織田作之助と川島雄三の共振、直木三十五と「ファシズム宣言」、
佐藤春夫、中上健次を生んだ熊野と大逆事件〜賀川豊彦の神戸労働運動、
関西沖縄県人会〜神戸モダニズムの空間、
阪神間の建築表象を巡る考察〜稲垣足穂、横溝正史……
文学に始まって、映画、建築、
または労働運動から前衛芸術まで。
1920〜30年代(戦中・戦後)のメディアにおける文化表象を
多様な角度から考察することで、
「関西」という文化空間を立体的に捉えたまったく新しい〈関西学〉の誕生!



※お詫びと訂正


『〈異〉なる関西 』

編者:日本近代文学会関西支部編集委員会

発売日:2018年11月11日
四六判上製・ビニールカバー/388頁
定価:3,080 円(税込
ISBN978-4-8038-0356-3


書評掲載情報

2018年12月09日 京都新聞 朝刊
2019年01月13日 毎日新聞 朝刊 評者: 菊地信義(装幀家)
2019年01月13日 図書新聞 「「地域学」の閉域を超えた、「関西」の持つ多義性―大阪に見られる「泥臭さ」から、神戸のモダニズムまで」評者:中山弘


目次

まえがき

第一章 移動と差異化

酒井隆史 織田作之助と川島雄三
尾崎名津子 〈大阪人〉の視差──直木三十五「五代友厚」をめぐって
廣瀬陽一 金達寿における関西──〈神功皇后の三韓征伐〉と「行基の時代」
黒川創 小説『京都』に至るまで──土地と創作をつらぬくもの

【コラム】 福岡弘彬 ボロ・くず・ゴミ溜りの街、京都

第二章 場と営み

冨山一郎 宣言としての言葉をどう再読するか──関西沖縄県人会機関紙『同胞』を読む
辻本雄一 熊野新宮──「大逆事件」──春夫から健次へ
杣谷英紀 一九二〇年代前半の神戸労働運動と賀川豊彦──結節点としての労働学校・関西学院

【コラム】 磯部敦 言説としての奈良

第三章 メディアと文化環境

大橋毅彦 神戸モダニズム空間の〈奥行き・広がり・死角〉をめぐる若干の考察
永井敦子 一九二〇年代半ばの『神戸版』映画情報──新聞連載小説の映画化を中心に

島村健司 ロケーションへのまなざし──神戸一九二〇年代文学の背景・前衛芸術と郷土芸術の交差地点

【コラム】 荒井真理亜 関西のメディア人・北尾鐐之助

第四章 散種されるモダニズム

高木彬 「理想住宅」と「煌ける城」──一九二〇年代・阪神間の建築表象をめぐって
山口直孝 複数の神戸を遊歩すること──横溝正史『路傍の人』のモダニズム
大東和重 昭和初期・神戸の文学青年、及川英雄──文学における中央と地方

【コラム】 季村敏夫『山上の蜘蛛』を書き始めた頃

あとがき

執筆者紹介

索引

【著者紹介】

酒井隆史(さかい・たかし)1965年、熊本県生まれ。早稲田大学文学研究科卒業。大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授。専攻は社会思想史。2012年、『通天閣 新・日本資本主義発達史』(2011年、青土社)で第34回サントリー学芸賞受賞。ほか著書として『自由論』(2001年、青土社)、『暴力の哲学』(2016年、河出文庫)がある。

尾崎名津子(おざき・なつこ) 1981年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻後期博士課程修了。弘前大学人文社会科学部講師。専攻は日本近現代文学、検閲研究。2014年、第十六回松本清張研究奨励賞受賞。著書として『織田作之助論〈大阪〉表象という戦略』(2016年、和泉書院)がある。

廣瀬陽一(ひろせ・よういち) 1974年、兵庫県生まれ。大阪府立大学大学院博士後期課程修了。大阪府立大学非常勤講師・同大学客員研究員。専攻は日本近代文学・在日朝鮮人文学。編著書として『金達寿小説集』(編著)(2014年、講談社文芸文庫)、『金達寿とその時代──文学・古代史・国家』(2016年、クレイン)、『戦後日本を読みかえる 第5巻 東アジアの中の戦後日本』(共著)(2018年、臨川書店)がある。

黒川 創(くろかわ・そう)1961年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。作家。2009年、『かもめの日』(新潮社)で第60回読売文学賞を、2014年、『国境 完全版』(河出書房新社)で第25回伊藤整文学賞を、2015年、『京都』(新潮社)で第69回毎日出版文化賞をそれぞれ受賞する。ほか著書に『いつか、この世界で起っていたこと』(2012年、新潮社)、『鷗外と漱石のあいだで 日本語の文学が生まれる場所』(2015年、河出書房新社)、『岩場の上から』(2017年、新潮社)などがある。

福岡弘彬(ふくおか・ひろあき)1984年、愛知県生まれ。同志社大学大学院博士課程後期課程修了。関西学院大学文学部助教。専攻は日本近現代文学。著作として「焼跡を読み替える方法——石川淳「焼跡のイエス」とユートピア——」(「昭和文学研究」第73号、2016年)「「堕落」と「運命」——坂口安吾「堕落論」と保田與重郎的「デカダンス」の関係をめぐって——」(「日本近代文学」第98号、2018年)がある。

