都市残酷
ワリス・ノカン(著) 下村 作次郎(訳)
四六判 304ページ 上製 価格 3,080円(税込)
ISBN978-4-8038-0393-8 CコードC0197
2022年3月28日発売
紹介
山で生きてきた。国家など不要だった。都市の残酷に呑みこまれても、猟人の魂は生き延びる。記憶はいつも創造と壊滅の間でつなわたり。だから物語は書かれなくてはならない。
ワリス・ノカンの文章が、全球化社会に対する抵抗の線を引く。―― 管啓次郎
台湾原住民文学の旗手が描く、都市化された台湾の悲しみ。原住民の誇らしい魂が、都市化の波に呑まれ悲鳴を上げる台湾の現実。真の台湾を知るには避けて通ることのできない作品集。
目次
序 日本の読者の皆さんに ワリス・ノカン
作品舞台地図/凡例
第一部──記憶柔和
弔い
最初の狩猟
長い年月のあとのある夕暮れ
タロコ風雲録
悲しい一日
独裁者の涙
野ゆりの秘密
女王の蔑視
失われたジグソーパズル
死神がいつも影のごとく寄りそう
第二部──都市残酷
奥の手
中秋の前
夜の行動
タクシー
小さなバス停の冬
この、もの悲しい雨
希洛の一日
銅像が引きおこした災い
私の小説「先生の休日」
ムハイス
コウモリと厚唇の愉快な時間
第三部──山野漂泊
虹を見たか
タイワンマス
人と離れてひとり暮らす叛逆者、ビハオ・グラス
父
初出一覧
訳者あとがき 下村作次郎
著者プロフィール
ワリス・ノカン(瓦歴斯・諾幹、Walis Nokan)
1961年、台湾台中県和平郷ミフ部落(現、自由村雙崎社区)生まれ。タイヤル族で、パイ・ペイノフ群に属する。最初、柳翱のペンネームで散文集『永遠の部落』を出す。1990年代になって、雑誌『猟人文化』の発行や「台湾原住民人文研究センター」の活動に従事する。
著作は詩集、散文集、小説集、評論集などさまざまなジャンルにおよび、 文学賞の受賞も多数ある。
下村作次郎(しもむら さくじろう)
1949年、和歌山県新宮市生まれ。天理大学名誉教授。2020年2月から7月まで、国立清華大学台湾文学研究所客員教授。著書に『文学で読む台湾』、『台湾文学の発掘と探究』、監訳『悲情の山地』(以上、田畑書店)。翻訳・編集『台湾原住民文学選』全九巻(2012年、第一等原住民族専業奨受賞)、孫大川著『台湾エスニックマイノリティ文学論』、シャマン・ラポガン著『空の目』、『大海に生きる夢』(2018年、第5回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞)(以上、草風館)、陳芳明著・共訳『台湾新文学史』上・下、陳耀昌著『フォルモサに咲く花』(以上、東方書店)など。2021年11月、台湾文学貢献奨受賞。