懐郷

リムイ・アキ (著) 魚住 悦子 (訳)
四六判  328ページ 上製 
定価 2,800円+税 
ISBN 978-4-8038-0420-1 CコードC0097 

2023年9月16日発売

紹介

部落の中の様々な権力関係、先祖代々の恨み、階級、ジェンダー、そして深刻な家庭内暴力……台湾原住民族に対して与えられがちな〈ユートピア〉的なイメージを打ち破り、タイヤル族のひとりの女性、懐湘の一生を通して、原住民の山地社会における生活の実相を初めてあからさまにした長編小説。

著者プロフィール

リムイ・アキ(里慕伊・阿紀 Rimuy Aki)
1962年、新竹県尖石郷カラパイ部落に生まれる。タイヤル族。国立台北師範学院(現、国立台北教育大学)幼児教育科卒業。卒業後は幼児教育に携わり、十余年にわたって幼稚園の教諭や園長を務めた。2001年からはタイヤル族の言語の普及と継承に力を注いでいる。新北市のさまざまな学校でタイヤル語の教師を務めており、近年は絵本のタイヤル語訳にも携わっている。そのかたわら、タイヤル語アニメでも声優として活躍しており、原住民テレビの『樹人大冒険』シリーズや、『吉娃斯愛科学』アニメ・音声ブックシリーズなどがある。著作は、散文集『山野笛聲』(晨星出版)、小説『山桜花的故郷』(麦田出版)、『懐郷』(同)、神話伝説を編集執筆した『彩虹橋的審判』(新自然主義出版)がある。文学賞は、「山野笛聲」第一回山海文学賞散文部門第一位(1995年)、第一回中華汽車原住民文学賞小説部門第三位(2000年)、第二回中華汽車原住民文学賞小説部門第三位(2001年)を受賞している。

魚住悦子(うおずみ・えつこ)(訳)
1954年兵庫県相生市生まれ。大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。文学修士。天理大学・武庫川女子大学非常勤講師。訳書に鄧相揚著『抗日霧社事件の歴史』、『植民地台湾の原住民と日本人警察官の家族たち』、『抗日霧社事件をめぐる人々』(以上、日本機関紙出版センター)、『台湾原住民文学選二 故郷に生きる』、『同七 海人・猟人』、パタイ著『タマラカウ物語 上・下』、『暗礁』、シャマン・ラポガン著『冷海深情』、楊翠著『少数者は語る 台湾原住民女性文学の多元的視野 上・下』(以上、草風館)ほかがある。論文に「台湾原住民族作家たちの『回帰部落』とその後」(『日本台湾学会報』第七号)、「矢多一生(高一生)と頭骨埋葬」(『高一生研究』第七号)、「台湾原住民文学の誕生」(『台湾近現代文学史』、研文出版)ほかがある。2022年10月、台湾行政院原住民族委員会より一等原住民族専業奨章を授与された。