日、近くのU町まで徒歩で出かけた私は、途中の山道で迷ってしまった。慌てた私はとにかく人里へと山道を下り、麓の町に辿り着いたのだが、そこは果たして……「猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ」詩人のイマジネーションが創出した緊密で繊細な世界を、彫琢した文体で描いた寓話的でもあり哲学的でもある異色短篇。(24頁・★3個)

「笑えば翼ごと動く」 初谷むい
330円 (税込) [JAN]4582628022009
《短歌アンソロジーあこがれ》
あなたはある日、天使になった。なんてことないけれど、「ぼく」にとって大切だった「あなた」とのゆるくしあわせな日々は、「あなた」の天使化によってあっけなく終わる。「あなた」が遠くに行ってしまう予感のなかで残される「ぼく」はなにを思うのか。だれかを愛すること、そして失うことについて短歌という短い詩の中で考え二〇首連作です。「ゆるい約束を重ねてゆるい約束をほどいて天使は溶けるみたいに笑う」。(著者より)(12頁・★1.5個)

「幸福の彼方」 林芙美子
330円 (税込) [JAN]4582628020166
戦争で片眼を失って戻ってきた信一と見合い結婚をした絹子。ふたりはともに御前崎に生まれ、名古屋に暮らしていました。千種駅の近くに家を借りて新世帯をもったふたりは、しばし御前崎に戻って信一の実家を訪ねます。御前崎の白い波を見ながら信一はある告白をします。実は自分にはひとり、子どもがいる、と……庶民の飾らない暮らしを写し、その中にある人情や男女の心理の機微を巧みな筆致で描き出して、爽やかな読後感を与える一篇。(28頁・★3.5個)
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「美しい犬」 林芙美子
330円 (税込) [JAN]4582628021033
野尻湖畔の別荘地。飼い犬としてモオリスさんに可愛がられたペットだったが、戦争最中にモオリスさんがアメリカに帰ってしまってからは運命が変わった。モオリスさんが恋しいペットは別荘のポーチで暮らしていたが、食べ物もなく湖畔の野良犬となって痩せさらばえてしまった。やがて冬が来て、野尻湖のあたりは深い雪に閉ざされて、行き場のないペットは思い出がいっぱい詰まったモオリスさんの部屋で息絶えたのだが……感動の一篇。(12頁・★1.5個)

「晩菊」 林芙美子
本体価格:300円 [JANコード]4582628021514
昔の男から久しぶりに訪問の電話を受けたきんは、そそくさと身支度にかかる。五十六という年齢も何のその。女の歳なんか長年の修業でどうにでもなると考えているきんは、五つの歳に秋田から東京に出て金満家の養女となったが、出入りの業者に犯されたのを機に家を出て十九で芸者となった。以来、男と重ねた恋は数知れず、いまはその思い出をよすがに独居している。その優雅な暮らしぶりを見て、金の無心をする男に、きんは興ざめを覚えるのだった……。(36頁・★4個)
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「淫売婦」 葉山嘉樹
330円 (税込) [JAN]4582628021057
大正期の横浜・南京街。欧州航路から下船した船乗の「私」に歩み寄る蛞蝓のような男たち。二分銭で「若え者がするだけの楽しみ」を買わないか、と連れていかれた、悪臭と闇に包まれたその奇妙な室の中には、汚穢にまみれた全裸の若い女が横たわっていた。「こいつらの手から彼女を救い出さねば」と義憤に駆られた私だったが、そこには思いもよらぬ真実が……驚愕のストーリーテリングで読者を誘うプロレタリア文学の歴史的名編!(36頁・★4.5個)

「秋日記」 原民喜
330円 (税込) [JAN]4582628020173
1947年4月「四季」掲載。左翼運動を断念ししばらく退廃的な生活を送っていた民喜でしたが、佐々木基一の姉の永井貞恵と結婚後に充実した創作活動に入ります。本作は1944年にその愛妻を喪った体験を描いた連作の一つで、入院した妻のもとに通う日々が綴られています。語り手の目に映る世界は、作中の表現を借りれば「結晶体」のように繊細でどこまでも澄みきっており、戦争の時代を背景に様々な別れの気配が詩的に凝結されています。(24頁・★3個)

