戦前、外科で心臓に手を出すのはタブーだった。

 負けず嫌いの開業医榊原亨は官学の無理解を跳ねのけ、心臓鏡を独自に開発、世界初の心臓内部撮影に成功する。

 「心臓病の患者をひとりでも多く救いたい」その一念から地域医療の重要性を唱え、日本医師会を再建し、乞われて参議院議員にまでなる。

 そしてまた、信念の医師はひとりでも多くの患者を救いたいと市井に戻った。






 「タブー」にメスを入れた外科医
【改訂第三版】

榊原 宣 著


定価:本体880円+税 新書判/カバー装
248ページ ISBN978-4-8038-0341-9


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 岡山県岡山市の心臓病センター榊原病院が2017年4月に85周年を迎えます。それを記念し、創業者榊原亨の伝記を加筆復刊致します。榊原亨は日本の心臓外科のパイオニアとしてだけではなく、戦前よりいち早く「患者第一」「地域医療の充実」を打ち出し、後続病院の指針となりました。

 また開業医ながら心臓外科の基礎研究を行い、その業績は国内外に評価されています。戦後すぐの日本医師会再建、そして参議院議員として現在の保険医療制度の礎を築いたことは、つとに知られています。いち開業医の枠を大きく超えた、立志伝中の人物です。

 著者は消化器外科の名医として知られるご長男の榊原宣氏。1993年毎日新聞社から発刊されたものに大幅に加筆し、85周年事業の一環として復刊致します。改めて、この稀代の医学の泰斗の再評価が待たれます。


書評掲載 
山陽新聞5月9日付 他




 順天堂大学名誉教授 社会医療法人社団十全会名誉理事  榊原宣(のぶる)

 1931年岡山市に生まれる。56年岡山大医学部卒、専攻は消化器外科学。 東京女子医科大教授、同第二病院長、順天堂大学教授、岡山市病院事業管理者を経て、現在順天堂大名誉教授、社会医療法人社団十全会名誉理事長。
著書に「胃がん」「胃がんと大腸がん」(以上、岩波新書)、「ガン征服への挑戦」(NHKブックス)、「胃の手術」(永井書店)  ほか。





[目次]

心臓外科のパイオニア
1心臓外科の開拓
2小さな病院の大きな研究室
3「ご病客といいなさい」
4一枚の軍事郵便葉書
5心臓鏡の発明と改良
6世界で初めて心臓のなかをみる
7空前絶後の一開業医の宿題報告
8イヌの牧場
9狭心症に対する手術


心臓外科の発展
1戦後の再出発
2心臓外科研究からの引退
3父と私


臨床外科学会設立をめぐって
1日本臨床外科学会の設立
2学会の再出発


父の進路
1恩師泉伍朗教授と父
2研究への道


病院の開設と開業医の生活
1開業医の生活あれこれ
2無類の世話好き


政治への後半生
1病院燃ゆ
2戦後の日本医師会と県医師会
3寝耳に水の代議士ばなし
4健康保険と医薬分業
5父と武見太郎会長
6参議院議員となる
7政界からの引退


医師にもどる
1「お父さんは乾杯要員だな」
2尊厳死を考える
3父の手紙
4研究への情熱衰えず
5弟、仟への思い
6東京と岡山行ったり来たり
7父の最期

年譜