日本編集者学会第12回セミナー

 

第12回セミナーチラシ(表) 第12回セミナーチラシ(裏)

第12回日本編集者学会セミナー&大阪芸大特別講義

出版とアーツ・アンド・クラフツ運動

 産業革命で失われた、人の手の温もりがあるアートと出版。ウィリアム・モリスが提唱、実践した「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、日本に渡って柳宗悦が受け止め、「民藝」の運動につながる……その大きな流れがいまここに!

第一部  ケルスコットプレスプライヴェットプレス —— ウィリアム・モリスの光と影 草光俊雄 [東京大学名誉教授]

第二部  雑誌『工藝』 挿絵 —— 写真図版の活用を中心にして [大阪芸術大学名誉教授]

 2018年11月16日(金)  15時半~18時終了  (開場15時開場)

大阪芸術大学学術情報センター B1階 AVホール

参加費 :無料 

 問い合わせ先:日本編集者学会事務局 〒102-0074 東京都千代田区九段南3-2-2森ビル5階 ㈱田畑書店 内
tel:03-6272-5718 fax:03-3261-2263 e-mail:info@tabatashoten.co.jp

 ケルスコットプレスプライヴェットプレス  —— ウィリアム・モリス    草光 俊雄 [東京大学名誉教授]

生涯美しいものを追求したウィリアム・モリスは晩年にケルムスコット・プレスを設立し、理想とする書物の生産に没頭した。活字をデザインし、インクや紙を選定し、美しい挿絵や装飾に飾られた書物が次々に生み出された。こうした彼の努力はアーツ・アンド・クラフト運動の一環として、その後の世代の書物愛好家たちへと受け継がれていくことになる。そして美しい書物を作りたいという熱意を抱いた才能ある出版者や芸術家たちが輩出する。第1次世界大戦の前後に次々と生まれたプライヴェット・プレスである。この講演ではモリスの仕事を見ていくと同時にそれが後になってどのように受け継がれていったのか、とくにモリスの書物の理想は新しい時代にどれだけ受け入れられたのか、という問題を「モリスの光と影」として検討しながら見ていくことにしたい。

雑誌『工藝』 挿絵  —— 写真図版活用中心にして                   [大阪芸術大学名誉教授]

雑誌『工藝』は、柳宗悦(1899-1961)を主幹として昭和6(1931)年1月10日に創刊され、昭和26(1951)年1月まで総計120冊が刊行されている。日本民藝協会の名で記された当誌案内用の印刷物によると、その使命は、「将来の美の問題に対して工藝が重要な対象」になり、中でも「民藝が経済的に、社会的に深い意義を有つ」という、彼らの考えを、「言葉を通し挿絵を介して」語ることであった。そのためこの雑誌の任務は、「新しく美の標準」を提起し、「正しい作物を次ぎ次ぎに世に紹介すること」にあった。その際に、彼らの「信念」を「具体的に語る仲立ち」が毎号挿まれる「豊富な挿絵」であった。さらには「装幀、用紙、小間絵、組版、印刷等にも留意し、後世省みられて感謝されるだけの仕事を遺したい」というのが彼らの念願であった。このように雑誌『工藝』は、工藝の中でも特に「民藝」の深い意義を、「言葉を通し挿絵を介して」語ることを、自らの使命として定めており、それに加えて「工藝としての美しい書物」を後世に遺すことが彼らのもうひとつの念願であった。雑誌『工藝』の創刊号に目をやると、装幀には型染めの布が用いられ、本文用紙は厚手の上質紙で、扉や目次等には数葉の駒絵が配されている。さらには本号の特集テーマ「瀬戸の石皿」に関する十数枚の写真図版が挿絵として添えられている。しかし、手工芸としての「民藝」を何よりも高く評価し、「美に対する器械的機能の限界」を説く柳は、器械としての写真機の所産である写真図版の挿絵への活用について如何に思考していたのであろうか。そこで本稿では、柳が民芸運動に先立って取り組んだ雑誌『木喰上人之研究』、民芸運動の揺籃期に柳が編集顧問として加わった雑誌『大調和』(昭和2〈1927〉年4月創刊)と柳が編集した日本民藝美術館編『雑器の美』(昭和2〈1927〉年6月発刊)、そして民芸運動の主要な言論機関として編集・発行された雑誌『工藝』(昭和6〈1931〉年1月創刊)を取り上げ、柳宗悦が挿絵としての写真図版の問題にどのように取り組み、その意義を論考したかについて考察したい。

草光俊雄 (くさみつ・としお)

1946年生れ。73年慶應義塾大学経済学部卒業、75年同大学大学院修士課程修了。83年英国シェフィールド大学博士課程修了(PhD)。ニーダム研究所研究員、上智大学、日本女子大学を経て93年東京大学教養学部助教授、94年同教授。2004年から17年まで放送大学教授を勤める。東京大学名誉教授、英国王立歴史学会フェロー。専攻はイギリス社会経済史・文化史。著書に『明け方のホルン』(小沢書店1997、みすず書房2006)、『歴史の工房』(みすず書房2016)があり、訳書にピーター・スタンスキー『ウイリアム・モリス』(雄松堂出版1989)がある。

 

籔 亨(やぶ・とおる)

1943年生まれ。72年京都工芸繊維大学工芸学部意匠工芸学科卒業、74年同大学大学院修士課程(デザイン史専攻)修了。大阪芸術大学教授を経て、同名誉教授。2016年刊の『デザイン史――その歴史、理論、批評』(作品社)で意匠学会賞を受賞。著書に『近代デザイン史―ヴィクトリア朝初期からバウハウスまで』(丸善株式会社2002)、訳書に『近代から現代までのデザイン史入門』(晃洋書房2007)などがある。