「美しき死の岸に」 原民喜
330円 (税込) [JAN]4582628021040
長い間病床生活を続ける妻は、澄みきった世界で呼吸をしているようだ。夫である彼が勤めのために一歩外へ出ると、そこは混濁した虚妄の世界のように思える。澄みきった世界で療養を続ける妻には、死の影が迫り来るとは思えなかった。それでも病態が悪化し大学病院へ入院する妻に、冷え冷えしたものが近づいてくる。苦しむ妻に「死」が訪れたとしても、苦しみの彼方の美しい死、最も美しいものの訪れを、彼は願うばかりであった。(24頁・★3個)

「夢と胸筋」東直子
330円 (税込) [JAN]4582628022016
《短歌アンソロジーあこがれ》
ドキュメンタリーの映像を観るのがとても好きです。劇的なものも、極く日常的なものも、どんなものでも興味深いです。こんなところで、こんな人が、こんなことを思って、こんなことをしている。そんな面白さを、短歌連作で群像劇のように構成できたらと思いながら編みました。どこかの、誰かの、ある一瞬。長い時間の果てであり、遠い未来への起点でもあり。生きている偶然と奇跡を思い、浮遊する言葉をただ一つの身体で模索しました。(著者より)(20頁・★2.5個)

「黒百合」平岡直子
330円 (税込) [JAN]4582628022023
《短歌アンソロジーあこがれ》
「あこがれ」というテーマを知らされたときにすこし息を呑むような気持ちになったのは、わたしにとって短歌をつくること自体がその感情と不可分だからだ。そのせいか、今回の制作はかえってわたしのなかにひとりの人間の具体的なフォルムを浮き上がらせた。憧れとは、他人の歌に対する「どうしてこんな歌が存在するんだろう」という驚愕であり、ときに他人に対する「どうしてこんな人間が存在するんだろう」という驚愕なのだと思う。(著者より)(12頁・★1.5個)

「辛夷の花」 堀辰雄
330円 (税込) [JAN]4582628020180
「春の奈良へいって、馬酔木の花ざかりを見ようとおもって、途中、木曽路をまわってきたら、おもいがけず吹雪にあいました。……」。東京を発ち、甲斐の山々を目に木曽福島に一泊。翌日、乗った中央西線の汽車の車窓に映る雪に覆われた木曾の風景。雪のまにまに咲く辛夷の花が、「僕」には見えない……。電車で木曾谷を通ったことのある者であれば、まるで目の前に風景が立ち現れるような、堀辰雄のみごとな描写です。初出は「婦人公論」(一九四三年)。(12頁・★1.5個)
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「子規百句(片上長閑・撰)」 正岡子規
330円 (税込) [JAN]4582628021088
子規の名はよく知られているが、その俳句の全容や、幅の広さが語り尽くされたとは言い難い。彼以降の俳人たちの語るところや文学史により、我々は子規、あるいは子規の句から却って遠ざかっていると言えるのではないか。写生による表現を提唱したと言われがちな、そして現実に写生を作句に活かそうとした子規の句は、実際には非常に豊かな様相を見せてくれる。本書では子規の注目すべき百句を撰し、季順、時系列順に配置した。(40頁・★5個)

「東洋城百句(片上長閑・撰)」 松根東洋城
俳人・松根東洋城。彼は人生修業としての俳諧を掲げ、芭蕉を尊び、俳誌『澁柿』 を主宰、子規とも虚子とも異なる有季定型の道を歩んだ。その句には、絢爛たる部分と深い闇、栄光と汚辱、快楽と痛苦、ありとあらゆるコントラストが烈しく横溢している。道場とさえ呼ばれる厳格な句会を開くほどにまで、彼を俳句に執せしめたものは一体何であったか。生前は一冊の句集をも残さなかった東洋城の俳句から、百句を撰した。(36頁・★4.5個)
330円 (税込) [JAN]4582628022153
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「ラ氏の笛」松永延造
330円 (税込) [JAN]4582628021071
横浜の病院で臨時雇いとして働く主人公は、ラオチャンドというインド人の青年と出会う。だが、彼はやがて肺結核を患い入院してしまう。彼の世話をしながら、異国人の言葉と人生にひどく惹かれてく主人公。竹笛を巧みに吹くラ氏は、虚無とも平安ともつかぬ独特な人生観を主人公に語る。「どんな場合でも幸福は不幸を持ってあがなってきた」――異国人との心の交流と人種を超えて通底する人間の内奥を清明な言葉とイメージで描く。(24頁・★3個)
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「鬼涙村」牧野信一
330円 (税込) [JAN]4582628020968
鬼涙村にやってきた「私」は酒倉の二階で御面師と同居していたが、折しも村の音頭小唄大会を控えお面の製作で大忙しだった。この村には標的に決めた者をお面を被った集団が担ぎ上げ、胴上げをしながら村堺の川に投げ込むという奇習(リンチ)があった。どうやら今度は自分が狙われているらしいと気付いた私は、お面を配りに行った先の酒席でさまざまな噂を聞くが……残酷な村の様相と村人の滑稽さを活写する異色作。(36頁・★4.5個)
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「悔」 水野仙子
330円 (税込) [JAN]4582628021125
郡立病院で看護婦長を務めるもとめは、夫に若くして先立たれるも、ひとりで子どもふたりを育て上げた。雨が降り続いたある夜、子どもの成長を顧みると同時に、心に抱えていた「悔」を思い返す。彼女が若い時分、ひとりの若い医者の甘い毒気に盲いた。自らの過ちを悔いるよりも、子どもの行く先を考えたとされることに、さらに自責の念は募る。彼女の「悔」は、自身の仮面に報いるのだろうか。過去に揺れる、ある女性の内省の文学。(12頁・★1.5個)

