日本編集者学会
[公開セミナー]
第11回セミナー 書物の黄金時代
第12回セミナー 出版とアーツ・アンド・クラフツ運動
第13回セミナー 読者はどこへいった-雑誌出版の危機と読者の消滅について
第14回セミナー 水上勉の知られざる世界
[出版物]
エディターシップ Vol.1 時代を画した編集者
エディターシップ Vol.2 書物の宇宙、編集者という磁場
エディターシップ Vol.3 時代の岐路に立つ
Editorship Vol.4 特集 沖縄とジャーナリズムのいま
Editorship Vol.5 特集 信州と出版文化/少年社員のいた時代
Editorship Vol.6(特別号) 追悼・長谷川郁夫
設立にあたって
今日、出版界はその根底を揺るがす事態に直面している。
高度資本主義の渦のなかに翻弄され、産業としての出版が自ら危機的状況を招いたことはすでに明らかな様相であったが、さらに急激な技術革新による電子化は、〈本〉そのものの存在の永続性を脅かすところとなった。
〈本〉がテキスト(作品)の容器であることはいうまでもない。しかし、作品は書かれたままの状態では作品ではない。編集という作用を得てはじめてテキストとなるのだ。書物は実用性を備えた事物ではあるが、写本時代以来のそれ自体のもつ遺伝子が制作者に美的洗練を要求するといえる。作品も、〈本〉も、編集者のヴィジョンのなかに誕生するのである。
変革期の現在、もっとも危惧されるのは、編集という目に見えないはたらきの創造性、そしてその自立性が失われることである。エディターシップ、また造本感覚といった機能は、じつは余りに人間臭く個性に即したものであると同時に、それはいつでも無名性の闇に身を隠してしまうほどに繊細なものであるのを知るからだ。
いま、われわれは自らを問う。
編集者とは何であったか、編集者はどうあるべきか、を。編集にかかわるさまざまな仕事について、その過去と現在とを検証する。このきわめて精神的な営為の記憶を、来るべき未来へと繋ぐために。
ここに、現役編集者をはじめとする出版関係者、また大学などで出版・編集の講座を受けもつ編集経験者が中心となって、詩人・小説家、日本文学・外国文学、ひろく人文諸科学研究者と手を携え、研究のための組織を立ちあげた。言葉を与えられることの少なかった編集者の仕事をめぐるさまざまな問題に、光を投げかけるためのささやかな第一歩として。
二〇〇九年一月 日本編集者学会 初代会長 長谷川郁夫