冨山一郎(とみやま・いちろう)1957年、京都市生まれ。京都大学大学院農学研究科卒業。同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授。専攻は沖縄近現代史。著書として『始まりの知』(2018年、法政大学出版局)、『流着の思想』(2013年、インパクト出版会)、『暴力の予感』(2002年、岩波書店)などがある。

辻本雄一(つじもと・ゆういち)1945年、新宮市生まれ。早稲田大学第一文学部国文科卒業。佐藤春夫記念館館長。著書として『熊野・新宮の「大逆事件」前後』(2014年、論創社)、『佐藤春夫読本』(監修・著)(2015年、勉誠出版)、『「改造」直筆原稿の研究』(共著)(2007年、雄松堂)がある。

杣谷英紀(そまたに・ひでのり)1965年、大阪府生まれ。関西学院大学大学院卒業。関西学院大学非常勤講師・甲南女子大学非常勤講師ほか。専攻は日本近代文学。著書として『横光利一と関西文化圏』(共著)(2008年、松籟社)、『日本文学研究論文集成38 横光利一』(共著)(1999年、若草書房)がある。

磯部 敦(いそべ・あつし) 1974年、新潟県生まれ。中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了。奈良女子大学研究院人文科学系准教授。専攻は近代日本出版史。著書として『出版文化の明治前期—東京稗史出版社とその周辺—』(2012年、ぺりかん社)、『明治前期の本屋覚書き 附.東京出版業者名寄せ』(2012年、金沢文圃閣)、『円朝全集』別巻2(共著)(2016年、岩波書店)がある。

大橋毅彦(おおはし・たけひこ)1955年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程修了。関西学院大学文学部教授。専攻は日本近代文学。2000年、第七回室生犀星顕彰大野茂男賞を、2018年、第26回やまなし文学賞をそれぞれ受賞する。著書に『室生犀星への/からの地平』(2000年、若草書房)、『上海1944−1945武田泰淳『上海の螢』注釈』(2008年、双文社出版)、『昭和文学の上海体験』(2017年、勉誠出版)がある。

永井敦子(ながい・あつこ)1972年、兵庫県生まれ。関西学院大学大学院博士課程後期課程修了。芦屋市谷崎潤一郎記念館学芸員、関西学院大学非常勤講師。専攻は日本近代文学。著作として「〈変態〉言説と探偵小説—谷崎潤一郎「青塚氏の話」論」(「日本近代文学」第77集)、『谷崎潤一郎—人と文学』(2013年、武庫川女子大学出版部)がある

島村健司(しまむら・けんじ)1970年、和歌山県生まれ。龍谷大学大学院文学研究科日本語日本文学専攻博士後期課程修了。龍谷大学ライティングサポートセンター・ライティングスーパーバイザー。専攻は日本近代文学。著書として『横光利一と関西文化圏』(共著)(2008年、松籟社)がある。

荒井真理亜(あらい・まりあ)1975年、大分県生まれ。関西大学大学院文学研究科卒業。相愛大学人文学部准教授。専攻は日本近代文学。著書として『上司小剣文学研究』(2005年、和泉書院)、『上司小剣コラム集』(2008年、龜鳴屋)、『大阪文藝雑誌総覧』(共著)(2013年、和泉書院)がある。

高木 彬(たかぎ・あきら) 1983年、大阪市生まれ。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科造形科学専攻博士後期課程修了。龍谷大学文学部特任講師。専攻は日本近現代文学、都市・建築表象。2012年度全国大学国語国文学会「文学・語学賞」受賞。著作として『村上春樹と小説の現在』(共著)、(2011年、和泉書院)、「目的なき機械の射程──稲垣足穂「うすい街」と未来派建築」(『文学・語学』第202号、2012年3月)、「ビルディングと新感覚派──震災復興期の建築空間を読む」(『横光利一研究』第13号、2015年3月)がある。

山口直孝(やまぐち・ただよし)1962年、兵庫県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了。二松学舎大学教授。著書として『「私」を語る小説の誕生——近松秋江・志賀直哉の出発期』(2011年、翰林書房)、『横溝正史研究』1〜6(共編著)(2009〜17年、戎光祥出版)、『大西巨人——文学と革命』(編著)(2018年、翰林書房)がある。

大東和重(おおひがし・かずしげ)1973年、兵庫県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。関西学院大学法学部教授教授。専攻は日中比較文学、台湾文学。2014年、第19回日本比較文学会賞を、2015年、第15回島田謹二記念学藝賞をそれぞれ受賞する。著書として『文学の誕生——藤村から漱石へ』(2006年、講談社選書メチエ)、『郁達夫と大正文学——〈自己表現〉から〈自己実現〉の時代へ』(2012年、東京大学出版会)、『台南文学——日本統治期台湾・台南の日本人作家群像』(2015年、関西学院大学出版会)などがある。

季村敏夫(きむら・としお)1948年、京都市生まれ。詩人。古物古書籍商を経て現在商社経営。2005年、山本健吉文学賞を、2010年、小野十三郎特別賞を、2012年、現代詩花椿賞をそれぞれ受賞する。著書に『木端微塵』『ノミトビヒヨシマルの独言』(共に書肆山田)、『山上の蜘蛛ー神戸モダニズムと海港都市ノート』(みずのわ出版)などがある。