「牛肉とエリンギの炒め物」 水野葵以
330円 (税込) [JAN]4582628021712
大好きだったおばあちゃんの死、葬式、そしてそれから……。喪失感と慌ただしい日々を、柔らかな感性と言葉で包むように詠んだ連作短歌。「眠っているだけにも見えたそうじゃないことはみんなの顔でわかった」「感情の到着を待つ泣きたくも泣きたくなくもない炉の前で」生前のおばあちゃんとの思い出を綴った著者初のエッセイ「牛肉とエリンギの炒め物」併録。(28頁・★3.5個)
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「いちょうの実」 宮沢賢治
330円 (税込) [JAN]4582628021392
冷たくてカチカチに灼きをかけた鋼のような空に星が輝く夜、東の空はもう優しい桔梗の花びらのようにあやしい底光りをはじめている。いっせいに目をさましたいちょうの実たちの話し声がそこかしこから聞こえてくる。彼らにとって今日は旅立ちの日。お母さんの銀杏の木から初めて離れて、散り散りになる日。新しい世界への期待と不安に満ちた彼らのうえに突然光の束が黄金の矢のように降り注ぐ。美しいイメージに彩られた旅立ちのうた。(12頁・★1.5個)
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「やまなし」 宮沢賢治
330円 (税込) [JAN]4582628021101
『クラムボンはわらったよ。』『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』──二疋の蟹のきょうだいとその父親の独特のリズムの会話、地の文のやわらかく象徴性に富む詩的な叙述で、幻想的な光景のなかに、光と闇、生と死、恐怖と歓喜など対照的なイメージを配置。詩歌の音調と童話の親しみやすさの底に深い思索を込めつつ、最後は「やまなし」の酒の芳香までただよってきそうなエンディング。宮沢賢治の豊饒な世界を代表する一篇。(12頁・★1.5個)

「イギリス海岸」 宮沢賢治
本体価格:300円 [JANコード]4582628021606
賢治が愛してやまなかった〈イギリス海岸〉。そこは北上川の西岸だが、岸辺をなす泥岩層がイギリス・ドーバー海峡の白亜層を思わせることから賢治が名付けたものだった。農学校の教師をしていた賢治は時には生徒を連れ、また時にはひとりでそこを散策した。本エッセイでは野外授業でイギリス海岸を訪れた日々を情感豊かに描く。地層を教え、化石を発見して歓喜する賢治は、まさにリベラルアーツを体現した存在だった。(28頁・★3.5個)
田畑書店公式通販サイト 「イギリス海岸」宮沢賢治

「生涯の垣根」 室生犀星
本体価格:300円 [JANコード]4582628021538
人生の最晩年を迎えた作家が、最後に行き着くところは庭だった。それも整えられた土と垣根。終の栖を建てたときから庭に関しては信頼して任せていた民さんに、作家は執着するところが大きかった。それは単に気が合う以上の関係だった。ところが民さんの怠け癖のひどさが原因で袂を別ってしまう。何年か経ち風の噂で民さんは田舎に流れてバタ屋をやっていると聞く。また民さんと庭の話がしたい……作家は再び民さんを雇う決心をする。作家と庭師の心温まる交情を描く名篇。(28頁・★3.5個)

