〈切磋琢磨〉という言葉がこれほどに相応しい関係があるだろうか――
同じ時代を生き、ともに「私小説」を極めようと志したふたりの文士が、
四十年以上にもわたって互いの作品を評し合い、生活のこもごもを語り合った奇跡! 
これまでも、これからもおそらくはあり得ない、日本文学史上稀有な〈往復書簡集〉。



八木義德 野口冨士男 往復書簡集

平井 一麥・土合 弘光 ほか 編

A5判  上製 価格 6,600円(税込)

2021年6月3日発売

ISBN978-4-8038-0383-9 Cコード C0095

縦216mm x 横156mm x 束(厚み)33mm 重さ644g

A5判  上製

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書評

2021年10月24日 しんぶん赤旗 ほんだな

2021年8月28日 図書新聞(第3510号 2021年09月04日) 評者: 大木志門

2021年8月28日 朝日新聞 朝刊 評者: 保阪正康「もう一人の私と向き合った40年」

2021年8月3日 東京人(2021年9月号) 川本三郎 東京つれづれ日誌(135) 水郷水元公園と塩見三省さん

2021年7月21日 日本経済新聞 「私小説作家の生活と友情:平井一麥」

2021年7月17日 図書新聞 評者: 荒川洋治 21年上半期読書アンケート

2021年7月13日 読売新聞 朝刊 [記者ノート]『八木義徳 野口冨士男 往復書簡集』刊行…44年間に439通 「文士」の世代 記録への熱量と執念

2021年7月3日 毎日新聞 朝刊 評者: 川本三郎『私小説一筋「相互批評」45年の奇蹟』

紹介

〈切磋琢磨〉という言葉がこれほどに相応しい関係があるだろうか――同じ時代を生き、ともに「私小説」を極めようと志したふたりの文士が、四十年以上にもわたって互いの作品を評し合い、生活のこもごもを語り合った奇跡! これまでも、これからもおそらくはあり得ない、日本文学史上稀有な〈往復書簡集〉。

目次

はしがき

八木義德と野口冨士男
   八木義德から野口冨士男へ
     土俵ぎわの強さ/落日遠望――野口冨士男を悼む
   野口冨士男から八木義德へ
     八木義德/同年者の立場から

往復書簡
    凡例
  一九四九 ~ 一九五〇年 (昭和二四~二五年)   書簡1~2
  一九五一 ~ 一九五五年 (昭和二六~三〇年)   書簡3~31
  一九五六 ~ 一九六〇年 (昭和三二~三五年)   書簡40~88
  一九六一 ~ 一九六五年 (昭和三六~四〇年)   書簡89~118
  一九六六 ~ 一九七〇年 (昭和四一~四五年)   書簡119~153
  一九七一 ~ 一九七五年 (昭和四六~五〇年)   書簡154~194
  一九七六 ~ 一九八〇年 (昭和五一~五五年)   書簡195~243
  一九八一 ~ 一九八五年 (昭和五六~六〇年)   書簡244~293
  一九八六 ~ 一九九〇年 (昭和六一~平成二年)  書簡294~381
  一九九一 ~ 一九九三年 (平成三~五年)     書簡382~438

註記

交友録

略年譜

解說 平山周吉

あとがき

前書きなど

はしがき
八木義德と野口冨士男はともに一九一一(明治四四)年生まれですから、今年二○二一年は、生誕一一○年にあたります。
二人の関係は一九四八(昭和二三)年一月創刊の「文藝時代」の同人として識りあったことからはじまります。一九四九年七月「文藝時代」廃刊後、この同人のうち、特に仲のよかった者が舟橋聖一氏を中心に集まって「キアラの会」が結成され、二人は創設メンバーになりました。また、一九五〇(昭和二五)年から、芝木好子さんを中心に同世代者が集まった「えんの会」会員となりました。この二つの会を中心に日本文藝家協会、各種文学賞受賞式や会合などで顔を合わせると、終了後コーヒーを飲みながら、互いの作品の読後感や文壇について会話を交わし、やがて、これらを書簡でやりとりするようになり、二人の盟友関係は野口が死去するまで四十五年間にわたりました。
作家が、特に若手作家がベテラン作家に読後感を求めることは間々あることですし、受贈本の返礼に読後感を送ることも多くみられますが、八木・野口のように、お互いの作品の読後感を四〇年以上も続けるというケースは稀有だとおもいます。
二人の読後感は、本音をぶつけ合い、「創作のモメント」「創作のプロセス」「小説の技法」「私小説論」などにおよんで、手の内まで見せ合っていますし、助言もし合っています。時には、指摘されたことに対する反論もあり、互いにスランプに陥った時期には励まし合ってもいます。野口は、ナマ原稿の読後感を求めたことすらありました。
二人は純文学作家として矜持をもちつつ、たがいを尊重し合っていました。長い間には友情にひびが入りそうになったこともありましたが、盟友関係は続きました。
こうした読後感やその時々の心境までを伝え合った「往復書簡集」を残したい、と八木正子と平井一麥が願ったのが本書です。