カオスから流出する荒ぶる魂の音楽に、わたくしは満たされた。──江森國友

佃学こそは生まれついての詩人だったと思う。──清水哲男

詩が書けなくなったり書きたくとも言葉が手繰りよせられない日には、よく佃学の詩を猛スピードで読んだ。佃の詩には不安や不幸が倒立しながら、眩しく輝いていた。 ──千々和久幸

佃君はなにかに憑かれている。もしかすると佃君の方が憑いているのかもしれぬ。──十国修




佃学全作品

天成の詩人の全貌いま甦る!
没後25年を経て、堂々刊行。

装幀=菊地信義

体裁=四六判上製/布貼り/表紙箔/化粧函入り/口絵一丁


第一巻(ISBN978-4-8038-0349-5 C0392) 304頁 Amazon
第二巻(ISBN978-4-8038-0350-1 C0392) 328頁 Amazon
第三巻(ISBN978-4-8038-0351-8 C0392) 328頁 Amazon


定価:各巻本体 4,180 円税込




「詩は孤独な精神の戯れである。/自分の中に変な人間がいて、弥次郎兵衛のようにふらふらしている。この変な存在に気づいてからもう久しい。(中略)/
今では、自分の中に彼がいるのか、彼の中に自分がいるのかわからない有様である」(「精神劇」後記)

──京都大学在学中に清水哲男、大串章らと同人誌「青炎」をおこして詩作を究め、
 多くの詩人から「彼こそ生まれながらの詩人」と認められていた──

「ただ、そのような才質に恵まれながら、佃学が世俗的な意味での詩人として不幸だったのは、彼の目がいつだって世界の暗部を見ることに執着していたからだろう。この目は、戦後社会の成長や発展の掛け声のなかでは、あまりにも孤独でありすぎた」(清水哲男)



各巻構成

【第一巻】
『ネワァーン・ネウェイン洗脳塔』(夜が明けるまで/五月雨病前線/〈地獄坂〉メモ/際限もなく/サンクチュアリ破産/ネワァーン・ネウェイン洗脳塔/幻夏 ほか)
『不眠の草稿』(牧歌/伝説/悲しい水夫/精神劇/青春/球根/季節/時間の空/破滅行者/幻の荷役/不眠の草稿/有罪の辺境/橋に関する詩と詩論/旅の草稿/風雪 ほか)
『詩と献身』(幻日幻想/森川義信・覚書/衣更着信・覚書/吉岡実・覚書/無垢への遡行、あるいはわがオブセッション/斎場の孤独/江森國友・試論/暮鳥断想/雑感として ほか)

【第二巻】
『炎天』(花の里から/夏だより/挿し絵 2点/閑古鳥/〝MU〟/冬来りなば……/(怪物ケンタウロスが……)/(日も月も)/六月のけものへん ほか)
『劇中劇』(内乱もしくはNULL PART/白紙状態/燃えつきた網膜の底から/揺れる水平線をめぐって/時の懸崖の悲しみの叛乱/屋根裏の構図/朝から昼へ/劇中劇 ほか)
『艾』(奈落小景/虎穴にて/泰山木の花のなかにも/夏至のほとり/冬のカルテ ほか)
『精神劇 から6篇』(折れた翅/忘却祭/神話航海/無次元考/亜熱帯/亜寒帯)
『白図』(子午線/他人の環境/現在時制/ある傍証の試み/妄誕、あるいは曖昧なる自明)

【第三巻】
『海景』(繁忙/六月の午後から/巻貝のように/海難メモ/夢のコラージュ/十月の火は……/不帰行/卵巣/人生を病む 断片/『涙男』の独白/はじめも終わりもなく/反復)
『共同墓地』(牧歌/トルソ/夢の蝕 断片/感傷メモ/夜の底で/樹の証言/冬の断片 ほか)
『時間の空 から3篇』(暗斗/THE LOST QUINTET/走狗)『(花粉症のような)』
雑纂=〈詩集未収録作品〉古い男、古い季節〈エッセイ〉半途のプロフィール/断想/反魂/緑が丘
附録= 『時間の空』跋(十国修)/『不眠の草稿』跋(江森國友)/『海景』跋(ヨシダ・ヨシエ)/『ネワァーン・ネウェイン洗脳塔』書評(清水哲男)/「青炎」のこと/通夜の席に届いた十冊目の詩集(大串章)/カオスの人(江森國友)/さよなら(清水哲男)/嗚呼、佃学よ(安宅夏夫)/最後の武者震い/風説(千々和久幸)/佃学(の作品)という現象をめぐって(塚本龍男)/佃学のいた場所(山本哲也)/いま、思うこと/ふたたび「いま想う」(佃信子)/「邯鄲」19号 編集後記/佃学 略年譜



【佃学略年譜】

1938       
  9
26日、香川県高松市にて出生。

1958         
 京都大学文学部入学。同人誌「青炎」に参加。

1966         
 早稲田大学第二文学部三年に編入、翌6710月に中退。

1970       
  4
月、結婚。同月、「にゅくす」13号に散文「子午線」。

1971       
  6
月、第一詩集『不眠の草稿』(母岩社)刊行。江森國友の跋。

1973       
  4
月、第二詩集『劇中劇』(母岩社)刊行。

1975       
  3
月、第三詩集『共同墓地』(紫陽社)刊行。7月、「apocr」を千々和久幸と創刊。

1978       
  3
月、第四詩集『海景』(母岩社)刊行。ヨシダ・ヨシエ跋。8月、千々和久幸、緑川登ら「邯鄲」創刊。

1980       
  6
月、『作品集*白図』(邯鄲舎)刊行。

1982       
  3
月、詩論集『詩と献身』(レアリテの会)刊行。

1986       
  12
月、第五詩集『炎天』(沖積舎)刊行。

1987       
  4
18日『炎天』出版を祝い、「佃学をサカナに詩を想い出す夕べ」開催。

1991       
  12
月、第六詩集『(花粉症のような)』(邯鄲舎工房)刊行。

1992       
  6
月、第七詩集『艾』(邯鄲舎工房)刊行

1993       
  11
月、腰痛ひどく11日荻窪病院に検査入院、同12日手術、S字結腸がんと判明。1224日退院、3カ月、もって半年という医師の診断、リンパ節、肝臓にも転移。

1994       
  2
月、「邯鄲」17号に「サンクチュアリ破産」「キツツキは……」、7月、「邯鄲」18号に「無人駅まで」「どしゃぶりまであと一秒」、916日、西荻中央病院に入院。23日5時没。享年55歳。第八詩集『ネワァーン・ネウェイン洗脳塔』(砂子屋書房)刊行。

佃学全作品プレスリリース