「洋灯はくらいか明るいか」室生犀星
330円 (税込) [JAN]4582628021958
風呂敷の中に書きためた詩と原稿用紙のみを携えて初め東京を訪れた詩人が、東京の玄関・新橋駅で迎えてくれた美術学校に通う三人の同郷の友人に案内されて大都会を歩いた一日を回想するエッセイ。初めて乗る電車。大きな建物と雑踏。一九一二年の東京の風景は詩人を膣目させ、緊張を強いる。〽洋灯はくらいか明るいか…ヴァイオリンの弾き語りでそう歌いながら小冊子を売り歩く芸術家くずれの歌声が全篇にかなしく響く。(12頁・★1.5個)

「身上話」 森鴎外
330円 (税込) [JAN]4582628020197
千葉の大原海岸にある料理屋を兼ねた宿屋に逗留する学徒圭一は、どことなく色香の漂う宿の女中、花にしばしば手紙の代筆を頼まれていました。その花から手紙の宛先の旦那、辻村との因縁を聞き出しますが……会話体のなかに時代の様相や男女の機微を鮮やかに描きとめた名篇。大江健三郎との対談集『文学の淵を渡る』(新潮社)のなかで、古井由吉は「いわゆる日本の短篇のはじまり。日本の短篇の語り口がすでにここにある」と評しました。(20頁・★2.5個)
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「普請中」 森鴎外
330円 (税込) [JAN]4582628021132
木挽町は歌舞伎座近くにある精養軒ホテルはただいま普請中。このホテルで渡辺参事官はあるドイツ人の女性と待ち合わせている。昔なじみの褐色の大きな目には、かつてはなかった濃い紫の暈がある。ウラジオストックのホテルの舞台で歌っていた彼女は、伴奏者のコジンスキイとともにアメリカに渡る途中日本に立ち寄った。普請中の日本では芸術を理解する余裕などない。渡辺参事官は諦めにも似た気持で女に対する思いも断ち切った。(16頁・★2個)
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「かのように (上)」 森鴎外
330円 (税込) [JAN]4582628021149
子爵の家に生まれた秀麿は学習院から文科大学に進み歴史科を卒業した。国史を自らの畢生の仕事と決めた秀麿は、卒業後ただちに洋行。三年後に帰国した秀麿は、誰にも打ち明けられない深い悩みを抱えていた。神話と歴史を切り離して考えない限り本当の国史は書けないが、それは「危険思想」とみされてしまう。それを避けるために「かのように」という立場を思いつくが……現代にも影を落とす日本の根本的問題を抉り出した問題作。(24頁・★3個)
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「かのように(下)」 森鴎外
330円 (税込) [JAN]4582628021156
子爵の家に生まれた秀麿は学習院から文科大学に進み歴史科を卒業した。国史を自らの畢生の仕事と決めた秀麿は、卒業後ただちに洋行。三年後に帰国した秀麿は、誰にも打ち明けられない深い悩みを抱えていた。神話と歴史を切り離して考えない限り本当の国史は書けないが、それは「危険思想」とみされてしまう。それを避けるために「かのように」という立場を思いつくが……現代にも影を落とす日本の根本的問題を抉り出した問題作。(32頁・★4個)

「杯」森鴎外
330円 (税込) [JAN]4582628022047
温泉宿から坂の小道を上がったところにある清冽な泉を、ゆかたを着た七人の美しい娘たちが小鳥の囀りのような声を上げながら訪れる。そしてそれぞれの袖からお揃いの銀の杯を取り出し、泉の水を飲んでいる。その後ろから彼女たちよりやや歳上の、洋服を着た西洋人か混血の女の子がきた。彼女も杯を取り出して泉の水を飲もうとするが……日本と西洋の間に横たわる溝と架け橋を象徴し、洋行から戻った作家の静かな決意を感じさせる一篇。(12頁・★1.5個)
や行

「宝石」山崎聡子
330円 (税込) [JAN]4582628022030
《短歌アンソロジーあこがれ》
子供のころ、絵本の『幸福の王子』の挿絵の、すべてを分け与えてしまって灰色になった王子の像が怖かった。眼窩は黒っぽく落ちくぼんで、その足元には息も絶え絶えのツバメがうっとりと目を閉じた姿で横たわっている。「王子とツバメは永遠に幸せになりました」と結ばれていたけれど、私はそれを疑うより前に、その永遠を自分が生涯あじわうことがないことの理不尽にほとんど焦燥していたのだ。(著者より)(12頁・★1.5個)

「神楽坂」 矢田津世子
330円 (税込) [JAN]4582628021231
神楽坂で金貸し業を営む馬淵の爺さんは、夕飯を済ますと袋町の小間物屋に通う。そこの娘、お初を囲っているのだ。一方、病床で爺さんの帰りを待つお内儀さんはいよいよいけないらしい。娘のお初を馬淵家の後釜に据えたいおっ母さん。養子縁組みをはかりたい強欲な親戚たち。そして孤児院から引き取った女中の種は働き者でお内儀さんのお気に入り。そしていよいよお内儀が亡くなって……神楽坂を舞台に庶民の生活を繊細な筆で描く傑作。(48頁・★6個)
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「プールのある家」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021163
この街にあるルンペンの父子がいた。父は妙にインテリでいつも息子相手に蘊蓄を垂れ、そして子はまた絶妙な相槌を打つのだった。ただ彼らの間に母の話題は決して出なかった。二人がもっぱら夢見心地で語り合うのは、彼らが建てるべき家の話だった。ある日、残飯のしめ鯖にあたったのか、子が死んだ。放心して街を歩く父親の頭に、死ぬ間際に呟いた子の声がこだまする。「プールを作ろうよ」。思わずむせぶ周五郎短篇の真骨頂。(40頁・★5個)
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「わたくしです物語(上)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021170
美濃国多治見の国家老、知次茂平の目下の心配事は、後見人を自ら任じた親友の一粒種、考之助だった。気弱で取り柄はないがとにかく美男。それが災して見かけ倒しとの定評が藩内に立ってしまった。それを挽回すべく使番を任じ、所帯を持てば人も変わるはずと固辞するところどうにか婚約までは取り付けた次第。そんな考之助がある日を境に、何故か藩内で起きた粗相の咎をすべて自分で引受けるようになった……思わぬ展開に心が温まる傑作人情話。(32頁・★4個)
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「わたくしです物語(下)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021187
美濃国多治見の国家老、知次茂平の目下の心配事は、後見人を自ら任じた親友の一粒種、考之助だった。気弱で取り柄はないがとにかく美男。それが災して見かけ倒しとの定評が藩内に立ってしまった。それを挽回すべく使番を任じ、所帯を持てば人も変わるはずと固辞するところどうにか婚約までは取り付けた次第。そんな考之助がある日を境に、何故か藩内で起きた粗相の咎をすべて自分で引受けるようになった……思わぬ展開に心が温まる傑作人情話。(36頁・★4.5個)
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「落ち梅記(上)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021194
幼友達の金之助と半三郎は双俊と呼ばれ、藩主の世子・亀之助の学友として江戸邸で起居を共にするほどだった。長じて異学を教えた咎で身をもち崩し酒と賭博に耽る半之助と、父が倒れた日から思わぬ風雪に巻き込まれる金之助。その二人の間にあって運命に翻弄される金之助の幼馴染・由利江。藩を大きく揺るがす政争の中で輝きを放つ愛と友情……大河小説に匹敵する読後感と期せずして涙を唆られるリリシズム。山本周五郎の魅力を十全に伝える名篇。(40頁・★5個)
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「落ち梅記(下)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021200
幼友達の金之助と半三郎は双俊と呼ばれ、藩主の世子・亀之助の学友として江戸邸で起居を共にするほどだった。長じて異学を教えた咎で身をもち崩し酒と賭博に耽る半之助と、父が倒れた日から思わぬ風雪に巻き込まれる金之助。その二人の間にあって運命に翻弄される金之助の幼馴染・由利江。藩を大きく揺るがす政争の中で輝きを放つ愛と友情……大河小説に匹敵する読後感と期せずして涙を唆られるリリシズム。山本周五郎の魅力を十全に伝える名篇。(40頁・★5個)
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「「青べか」を買った話」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021224
著者が若い頃に住んだ浦粕(現・浦安)を舞台に描いた自伝的名作『青べか物語』の冒頭に置かれた文章。「べか舟」とは海苔採りに使う平底舟のこと。この小説を象徴する「青いべか舟」を芳爺さんから買った経緯を綴っている。芳爺さんは街でいちばん大きな貝の缶詰工場の倉庫番をしている老人で、狡猾で欲深いがそれゆえにユーモラスで人情味溢れる庶民の姿を体現する人物。著者の巧妙な筆致は著者と対象との距離感をも絶妙に表している。(16頁・★2個)
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「へちまの木(上)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021217
旗本の三男坊で、養子に出されそうになり家出した房二郎は、小網町の居酒屋で知り合った瓦版記者、木内桜谷の口利きで同じ職場、文華堂の見習いとなった。まだ世間ずれする前の二十五歳。覚えた酒に泥酔もし、これも桜谷の紹介で入った下宿の美しい後家、おるいに何かと世話を焼かれる。文華堂の主人、西川文華は女房の尻に敷かれたふりをして金を引き出す吝嗇家。ある日、給料の値上げを訴えた桜谷は解雇されてしまう……江戸情緒の中に描かれた人間模様。(40頁・★5個)
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「へちまの木(下)」 山本周五郎
330円 (税込) [JAN]4582628021286
旗本の三男坊で、養子に出されそうになり家出した房二郎は、小網町の居酒屋で知り合った瓦版記者、木内桜谷の口利きで同じ職場、文華堂の見習いとなった。まだ世間ずれする前の二十五歳。覚えた酒に泥酔もし、これも桜谷の紹介で入った下宿の美しい後家、おるいに何かと世話を焼かれる。文華堂の主人、西川文華は女房の尻に敷かれたふりをして金を引き出す吝嗇家。ある日、給料の値上げを訴えた桜谷は解雇されてしまう……江戸情緒の中に描かれた人間模様。(40頁・★5個)

「瓶詰地獄」 夢野久作
本体価格:300円 [JANコード]4582628021576
島の海岸に流れ着いた三本の麦酒瓶。赤い蝋で封をされたその瓶の中には、船で遭難し、南の無人島に流れ着いた幼い兄妹の、健気ながら身も震えるメッセージが入っていた。幸いその島は年中夏のようで、豊かな食物が充ち満ちていた。二人は力を合わせて環境を整え快適な生活を築いていったが、月日が経つにつれて美しく艶やかに育っていく妹の肉体に、兄は悩まされるようになっていく。そしてその得体のしれない感情は妹も同じだった……最後まで「人」でいることに踏みとどまろうとする二人の運命は?(20頁・★2.5個)
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「微笑(上)」 横光利一
330円 (税込) [JAN]4582628020203
作家梶のもとに現れた、栖方という俳号を持つ青年科学者。彼が開発中だと話す殺人光線は、敗色濃厚の戦局を打開する希望の光となり得るものでした。どこか狂気をはらむ彼の微笑に惹かれる梶に、栖方は発狂しているという憲兵からの知らせが。そして敗戦。殺人光線を開発していた若き科学者が敗戦の報を聞いて狂死したという新聞記事を読んだ梶は、行方不明の栖方の死を確信しますが……狂気と正気のはざまをたゆたう横光利一の遺作。(上巻)(28頁・★3.5個)
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「微笑(下)」 横光利一
330円 (税込) [JAN]4582628020210
作家梶のもとに現れた、栖方という俳号を持つ青年科学者。彼が開発中だと話す殺人光線は、敗色濃厚の戦局を打開する希望の光となり得るものでした。どこか狂気をはらむ彼の微笑に惹かれる梶に、栖方は発狂しているという憲兵からの知らせが。そして敗戦。殺人光線を開発していた若き科学者が敗戦の報を聞いて狂死したという新聞記事を読んだ梶は、行方不明の栖方の死を確信しますが……狂気と正気のはざまをたゆたう横光利一の遺作。(下巻)(36頁・★4.5個)
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「春は馬車に乗って」 横光利一
330円 (税込) [JAN]4582628021248
病床に伏せる妻を看病する夫。彼女の言葉は日ごとに刺々しくなり、彼の言動を咎めるようになる。耐えぬ口論を彼は「檻の中の理論」と称し、妻は死の領域に繫がれていると思うことで平静を保とうとする。しかし、病魔は彼女の身体を蝕んでゆき、好物の鳥の臓物をせがむ代わりに、彼に聖書の朗読を求める。死の訪れを自覚した彼女は、自らの骨の行方を思い滂沱する。やがて、スイートピーの花束がふたりに春の訪れを告げる——。(28頁・★3.5個)